2016年12月18日
チェコビール、ほんとにチェコビール?(十二月十五日)
ピルスナー・ウルクエルが、日本のアサヒビールに買収されるという衝撃のニュースについて書いたときに、他のチェコのビール会社がどこの傘下に入っているのか、久しく確認していなかったことを思い出した。大きなところについては、あちこちで書き散らしているけれども、ここでまとめておこう。
ピルスナー・ウルクエル
まず、アサヒビールの傘下に入ることになるピルスナー・ウルクエル社は、同じプルゼニュのガンブリヌス、プラハの近くのベルケー・ポポビツェのコゼル、オストラバの近くのノショビツェのラデガストとともにグループを形成しており、全体で大体チェコ国内市場の45パーセントを占めているようだ。
SABミラー社は、スロバキアのトポルチャニにあるトップバルとプレショウの近くのシャリシュという傘下のスロバキアのビール会社を、ピルスナー・ウルクエルともにアサヒビールに売却することにしたというから、アサヒはチェコとスロバキア両国で最大のシェアを持つことになる。それから、ポーランドにアサヒビールが所有していると思っていたビール会社も、今回の買収の一環で、SABミラーからアサヒに売却されることになるようだ。そうすると、スロバキアのシャリシュとポーランドでやっているピルスナー・ウルクエルのライセンス生産は継続しそうである。ロシアはやめるかな。
スタロプラメン
プラハのスタロプラメンは、生産量でいうと、オストラバのオストラバルをあわせてピルスナー・ウルクエルグループの三分の一ぐらいである。スタロプラメンのほかにも、かつてはプラハの別の会社で生産されていたブラニークの生産もしている。インベブの傘下に入ったときに始まったベルギービール、ステラ・アルトワのライセンス生産も、インベブを離れてモルソン・クアーズ傘下に入ってからも、継続しているようだ。ステラ・アルトワがチェコで最もよく見かける輸入ビールであるのは、ここに理由がある。
ハイネケン
十年以上前に、ブルノのスタロブルノがオーストリアのビール会社に買収され、ズノイモのホスタンと一つのグループになるという新聞記事を読んだのを覚えているが、そのオーストリアのビール会社を買収したのがハイネケンだったのだ。その後も、チェコ国内で、西ボヘミアのクルショビツェ、北ボヘミアのいくつかのビール会社からなるドリンクス・ウニオン社を買収している。ハイネケン社がチェコに入ってきていることは知っていたが、ここまで多くのビール会社、いやビールのブランドを確保していることは、今回確認するまで知らなかった。
ハイネケンでは、傘下のビールの生産の集約を進めており、ズノイモのホスタンは、スタロブルノの工場で、クラースネー・ブジェズノで生産されていたズラトプラメンは、グループ内の他の工場で生産されることになり、ズノイモとクラースネー・ブジェズノの工場は閉鎖されてしまった。他にも買収、閉鎖をたどった工場は多く、外資に買収されることが経営危機からの解放ではないという現実を見せ付けている。買収された後にビールの生産が停止されたクトナー・ホラとズノイモでは、町が工場を買い戻して、新たにビールの生産を始めているらしい。
クルショビツェもズラトプラメンも、かつては大々的にテレビのコマーシャルを打って、オロモウツの飲み屋でも飲めるところが少なくなかったのだけど、最近では滅多に見かけることもなくなった。一体にハイネケン傘下に入ったチェコのビールには、ぱっとしなくなったという印象を否めない。アサヒビールがピルスナー・ウルクエルで、無駄な効率化などしないことを願っておこう。かつて、リトベルのビール工場を見学したときに、醸造責任者にあたる人が、ビール造りに改善とか、効率とか言われても困るといっていたのを思い出す。
ブドバル
四番目が、チェスケー・ブデヨビツェのブドバルで、唯一の国営のビール会社である。ここに関しては、今後も国営であり続けることを願うというしかない。チェコ国内に保有するビール会社がなくなるSABミラー=インベブが、アメリカのバドワイザーのためにも、ブドバルを狙ってくるのは目に見えているのだから。
ロプコビツグループ
五番目に来るのが、サッカーのスラビア・プラハと同じ中国の投資企業に買収されたロプコビツグループである。ロプコビツが道連れにしたビール会社の中にチェルナー・ホラが入っているのが、何とも許せないのだが、この際、アサヒがついでに買収してくれないものだろうか。
PMSプシェロフ
チェコのビール醸造所と麦芽製造所の業界団体の年次報告のようなもので大手として名前が挙げられている六つの企業グループを閉じるのが、PMSプシェロフという会社でである。正式名称はモラビア・シレジアビール醸造会社とでも訳せる。これは、リトベル、ハヌショビツェ、プシェロフの三つのビール会社で作られたグループで、以前はオロモウツのビール会社もここに入っていたのだけど、完全に消滅してしまったようだ。外資に買収されることなく、チェコ資本の独立の企業として頑張っているはずである。
ビールの生産自体の効率化や集約は行っていないが、缶ビールを生産するために缶に詰める工程だけはリトベルの工場で一手に引き受けていると、見学したときに言っていた。日本とは違って、生産されるビールの大半は瓶ビールなので、缶ビール生産施設を各工場に建設するのは効率がよくないということらしい。ただし、中身までリトベルで生産するような効率化はせずに、プシェロフとハヌショビツェで生産したものを運んで来ているらしい。
このグループは、ハンドボールの一部リーグのメインスポンサーとなっていて、プシェロフで生産しているビールの名前を取って、ズブル・エクストラリーガと呼ばれている。ちなみにズブルは、野牛のことである。プシェロフでは旧石器時代の遺跡が発掘されて、マンモス狩りをしていた人たちの生活の様子が明らかになったというけれども、野牛もいたのだろうか。
12月16日16時。
ハイネケン、日本ではキリンがライセンス生産やってるのか。チェコでも、ライセンス生産なのかなあ。スタロブルノでスロバキアのズラティー・バジャントのライセンス生産をやっているのは知っているけど、ハイネケンは聞いたことがない。12月17日追記。
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