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2016年12月20日

チェコのビール醸造所独立系?2(十二月十七日)



承前

コンラート(Konrád)
 二回目の最初は、コンラートという名前の醸造所である。どこかで名前を聞いたことがあるし、ビールも見たことがあるような気がするのだけど、よくわからないのでホームページで確認する。リベレツの近くのブラティスラビツェというところの醸造所らしい。
 昔の話はおいておいて、民主化以降の話をすると、もともと北ボヘミアビール醸造会社という国営企業の一工場だったのが、1990年にスビヤニの醸造所傘下に収めて、ブラティスラビツェ国営醸造会社として独立した後に、悪名高いクーポン式民営化で民営化され、スタロプラメンと共にイギリスのビール会社の傘下に入ってしまった。その後の合理化によって、スビヤニ同様、生産停止、工場閉鎖ということになり、一度ブラティスラビツェのビールは消える。
 その後すぐにチェコの会社がスタロプラメンから工場を買いとって生産を再開しようとしたらしいのだが、次々に問題が発生して、ビールの生産が再開できたのは閉鎖から二年後の2000年のことだったという。しかも、かつて生産していたビールの名称である、町の名前の由来にもなっているブラティスラフを使用する権利は、スタロプラメンが握って離さなかったため、新しい名前を探す必要があった。それで、チェコの歴史に鑑みて、ブラティスラフ王のあとにチェコの国家を支配した弟のコンラートの名前を使うことにしたのだという。ビールでもブラティスラフの後継者は、コンラートだということになる。こういう名前の付け方は好きだなあ。
 このビールもオロモウツからは、距離的にも、心理的にも遠いリベレツの近くのビールなので、オロモウツではお目にかかれない。ただ、以前リベレツ近くの出身の知り合いが、自分の町のビールは美味しいんだと誇らしく語っていた。そのビールがコンラートじゃなかったか。スビヤニほど全国的に人気があるわけではないようだが、地元の人たちに愛されるというのは幸せなビールである。

クラコノシュ(Krakonoš)
 続いて北東ボヘミアのポーランドとの国境にも近いクラコノシュ醸造所である。クルコノシェ山地のふもとのトルトノフという町にある。ややこしい話だが、山地の名前はクルコノシェで、醸造所はクラコノシュである。実はクラコノシュというのは、クルコノシェの山の神様の名前で、ビールのラベルにあしらわれた長い髭の親父がそれである。子供向けの番組ベチェルニーチェクで、今でも繰り返し放送される「クラコノシュ」という実写版のシリーズにも登場し、根強い人気を誇っている。そのクラコノシュという名称は、クルコノシェの方言だなんて話も聞いたことはあるのだけど、正直よくわからない。
 また、このトルトノフの醸造所は、バーツラフ・ハベル大統領が共産主義時代に仕事をさせられていたことでも知られている。舞台がここのビール工場という戯曲作品があったんじゃなかったかな。ビールも飲んだことがないし、ハベル大統領作の演劇も見たことがないので、なんとも言えないんだけど。

ハブリーチクーフ・ブロト(Havlíčkův Brod)
 ビソチナに戻って、ハブリーチクーフ・ブロトという町の醸造所である。もしかしたら昔、プラハからブルノに向かうのに通ったことがあるかもしれないが、町に下りたことはない。だからビールも飲んだことがないと思っていたのだけど、ホームページを見てみたら、飲んだことのあるビールだった。ブランドの名前はレベル。かつてオロモウツで飲めるお店を見つけて入ったことがある。まずかったという記憶はないので、それなりに美味しかったのだろう。あれ、飲んだのオロモウツじゃなかったかもしれない。
 ビロード革命後の民営化によって、本来の所有者であったハブリーチクーフ・ブロトの町でビールを生産する権利を有していた人たちの子孫の手に戻ったらしい。だから、会社の正式名称には「市民の」という意味の形容詞「ムニェシュテャンスキー」がついているのである。チェコのビール会社の誕生には、ビール生産の権利を有し個人で生産していた人たちが集まって、大きな醸造所を設立したというものが多く、実はピルスナー・ウルクエルもそうなのだけど、民営化で本来の権利の所有者に戻ったというのは、滅多に聞けない話である。

ボヘミア・レゲント(Bohemia Regent)
 南ボヘミアの鯉の養殖池が広がっている地域の中心となる町がトシェボーニュである。この町で生産されているビールがボヘミア・レゲントで、ビールのラベルによれば、1379年に生産が始まったらしい。多分、これはトシェボーニュでビールの生産が始まった年だろうとは思うけど。
 よくわからないのが、ホームページの工場の歴史のところに、1999年に株主が売却を決定し、2000年にボヘミア・レゲント社が買収したと書かれていることで、それ以後にボヘミア・レゲントという名前でビールの生産を始めたのだろうか。それとも、ボヘミア・レゲントというビールを生産する工場を買収するために同名の会社を設立したのだろうか。
 これもオロモウツではあまり見かけないのだけど、南モラビアのどこかの町に出かけたときに入ったレストランでたまたま飲めた記憶がある。あれも十年以上前の話で記憶が定かじゃないのでどこの町だったかまでは思い出せないし、当時はトシェボーニュのビールだということは知らなかった。
 「我が祖国」なんて名前の特別ビールを生産しているようで、名前を見たときにはいらねえやと思ったのだけど、瓶を見たらちょっと、オロモウツのやつだけでもほしいと思ってしまった。観光客にも売れそうである。

ロホゼツ(Rohozec)
 北ボヘミアのリベレツ地方のトルノフの近くの小さな村マリー・ロホゼツにある醸造所らしい。人口300人ぐらいの小さな村に、19世紀の半ばに醸造所が設立され、現在まで生産が続いているというあたりが、チェコのビールの奥深さを物語っている。
 この醸造所も、他の小規模の醸造所と同じく、ビロード革命後の民営化で経営が混迷を極めたようだ。外資に買収されることはなかったようだが、2004年に現在の会社が設立され、ビールの醸造を引き継ぐまでは、倒産の危機にさらされ続けていたと書かれている。その後、「スカラーク」「ポットスカラーク」という伝統的なビールの名称への回帰も含めて、ビールの醸造の復興に成功したらしい。
 このロホゼツも含めてリベレツ近くの北東ボヘミアにはこの手の復活系ビール醸造所が多い。何か特別な条件でもあるのだろうか。

 ということで以下次回。意外と書くことあるなあ。
12月17日23時。


 レゲント(=摂政)がないのでクイーンで。12月19日追記。


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posted by olomoučan at 07:53| Comment(0) | TrackBack(0) | Pivo
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