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2017年09月18日

如何に名詞の性を誤認せしか、或は男性名詞活動体落穂拾い2(九月十五日)



 前回も触れたhttps://studentmag.topzine.cz/11-slov-ktera-spousta-lidi-sklonuje-spatne-nechybujete-v-nich-i-vy/で、ゼウスの格変化の次に、間違えやすいものとして取り上げられているのが、「génius(=天才)」である。人間を指し子音で終わっているので、男性名詞の活動体である。これも多少特殊なので紹介しておいた方がよかろう。

1格 géni-us     géni-ové
2格 géni-a     géni-ů
3格 géni-ovi    géni-ům
4格 géni-a     géni-e
5格 géni-e     géni-ové
6格 géni-ovi    géni-ích
7格 géni-em     géni-i

 「-us」で終わる名詞は、それを取っ払ってから格変化の語尾を付けるのである。語尾は硬変化と何変化を混ぜ合わせたような変なものになっているが、これは「i」と「y」を連続させられないチェコ語の規則によるもので、硬変化で「y」の語尾が出るところだけ軟変化の語尾を取るのである。具体的には複数の4格と7格である。単数は硬変化で、複数は軟変化と考えてもいいか。(4格の語尾は「e」だった。9月28日修正)

 あれ、「-us」で終わる名詞は原則として中性名詞じゃなかったっけ。「génius」が男性名詞ってことは、他の「-us」で終わる名詞も男性という可能性もあるのかなと不安になって、辞書で確認してみたら……。共産主義は男性名詞だった。「komunismus」などの「ismus」で終わる名詞は、「us」を取って、男性名詞硬変化の語尾をつけるのである。

1格 komunism-us
2格 komunism-u
3格 komunism-u
4格 komunism-us
5格 komunism-e
6格 komunism-u
7格 komunism -em

 何とか主義ってのにもゼウスと同じで複数形はないだろうけれども、同じように「-us」を取ってから格変化する名詞に「glóbus(=地球儀)」がある。こちらは複数の可能性はあるわけだけど、外国人が地球儀について話す機会がそうそうあるとも思えない。むしろありそうなのは地球儀ではなくスーパーマーケットのグローブスである。
 その「グローブスに行く」と言う場合に、地球儀と同じ格変化であれば、「Jdu do Globu」となるはずなのだが、実際には「Jdu do Globusu」と言われることが多いようだ。これは「o」が長母音か短母音化という微妙なものであるとはいえ、つづりが違っていて別単語だと認識されているからかもしれない。地球儀とスーパーは別物という論理なら、アルベルトの人名とスーパーが別物扱いにならない理由がわからない。

 では、どうして自分がこの手の「-us」で終わる名詞を中性だと勘違いしていたのかを考えると、これはもう外来語で数も多くないために、チェコ語の教科書でも最後のほうで扱われているからだと言うしかない。最初のほうで勉強した名詞については、勉強の際にも繰り返して書いて覚えたし、使う機会も多いので、勘違いしていてもすぐにそれに気づいて直せる。しかし、最後のほうで付け足しのようにして勉強したことは、繰り返しの回数が足りていないし、普段使う機械もほとんどないため、間違いを訂正する機会が少ないのである。
 教科書で「-um」で終わる中性名詞と一緒に説明されていたのも勘違いの原因である。同じ外来語で、1格の語尾をとった上で各変化させるという点でも共通しているところから、一まとめに説明がなされるのだろう。そのことの是非を云々する気はないのだが、「muzeum(=博物館)」の印象が強すぎて、「-us」で終わる名詞まで中性だと思い込んでしまったのである。

 思い返せば、ずっと昔の話になるが、何かで人前で日本について話をさせられたときに、共産主義の二格を「komunismu」ではなく、中性風に「komunisuma」とやって、間違えていると言われたんだったか、方言と同じ形だと言われたんだったかしたことがある。今回間違いに気づくまではすっかり忘れていたけれども、あのときも、共産主義を初めとする何とか主義は男性名詞だと改めて覚えこもうとしたはずである。それでもまた中性だと思い込んでしまったのだから、最初の思い込みというものは簡単には消えないものである。

 これで、今度こそ男性名詞の各変化について、書くべきことはすべて書いたはずである。またなんか変なのが出てきて追加で書くことになるかもしれないけど、昨日今日の記事に書いたことも含めて、例外中の例外ということになるから、間違えたとしても、いや、覚えられなかったとしても特に気にすることはない。この手の外来語の格変化は、チェコ人の中にも怪しい人が結構いるものだし、完璧に覚えられたら凄いぐらいの気持ちでいればいい。外国人が日本語で「き」と「けり」を使い分けられるぐらい凄いという喩えを思いついたのだけど、こんな喩えじゃあ却ってわかりにくいよなあ。
9月17日16時。






この記事へのコメント
チェコ語には元の言語の活用に起こる変化を残す傾向がある(あった?)ので
前回のZeus -> bez Diaや -us, -um, -onで終わる言葉の活用でそれらが消えることも元の言語に基いてます。
そういえばギリシャ語由来のdrama -> bez dramatu, sch&#233;ma -> bez sch&#233;matuのtが追加されるのもそうです。
語尾が消えない言葉もありますけど:bonus, luxus, statusなど…
Posted by at 2017年11月11日 15:27
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