2018年06月28日
毎日新聞へのお詫び(六月廿七日)
毎日新聞の校閲室の方、申し訳ありません。いわれのない批判をしてしまいました。
ということで、ことは数日前に書いた「ロナルド」と「ロナウド」の標記の問題についてなのだが、時間のない中、毎日新聞の記事も読まずに引用された結論のみに基づいて、批判をしてしまった。ようやく時間ができたので下記事を確認したら、毎日新聞ではポルトガル語における根拠があって、「ロナルド」という表記を採用していることがわかった。「エドバーグ」を「エドベリ」と表記していた毎日新聞の見識は健在ということだろうか。
日本の新聞記事におけるチェコの人名表記がいい加減すぎることに対する憤懣がこんな形で爆発してしまった。今後は爆発する前に、もう少し事情を確認することにする。いや、時間や精神的な余裕がないときには批判の記事は書かないほうがいいなあ。毎日新聞がチェコの人名表記にも、「ロナルド」と同じぐらい気を使っていてくれればいいのだけど、少なくともスポーツ選手の名前で、英語とは違った読み方をするものについて、こちらが許容できる表記を見かけたことはない。毎日新聞で確認してみよう。でも、「コレル」なんか「コラー」と書かれているんだろうなあ。
ただ毎日新聞への批判と専門誌の対応に対する推測を除けば、あの記事に書いたことは大きく間違ってはいないと思う。チェコテレビの現地の発音にこだわるアナウンサーたちは「ロナウド」に近い発音をしているのである。近い発音というのは、耳がよくないせいで、普通の「L」の発音ではないのはわかるのだが、それが完全に「U」になっているかといわれると確信が持てないからである。
毎日新聞の方が書いている「L」の発音が「U」に近づくというのは、スラブ語にも見られる現象で、チェコ語だとスロバキアとの国境地帯の山間部に住む人たちの方言が、「L」が「U」になるため、非常に聞き取りにくいらしい。外国人に対してはできるだけ正しい発音で話そうとしてくれる人が多いので、個人的には困ったことはない。むしろプラハ方言の語末の「L」を省略する発音のほうが、奴らは外国人に対する配慮なんてしないから、大変である。
もう一つ、「L」と「U」についてあげるなら、ポーランド語がいいだろう。かつて、付属記号を取り去った英語表記から、「ワレサ」と表記されていた連帯のボスは、ポーランド語の発音に近い形で「ワウェンサ」とかかれることが増えている。ポーランド語の表記は「L」そのものではないし、発音も「U」そのものではないが、「L」から「U」へと発音が推移していくさまが見て取れる。
ここでポルトガル語に戻ると、毎日新聞校閲部の方が、引用した本には、「L」の発音について、ポルトガル方言よりもブラジル方言のほうが「U」に近いというようなことが書かれている。気になるのは、ブラジルの「L」の発音と、ポルトガルの「L」の発音が日本人の耳にどう聞こえるのかということである。日本語の「ル」に近いのか、「ウ」に近いのか
日本では英語教育で強調されすぎるせいで、「R」は難しいけれども「L」は簡単だという思い込みがある。しかし現実には、少なくともチェコ語においては、「L」のほうが難しい。「R」は、巻き舌にはできなくても日本語の「ラリルレロ」をちょっと硬く、舌の動きを強めに発音すればそれなりの「R」といっても問題ない音が出せる。「L」は、軟らかく舌の動きも緩やかにして発音しなければならないのだが、これをやりすぎると「U」に聞こえるような発音になってしまう。最悪なのは音としての「L」と「U」の境目が判然としないことである。それに「L」を発音したつもりなのに「R」と聞かれてしまうことも多いし。チェコ人と日本人では「R」「L」「U」に対する耳の設定が異なっているのだ。
だから、ポルトガルにおけるポルトガル語の「L」の発音、特に人名の「Ronaldo」の「L」の発音が、毎日新聞は一般紙だから、ポルトガル語など知らない一般の日本人にどう聞こえるのか、具体的には「ル」に聞こえるのか、「ウ」に聞こえるのか、調査してくれないかなあ。個人的には語中の「L」の発音は軟らかすぎて日本語の「ル」には聞こえないのではないかと、チェコテレビのアナウンサーたちの発音から推測している。
それでも、「ロナルド」「ロナウド」はまだいいのだ。同じ人名だとわからなくはないのだから。それよりもクロイツィグルが「クルージガー」になり、ベルコベツが「バーコベック」になるチェコの人名を何とかしてほしい。
2018年6月27日23時44分
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