2018年03月14日
チェスキー・レフ2018(三月十一日)
去年もこのチェコのアカデミー賞とでもいうべき映画賞に関して、報告した記憶があるので、今年も一応記事を書いておく。授賞式が行なわれたのは昨日の十日のことだけど、テレビ中継をちゃんと見ていなかったこともあって、一日遅れである。以前はカルロビ・バリの映画祭の最終日とか、このチェコのライオン映画賞とか熱心に見ていたのだけど、年々マンネリ感が強くなってきて、最近はほかのことをしながら、気になるところだけを見るという不真面目な視聴者を続けている。
去年は、2016年に制作されたけれども、公開されたのは2017年になってからという「マサリク」がノミネートのときから注目を集め、受賞した数も一番多かったのだが、今年の注目は、傑作「オベツナー・シュコラ(小学校)」の前日譚と言われる「ポ・ストルニシュティ・ボス(シュトルニシュテを裸足で)」だった。ズデニェクとヤンのスビェラーク親子の作品は、どの作品も一定以上のレベルを保ってハズレはないのだけど、最近はちょっとあざとさを感じさせることがあって、昔の「オベツナー・シュコラ」が一番のお気に入りであり続けている。今年も映画ファンの選ぶ賞を獲得していたのはさすがスビェラークだけどね。
今回の授賞式では、そんなスビェラークの作品よりも高い評価を得た作品があった。それが、こちらも常連というべきボフダン・スラーマ監督の「バーバ・ズ・レドゥ(氷の婆)」である。ノミネートの時点で一番多くのカテゴリーにノミネートされていて、今年の表彰の主役になるのはわかりきっていた。ただ、題名も、寒中水泳をする年配の女性が主人公だという内容もあまり心惹かれるものではないのだけど、この賞では、単なるエンターテイメントよりも、ある種のテーマ性を持ったいわば文芸的な作品のほうが、高く評価される傾向にある。だから、表彰と興行成績が一致しないことが多いのである。チェコの映画業界は、かなりの部分を政府からの補助金やテレビ局からの資金で補っているから、そこまで興行成績、観客の人気を気にする必要はないと言う面もあるし。
問題は、今日放送されるらしい「バーバ・ズ・レドゥ」を見るかどうかである。以前はチェコ語の勉強もかねて熱心に映画やドラマを見ていたものだが、最近は最初から最後まで見続けていられないことが多い。「トルハーク」のような、何度見ても見始めたらついつい最後まで見てしまう例外を除くと、途中で見ていられなくなることが多い。よく考えてみたら、日本にいたときから特に映画好きというわけでもなかったのだから、最初から最後まで熱心に見ていたのが例外だったのだ。
さて、もう一作注目していた作品があったのだけど、一つも受賞できなかったようである。共産主義政権の成立直後に国家に対する裏切りの罪で裁判にかけられ処刑されたミラダ・ホラーコバーを描いた「ミラダ」という作品は、チェコ人の政治好きと、共産党の政治犯罪を描いた作品であることを考えると、去年の「マサリク」同様、高く評価されるかと予想したのだが、「アンデェル・パーニェ2」と同様に一部門も受賞できずに終わった。主役のミラダを演じたのが、チェコの女優ではなくて、確かイスラエルの女優だったとか話題には事欠かなかったのだけど。
共産党政権による政治裁判の犠牲者の象徴として取り上げられることの多いミラダ・ホラーコバー氏の名前は、マサリク大統領ほどではないが、各地で通りの名前に使われている。プラハのミラダ・ホラーコバー通りは、確かサッカーのスパルタ・プラハの本拠地のあるレトナーにあるんじゃなかったかな。
こういう記事を書くと、チェコ人は映画好きで、ハリウッドの映画よりも自国の芸術的な映画を優先して見ているような印象を与えてしまうかもしれないが、チェコ国内の興行成績でいえばおそらくチェコの国産映画でハリウッドの大作に勝てるものは少ないはずである。地方の小さな映画館だと、チェコ映画の上映をしようとしても、最低の観客数を満たさず上映中止で払い戻しなんてこともあるようだし。
アメリカ映画や日本映画は、テレビでチェコ語の吹き替え版で勉強のためであっても見る気にはならないけれども、チェコの映画は時間があるときだった見ようかなと思うこともあるから、チェコ映画のファンではあるのだ。非常に中途半端ではあるけど。
2018年3月11日17時。
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