2017年09月29日
女性名詞硬変化――チェコ語文法総ざらえ(九月廿六日)
副題がまた変わったような気もするが細かいことは気にしてはいけない。男性名詞については一通り復習し終わったので、しかもこれまで勘違いしていたことにも気づけたし、次は女性名詞の番である。その中でも今回は母音「a」で終わる硬変化を取り上げる。女性名詞であれっと思うかもしれないのは、活動体はないということである。男性では厳しく分別しなければならなかった生きているものと、いないものの区別は女性名詞にはない。
この硬変化の女性名詞も日本でチェコ語を勉強すると最初に出てくるものなので、覚えてしまって間違いにくいのだが、そのせいで「a」で終わる名詞はすべて女性名詞の硬変化だと思い込むという間違いをしてしまうこともある。いやしてしまったのだけど、特に人の名字は、本来が女性名詞になる言葉であっても、男性を指す場合には男性名詞になる。女性の名字は原則として「オバー」をつけるというのを忘れてはいけないのである。
とまれ、この女性名詞の硬変化、特に単数の変化は日本人には覚えやすい。日本人の中でも国語文法が得意だった人には、順番と数はちょっと違うけれども、動詞の五段活用みたいなものだといえば、その覚えやすさがわかってもらえるだろうか。動詞の五段活用は、未然形から命令形まで行ってもう一度未然形に戻って二つ目の形を使うと、語尾が「あ・い・う・う・え・え・お」 になる。それに対して、チェコ語の女性名詞硬変化の単数の語尾は、一格から「あ・い・え・う・お・え・おう」となる。これも一般に例として使われる「žena(=女性)」の格変化を掲げておく。
1格 žen-a
2格 žen-y
3格 žen-ě
4格 žen-u
5格 žen-o
6格 žen-ě
7格 žen-ou
注意が必要なのは二格で、硬変化の語尾「い」は「i」ではなく、「y」で書かれるのである。チェコ語では「i」と「y」はどちらも母音で、原則として発音は同じである。「i」は軟子音に接続し、「y」は硬子音につけるため、「i」を軟らかい「い」、「y」を硬い「い」と呼んで区別している。また、「t」「d」「n」の後にはどちらも使えるが、どちらを使うかで発音、母音の発音ではなく子音の発音が微妙に変わってくる。日本人には発音し分けるのも大変だし、聞き分けるのはさらに大変だけどさ。
それから3格と6格で子音が変わってしまうのも忘れてはいけない。「žena」の場合には、「ženě」なので、換わっていないようにも見えるが、「ně」の子音は「n」ではなく、「ň」である。「t」「d」「n」のように、「e」にハーチェクをつければいいものを除くと、子音が変わってしまうのは「ka→ce」「ha→ze」「ga→ze」「cha→še」ぐらいである。「p」「b」のように後に「ě」が付けられるものもハーチェクをつけると覚えておくといい。それに対して「s」「z」のように子音にハーチェクがついて「ě」が付けられないものは、そのまま「e」を使う。
仮に3格、6格で子音を変えるのを忘れてしまっても、あまり気にすることはない。間違えてしまって指摘された場合に言い訳をしたかったら、「スロバキア語と交じっちゃった」と言っておけばいいのだ。スロバキア語というのは、全体的にチェコ語よりも発音がやわらかいくせに、ところどころ硬い発音が出てくるからたちが悪い。普段「ネ」ではなく、「ニェ」もしくは「ニエ」と言っている口から、「マトケ」(matkaの3格)とか、「フ・プラヘ(=プラハで)」なんて硬い語尾が聞こえてくると、チェコ語になれた耳が落ち着かないのである。
この音、特に格変化の語尾の硬い、軟らかいというのが感覚的にわかるようになったら、チェコ語に対する感覚が鋭くなってきたと喜んでいいのだと思う。そのためにスロバキア語を勉強する必要はないけれども、たまに聞いてチェコ語の発音と比べるのも悪くない。その意味でもスロバキア人の意外と多いオロモウツはチェコ語の勉強にいいのである。
とこれで終わりそうになってしまったが、複数の変化も忘れてはいけない。
1格 žen-y
2格 žen-
3格 žen-ám
4格 žen-y
5格 žen-y
6格 žen-ách
7格 žen-ami
複数では、1、4、5格が同じ形になるものが多いが、女性名詞の硬変化も同様である。注意が必要なのは、2格で語尾の母音が消えることである。一般に名詞が子音で終わるのは男性名詞の単数1格だが、女性名詞と中性名詞にも、複数2格が子音で終わるものがあるのだ。そして、語尾の母音を取り去った後、末尾が二つの連続する子音となる場合には、二つの子音の間に「e」が出現する。
例えば、女学生を意味する「studentka」は、語尾の「a」を取ると「studentk」となるが、「e」を追加して、複数二格は「studentek」となるのである。子音が三つ連続する「mzda」の場合には、一つ目と二つ目の間に出現して「mezd」となる。これも最初は覚えるのが大変だけど、そのうちに感覚的にどの言葉の複数2格に「e」が必要になるかがわかるようになる。時間は、もちろんかかるけどね。それはもう、嫌になるほど。
7格で「mi」が出てくるのは形容詞の複数7格などと共通で、複数七格の特徴となるから(そうならないものも多いけど)覚えておいたほうがいい。プラハ方言、いや普通の話し言葉かな? では、ここが「ženama」と「ma」になってしまうが、自分では使わないことにしている。こういうくだけた表現を外国人である自分が使うのがいいことだとは思えないのだ。我がチェコ語を築いてくれた師匠にも申し訳ないし、受け狙いで使うなら、今ではあまり使われなくなった古い表現の方がずっと気が利いている。
2017年9月28日18時。
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