2016年01月08日
地球温暖化?(一月四日)
クリスマスには、いやチェコ語でバーノツェには雪が積もっていてほしいと言っていたのは、チェコを出てタイに行ってしまった友人だっただろうか。それが何年前のことだったかは覚えていないが、あの年も雪はあまり降らなかったような気がする。こちらに来たばかりのころ、二千年代の初めには、雪の多い年が多かったのだが、ここ数年は、今年も含めて雪の少ない年が多く、気温もあまり下がらないので、寒がりにとっては非常にありがたい。ただ、雪が少ないのは、水不足につながるので、一番いいのは雪は多いけれども気温はあまり下がらない(具体的には氷点下5度までだったら許せる)冬なのだろうが、一体に雪の多い年は気温も低いものである。
とまれ、今年のと言うべきか、去年のと言うべきか、とにかく2015年の夏はチェコとは思えないぐらいに暑かったし、冬は暖かい。共産主義の時代には、毎年冬には大雪が降って暖房用の燃料不足で学校が臨時休校になることもままあったという話だから、これは、いわゆる地球温暖化が進んでいる証と言ってもいいのかもしれない。
チェコの前の大統領バーツラフ・クラウス氏は、南米のどこかの国を公式訪問した際にセレモニーでサインするのに使ったペンをポケットに入れてそのまま持ち帰ってしまったことと、地球温暖化を否定する考えを公言していることで有名で、特に後者に関しては環境保護団体などから強い批判を受けている。私自身は、地球温暖化を否定するつもりはないし、クラウス氏の著書も読んでいないのだが、クラウス氏が地球温暖化論者を批判する気持ちもわからなくはない。
それは、温暖化論者や環境保護団体は、声高に地球温暖化の危機を訴え、自慢げに気温上昇のデータを提示するが、ある重要な事実を無視して議論を進めるからである。
人間の活動による二酸化炭素の排出があろうがなかろうが、地球の気候は常に変動している。その証拠としては氷河期というものを思い出せば十分だろう。中学校か高校の理科だったか社会科だったかの授業を思い出すと、これまで地球の歴史の上で、気温が低い氷河期と、気温の高い間氷期が何度も繰り返されてきており、また暖かい間氷期であっても、気温が比較的下がる小氷期と呼ばれる時期が存在するなど、気候は常に一定ではないということだった。気候の変動が、歴史上のさまざまな出来事に影響を与えているという説も読んだ記憶がある。
それに、恐竜の絶滅にも気温の変化が関係していたのではなかったか。昔から恐竜の絶滅の原因についてはさまざまな説が唱えられてきたが、恐竜が栄えた中生代には気温が高かったのに、中生代の終わりに気温の低下が始まり、恐竜はそれに適応できなかったという方向でまとまりつつあるようだ。その気温の低下の原因に関して、巨大隕石落下説とか、巨大火山噴火説とか、見出しを読むだけでもわくわくするような説があって楽しいのだけれども、一番説得力を持っていたのは、一見地味な、植物の進化と繁栄によって光合成が盛んに行われた結果、高かった大気中の二酸化炭素の濃度が下がったからではないかという、現在の地球温暖化の裏返しのような説だった。
そうなのだ。知りたいのは、現在の地球の気候が、人間の排出する二酸化炭素がなかったとした場合に、気温の上昇する過程にあるのか、下降する過程にあるのか、その大まかな傾向なのだ。同じ気温の上昇が二度でも、上昇傾向の中での二度上昇と、下降傾向の中での二度上昇では、意味が全く違ってしまう。そのあたりに触れないまま、あるいはあいまいにしたまま、ヒステリックに地球を守るために温暖化を防がなければならないなどと言われても、ため息を吐くしかない。
気候の変動は何万年単位で起こるものなので、たかだか数百年レベルの測定値では、はっきりした傾向が見えてこないのかもしれない。それならそれで、そのことを明記した上で、仮説を提示してその中に現在の気温の上昇を意味づけてくれれば、大満足なのだが……。「地球にやさしい」だの「地球を守ろう」だの御大層なことをのたまうのであれば、現在の温暖化が、人類の歴史においてではなく、地球の歴史においてどのような意味を持つのかを明らかにしてほしいものだ。現在の温暖化に関する議論に、80年代に盛んだった石油枯渇説と同じような臭いを感じているのは私だけではないはずだから。
もっとも、地球という惑星の存在からすれば、地表でうごめく我々人類など取るに足らない存在であり、地表の気温が多少上がろうが下がろうが誤差の範囲でしかなく、仮に人類を含めた生物がすべて絶滅しようが地球は地球として残るという結論しか出てこないのかもしれないが。だから、人類が「地球を守る」とか「地球にやさしい」などというのは、傲慢さの表れにしか聞こえない。これが「人間の住める地球を守る」だったら、全く異論はないのだけれども、語呂が悪いのだろうか。
1月5日17時20分
これも文字を大きくする。2月11日追記。
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