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2021年01月12日

4格の話(正月九日)



 ネタ切れ気味で、しばらく何について書こうか頭をなやなませていたのだが、特に書くべきことも思いつかない。ということで、以前に戻って、困ったときのチェコ語ネタである。以前、2格、7格、3格の使い方と、その格を取る前置詞について書いたのがそこで止まったままになっていた。ここはネタがない時には、残りの格について書いて格と前置詞について終わらせておくべきであろう。

 4格というと、昔々、師匠がアメリカから来ていた留学生について、「あいつら、もう一年もチェコ語を勉強しているのに、matkaとmatkuの区別ができない」とブーたれていたのを思い出す。確か「1格と4格の違いだと説明したら、4格って何とかいいやがった」と付け加えたのかな。「そんなものなんで必要なの」とか聞かれたとも言っていたような気もする。
 格変化のない英語を母語とする人にとっては、意味不明(勉強すれば大学生なら理解できるだろうけど、ヨーロッパやアメリカの大学から来る留学生は留学という名目で遊びに来るので勉強自体をほとんどしないというのはおいておく)かもしれないが、助詞を駆使して文章を作る日本人にとっては、格変化を覚えるという苦労はあっても、名詞を格変化させて使うこと自体にはあまり抵抗はないはずだ。その中でも一番わかりやすいのが4格だと思う。

 日本語の文法用語で何というかはよくわからないのだが、原則として日本語の動詞で名詞に助詞の「を」を付けるものが必要な場合には、チェコ語では名詞を4格にすると考えていい。例外的なのは移動する場所、空間を表す「を」ぐらいだろうか。「街を歩く」「空を飛ぶ」などの場合は、4格ではなく、7格、もしくは前置詞「po」と6格を組み合わせた形を使う。動詞「čekat」や「dívat se」などが、4格は取るけれどもその前に前置詞「na」を必要とするのも覚えておいたほうがいいだろう。
 逆に、チェコ語では4格を取るけれども、日本語では助詞「を」にならないものとしては、「〜が好きだ/嫌いだ」というときの、「mít rád + 4格」が先ず思い浮かぶ。「chtít + 4格」もそうだけれども、日本語で主格でもないのに助詞「が」を使うほうが例外的だと考えたほうがいいのかもしれない。動詞を使えば、「〜を好む」「〜を欲する」という形で言い換えることができるのだから。

 チェコ語で4格を取る動詞のなかでは、最初から使役の意味を持つ動詞の使い方に気をつける必要がある。日本語だと「私はそれに驚いた」と言うようなところを、「それが私を驚かせた」という言い方をすることも多い。受身を使った「Byl jsem překvapený」や「Překvapil jsem se」ではなく、「To mě překvapilo」という表現が使われることは多いし、自分で使えるようになるとチェコ語の幅が大きく広がるのである。
 他にも、「trápit mě(私を苦しませる)」「bavit mě(私を楽しませる)」なんてものがある。「Čeština mě baví」なんて言われると、チェコ語の勉強が楽しそうでうらやましくなる。それから普通は「Mám zájem o to」で済ませてしまう「それに興味がある」という文も、「To mě zajímá」なんて言えると、自分のチェコ語が上達したような気分になれてうれしい。「Co vás zajímá?」なんて質問もできるしね。

 最後に、これは復習になるのだけど、時間を表す表現の中に、4格を使えるものがある。ただし4格でなければならないものはそれほど多くなく、絶対に覚えておかなければならないのは、曜日の前に形容詞がついた場合、例えば「minulou neděli(先週の土曜日に)」ぐらいだろうか。形容詞などをつけて2語にした時間を表す表現は、たいてい4格で使えるのだけど、曜日以外は、前置詞と共に使ったり、2格を使ったりすることもできるものが多い。
 あとは、名詞なのか副詞なのか判然としない一語の言葉、「ráno(朝)」「dnes(今日)」「letos(今年)」なんかを、名詞として認識する場合には、4格で使われていると解釈するのは、覚えるよりも、副詞として認識したほうがわかりやすいような気もする。

 ということで、以上が4格について書けることである。分量が少ないのは、日本人にとって使いやすいことの反映だということにしておく。
2021年1月10日23時30分。











タグ:4格
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