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2017年01月16日
シャーロック・ホームズ(正月十三日)
コナン・ドイルが生み出したこの希代の名探偵の物語は、これまでに何度も映像化されているが、初めて見た八十年代にNHKで放送されていたイギリスのグラナダTV制作のやつの印象が強すぎて、他はどれを見ても違和感しか感じない。あの俳優、ジェレミー・ブレッドだったっけの演じたホームズの適度の奇矯さは、原作のホームズそのまま、少なくとも田舎の中学生の想像ではそのままだった。
そのシリーズのうち、どれだけの作品を見たのか、どの作品を見たのかは覚えていないのだが、少なくとも大学進学で実家を離れテレビのない生活を始めるまでは、万難を排してとまではいかないが、熱心な視聴者であった。「踊る人形」だけは見たのを思い出した。
そのグラナダTVのホームズにチェコで再会したのが、十年ぐらい前だっただろうか。民放のノバかプリマで放送されたのだが、実際にどちらであったかはどうでもいい。チェコに来て最初の贅沢として購入したハードディスク付きのDVDレコーダーで、録画したところ、英語とチェコ語の二ヶ国語放送になっていて、片方ではノバもう一方ではプリマが放送すると言っていたのだ。ハードディスクからDVDにコピーするときに、英語音声は消えてしまったけど。
チェコ語版のこのシャーロック・ホームズも、ホームズ、ワトソンに声をあてている俳優達の演技のおかげか、これがホームズだと納得のいくものだった。残念なのは、放送されたのが、「バスカービルの魔犬」「四つの署名」など一時間半ぐらいの長編として製作されたものばかりで、日本のNHKで見ていた三十分ぐらいの短編は、今に到るまで放送されていないことだ。この手の本格的な推理物を、チェコ語で細かいところまで意識しながら見るには、短編の方がありがたいのだけどね。
昔、日本にいたころは、外国のテレビドラマや映画は吹き替えでなく、字幕で見るほうがいいなんてことを言っていた。高校時代だったかなあ、英語が得意な連中がそんなことを言っていたのに、別な理由で同調していたんだったかな。あいつらは英語を聞いて勉強に役に立てたいようなことを言っていたけれども、それはどうでもよくて、字幕つきを見る方がかっこいいとかそんなしょうもない理由だったような気がする。
こちらに来てからは、チェコの吹き替えのレベルが高いこともあって、こちらに来て考えが変わった。いや、実はチェコ語の字幕を読みきれないというのが一番の原因なのだけど、チェコ語でしゃべっていても、本来の言語である英語やフランス語でしゃべっていても外国語であることには変わりはないので、違和感を感じないという面はありそうだ。
だから、逆に日本の映画なんかが、アニメであってもチェコ語に吹き返されていると見るのがつらい。何年か前に放送された藤沢周平原作の時代劇は、字幕つきだったのだけど、字幕も読みきれず日本語の発音も聞き取れずで途中で見るのをやめてしまった。多分、方言の部分が聞き取れなかったのだと思うのだけど。
隣のポーランドでは、外国作品の吹き替えは、すべての登場人物に一人の俳優が声をあてるという、かつての活動写真の弁士を思わせるものだったらしいし、スロバキアでも以前は、吹き替えが行なわれている部分はBGMなどの効果音が消えてしまうというものだったらしい。チェコでもそんな吹き替えだったら、字幕のほうがいいと思ったかもしれない。
さて、日本でも多分話題のBBC制作の舞台を現代に移した「シャーロック」、チェコでも現在第四シリーズ(と言っても三作だけだけど)が放送されている。これもホームズとワトソンの配役は当たりだと思う。話も面白くよくできている。だけど、話がチェコ語で完全に理解するには難解すぎて、一回見ただけではよくわからないのが困り物である。そして見返すのにも、気合というか、一時間半集中して見るぞという覚悟というかが必要で、なかなか手が出せない。
今週末に放送される回のタイトルが「最後の事件」なのだけど、今シリーズで最後ということなのだろうか。それとも、書籍版と同じで視聴者の要望が強くて何年後かに復活なんてことを想定しているのだろうか。いや、でも、既に一度ストーリー上はホームズ復活しているんだよなあ。どうなるんだろう。
チェコでは、最初のシリーズは、チェコテレビの第一で、午後八時から放送されたような記憶があるのだが、今回は第二でしかも午後十時という遅い時間の放送開始になっている。絶対に見るというコアなファンは、うちのも含めて一定数いそうだけれども、視聴率が予想ほど上がらなかったことが原因なのだろう。最近のチェコテレビは民放出身者が社長になって、以前よりも視聴率争いに汲々とするようになっているのだ。
1月14日23時。
やはり、これこそホームズである。1月15日追記。