2018年10月13日
市町村議会選挙結果オロモウツ2018(十月九日)
この市町村議会選挙の勝者を、町の大きさなどは考えず議席数だけに基づいて判断するなら、常に無所属の候補者達である。正確に言えば、政党に所属しない候補者たちが合同で作成した候補者名簿に乗っていた当選者が一番多いのである。その場合、チェコ語で無所属連合とする場合と、町の名前を付けた連合とする場合があるようで、今回は得票率で50パーセントを越え、合計で約35000議席を獲得している。
二番目は、選挙制度からいうと何故可能なのか理解できないけれども、完全に無所属の候補者、つまり候補者名簿に入らずに単独で立候補した人ということだろうか。ニュースで二つも三つも候補者名簿ができるほどは候補者がいない町では、名簿化しないで、ここの候補者の名前を個別に投票用紙に印刷して、定数にあわせて印をつけさせたなんてところもあると言っていたから、そんな政党、グループ別の候補者名簿の存在しなかった町の当選者がここに含まれるのかもしれない。得業率10パーセントで議席は6000ちょっと獲得している。
市町村議会選挙での無所属候補の強さ、多さをこの二つのデータは示しているのだが、政治的なまとまりのないこの二種類の無所属議員が存在しその数が国政政党を上回るという事実は、残念ながらほとんど国政に影響を与えることはない。国政政党は三位以下に並んでいるのだが、この手の政党にとって全国でいくつ議席を獲得したかとか、得票率が何パーセントだったかというのはそれほど重要ではない。重要なのは、主要都市の議会でどれだけ議席を獲得したかと、選挙後の交渉でどれだけの町で市長を出し、連立与党に参加できたかという点である。
特に重視されるのはもちろん首都のプラハの結果だが、ブルノや、オロモウツ、オストラバなどの行政区分として地方の主要都市の結果も重視される。あとは以前の行政区分だったオクレスを周囲の町や村と共に構成していた町の結果も話題に上ることがあるが、それ以外の小さな町や村の結果は、よほど特別なことがない限り、個別にニュースになることはない。
プラハ中心主義は嫌いなので、まずはオロモウツ地方の中心オロモウツから行こう。選挙期間中は、トラムにいくつかの政党のポスターが貼られたり、英雄広場の角の建物のつぶれた見せの窓にある候補者を立てた政治団体の候補者の写真が名簿の番号とともに張り出されたりしていたから、国政正当以外にも小さな地域政党みたいなものも出ているのは知っていた。それから、海賊党が市長連合と合同で候補者名簿を作成したのも知っていた。政策がどうこういっていたけれども、議員定数に合わせた候補者を集めるのが大変だったというところじゃないかなあ。
期間中は市民民主党やANO、社会民主党などの国政政党が、ホルニー広場でイベントを開いて、有権者に賄賂を配布していた。賄賂といっても、チェコ風ホットドックであるパーレク・ブ・ロフリークとか、チェコ版のアナなしドーナツともいうべきコブリハなどの小さな食べものか、ペンとかバッジなんかの子もであることが多いから、それで投票先を選ぶとは思えないけれども、日本の厳格な精度を知っていると、これでいいのかといいたくなることは多い。
とまれ今回のオロモウツの市議会選挙の結果を確認しよう。参照したのはこのページ。オロモウツ市議会選挙には全部で16の政党、団体が候補者を立てたようである。そのうち議席を獲得したのは、九つのグループだから、かなり票が割れたといってもよさそうだ。
第一党になったのは、前回の選挙と同様バビシュ首相率いるANOで、得票率約27パーセントで、14の議席を獲得している。4年前の前回の選挙よりも2議席増やしている。議員定数が45だから、約三分の一なのだが、この数を多いと見るか少ないと見るか微妙なところである。前回は第一党になりながら市長の座を二位だった社会民主党に奪われていたが、今回は他の党に大きな差をつけての第一党なのでANO代表が市長の座につくことになりそうである。
