2016年01月06日
冬の花火(一月二日)
今年はテロを警戒して、自粛したり控えめにしたりするところも多かったようだが、ヨーロッパでは、大晦日の夜、午前零時になって新年が訪れると、花火を打ち上げて祝うという風習のようなものがある。これがどのぐらいの伝統を持つのかは、寡聞にして知らないが、近年では日本でも行われているのかもしれない。
チェコでも、以前は深夜に花火が打ち上げられていたような気がするが、ここ数年は、新年を祝う公式のイベントとしての花火は、元旦の午後六時から打ち上げられるようになっている。プラハやブルノなどのチェコに於ける大都市では大々的に、オロモウツなどの中小都市でもそれなりの花火が打ち上げられる。
では、チェコでは大晦日の深夜に花火が打ち上げられないのかと言うと、そんなことはない。公式のイベントとしての花火はないが、一般の人たちが、大晦日の夜になると、いや気の早い連中はその一週間以上も前から、夜暗くなるとあっちやらこっちやらで、どこかで購入してきた花火をぽんぽん打ち上げ始める。大晦日以外は散発的なので、それほど気にもならないが、大晦日が終わりに近づき午前零時になる頃になると、あっちからもこっちからも花火を打ち上げる音が聞こえてくるようになる。
一応、チェコには午後十時以降に騒音を発してはいけないという法律か、条例があり、住民の苦情が重なると居酒屋なんかでも罰金を取られたり、営業時間を制限されたりすることがあるのだが、大晦日の花火は適用外らしい。花火が上がっている間は眠れないぐらいにはうるさいのである。最悪なのは、ひとしきり花火が上がって静かになって、これでおしまいだろうと思った頃に上げられる花火である。眠れそうになった頃に、何度も起こされることになるので、徹夜をしたわけでもないのに、元日は一日中眠い。それが普通だといわれればその通りではあるのだけれど。
それで、打ち上げられる花火なのだが、意外に本格的である。いや、こんなのを市販して専門知識のない一般の人に使わせていいのかと思われるような過激なものも打ち上げられている。以前、まだチェコに来たばかりのころに、一度だけ知人に誘われて大晦日の深夜に街の中心の広場に出かけたことがあるのだが、打ち上げ花火だけでなく、ねずみ花火の過激版も地面を跳びまわっていて、正直怖かった。
ニュースによれば、毎年、大晦日の花火で怪我をして救急車で運ばれる人がいるようだ。今年は、それほどグロい話はなかったが、花火のせいで指を失ったとか、失明したとかそんな人たちについてのニュースが流れて、視聴者に注意を呼びかけている。そういえばかなり以前の話になるが、ズノイモの近く、オーストリアとの国境の町にある免税(らしい)ショッピングセンターで、売り子が花火の打ち上げの実演に失敗して、在庫の花火が誘爆を起こした結果、ショッピングセンターが全焼するという事件もあった。花火というかわいらしい名前がついているとはいえ、火薬は火薬、使い方を一歩間違えれば大変なことになることを思い知らされた。大晦日の夜は、皆酔っ払って花火を扱うものだから、危険の度合いもいっそう高まるのである。
しかし、やはり、日本人にとっては、花火は何と言っても夏のものである。夏の暑い盛りに夜多少涼しくなった中を花火を見に出かけるのがいいのであって、真冬の深夜に花火を見に出かける気にはならない。これは、私が寒がりだからという面もあるのかもしれないが、冬の花火は、消えるのが早いような気もするし、風情がない。それに、自分でやるなら、派手な打ち上げ花火よりも線香花火のほうがいいと思うのは、日本人だけだろうか。
どちらかといえば、日本人が大晦日の深夜には除夜の鐘をつきに出かけ、そのまま初詣に行くように、ニュースで見た大晦日の夜にモラビア最大の巡礼地であるホスティーンの山の上の教会に出かける人々のほうに、心を惹かれる。とは言っても、キリスト教徒でもない人間が、のこのこ出かけていいものではないだろうし、ニュースでは伝統的ではない大晦日の過ごし方として紹介されていたので、最近始まったものかもしれないのだが。
1月3日11時30分
前日分と同様、文字の大きさを変える。2月11日追記。
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