二番目に入ったのは、プロ・オロモウツという地元のグループで獲得議席は6、前回も2議席獲得しているようだけど、知らんかった。前回の得票率を見ると5パーセントを切っているから、市町村議会選挙には5パーセントの壁は存在しないのかもしれない。当選者の肩書きを見ると建築家を名乗っている人が多く、特定の政党のひも付きというわけではなさそうである。
三番目がこちらも議席を6つ獲得した海賊市長連合。衝撃は当選者の名前にあって、名簿の三番目に記載されて4位で当選を果たしたビクトル・ティハークという名前に見覚えがあると思って確認したら、サマースクールの事務局長を務めていた兄ちゃんだった。海賊党かあ。なんだか妙に納得してしまった。合同名簿でナンバー3ということは、海賊党内では2番目だった可能性があるわけだけど、それにしては、海賊党の選挙活動の報道には出てきていなかったような気もする。最近あんまりオロモウツ地方のニュースを見ていないから、出ていたのかも知れんけど。
四番目は良くも悪くも地方ボスでオロモウツの地方組織を牛耳っていたラングル氏が退場したように見える市民民主党。獲得した票は増えているけれども、得票率はちょっと下がり、議席数は前回と同じ5。一時の凋落傾向からは脱したようにも見えるけど、この党がチェコにもたらした害悪を考えると安心するのはまだ早い。
五番目はキリスト教民主同盟。国政ではこの党上がり下がりが激しいのだけど、地方議会ではカトリックの組織に支えられて比較的安定した結果を出している。今回は議席を一つ減らして4。
六番目が新しい地元の団体であるスポレチニェ。日本語に訳すと「一緒に」という意味になるが、唐名の味噌は、「ポレ」の部分に登場するOLが大文字にしてあること。OLはオロモウツを示す略号なのである。確かトラムの中に広告を出していて、選挙のリーダーがオロモウツ市の交通局のえらいさんを勤めているというグループじゃなかったかな。トラム、バスの無料化を主張しているのかと思ったら、ゴミの回収量の無料化を訴えていた。うーん。議席数は3.
七番目はオカムラ党とゼマン信者等の連合。SPDとSPO、ときどきどっちがどっちだったかわからなくなるこの連合は、オロモウツだけのものである。オカムラ党は結党以来初の市町村議会選挙なので、議席を獲得すればそれだけで勝利と言えるのだが、オロモウツでは3議席も獲得している。よその町ならともかく、オロモウツでとは……。まあクラドノ(後述)に比べればましか。
八番目と九番目は共産党と社会民主党。共産党は4議席から2議席に減らしただけなのでまだ許容範囲だけど、社会民主党は、かつてオロモウツの市長も地方知事も上院議員も独占していたことを考えると、10議席から2議席に減らしたのは壊滅的な敗戦と言わざるをえない。獲得した票も前回の三分の一以下で、社会民主党が主導したオロモウツ市政に対する批判が噴出したというところだろうか。もちろん全国的な社会民主党のでたらめぶりも関係しているだろうけれども。
去年の下院選挙の結果と同じで、ANOとその他の小政党ということになり、連立の相手をさがすのが大変そうである。最低でも二つの党、グループと手を結ばなければならないのだから。たいていは安定多数になるように、過半数を大きく越える連立が目指されるのだけど、今回はどんな組み合わせになるのだろうか。選挙の結果を見るとANOから市長が出るのがすじだが、他の小政党が野合してANOは維持に出る可能性もなくはない。
最終的にANO、市民民主党、キリスト教民主同盟、スポレチニェが連立与党を組んで市政を担当することになったようである。45議席中、26議席だからなかなかの数かな。市長になるのはANOのミロスラフ・ジュバーネク氏。いろんな党の選挙活動で気になったオロモウツの多すぎる借金を少しでも返済していってほしいものである。
2018年10月11日24時。
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