2019年06月02日
オロモウツで飲めるPIVOCピルスナー・ウルクエル(五月卅一日)
次のグループはピルスナー・ウルクエル系である。アサヒビールの子会社に成り果てたピルスナーは、野村證券の子会社によって南アフリカビールなんかに売り飛ばされたのがけちのつけ初めではあるのだけど、シレジアのノショビツェのラデガストと、中央ボヘミアのベルケー・ポポビツェのコゼルを傘下におさめている。この三社が合併して一社化していないのは、悪名高き民営化の際と、ノムラによる外資への売却の際に、手続きに不備があったからだという。裁判沙汰になっているものもあるんじゃなかったかな。
それはともかく、ピルスナー・ウルクエルが飲めるお店では、ピルスナーは12度しかないので、軽めの10度、11度として、ガンブリヌス、ラデガスト、コゼルのどれかが飲めるようになっているところが多い。このグループで黒ビールを生産しているのはコゼルだけなので、この手のお店で黒ビールが飲める場合には、たいていはコゼルの黒ということになる。
廿年ほど前、こちらに来たばかりのころは、ガンブリヌスなどの子ブランドのビールが飲めるお店でもピルスナーを置いていないところも結構あって、ピルスナーが飲めるのはちょっと高級なお店というイメージがあった。それが最近では、子ブランドがあるところではほぼどこでもピルスナーが飲めるようになっている。ちょっと高級な飲み屋というと、子ブランドのビールがなくてピルスナーと特別なビールしか飲めないところである。普通のお店ではただビールというと、10度のものが出てくるのだが、この手のお店では12度のピルスナーが出てくるのである。飲むよりも食べることが中心のレストランもこのグループに入ることが多い。
これは、ピルスナー・ウルクエル社が、自社の看板商品としてのピルスナーの販売の促進に努めていることを表しているのだろうが、その結果、ピルスナーが飲めるお店の看板は、ほとんどすべてピルスナーのものになってしまって、その店で飲める子ブランドの看板が消えてしまった。昔あれほど街中にあふれていたガンブリヌスの看板をめっきり見かけなくなったのは、ピルスナーに架け替えられてしまったからだと推測している。
以下ピルスナーとその眷属のビールが飲めるお店をいくつか紹介する。
1.モラフスカー・レスタウラツェ
Adresa: Horní náměstí
Web: http://www.moravskarestaurace.cz/
Piva: Plzeňský prazdroj 12°
Polotmavý Master 13°
※ピルスナー・ウルクエルではなく、プラズドロイと表記するところが、伝統的な民俗をモチーフにしたレストランたる所以だろうか。また、ピルスナーが生産する13度のマストルが飲めるのも珍しいかな。瓶ならスーパーで買えるけどね。
Kudy: ホルニー広場にあるので、天文時計の前から、聖三位一体の碑のほうに向かうと正面左手前方に見えてくる。隣はモラビア劇場で反対側は通り抜けの細い通路になっている。
Pozor: 観光シーズンになるとかなり早い時期からザフラートカの営業を始める。寒すぎる日や暑すぎる日は、周囲を透明なビニールのカーテンで覆って、エアコンをかけているようである。支配人と思しき人はスーツを着ていて、ウェイターたちはこじゃれた民族衣装をアレンジしたような服を着ている。長袖だといいんだけど、半袖のときに腕に醜悪な刺青が見えるのはちょっとなあ。オロモウツでは珍しく、英語はしっかり通じるようだとか書いて、普通の日本人には、チェコ語も英語も大差ないかと気づいてしまった。
2.ドラーパル
Adresa: Havlíčkova 1
Web: http://www.restauracedrapal.cz/index.php
Piva: Pilsner Urquell 12°“nadvakrát“
Pilsner Urquell 12°“hladinka“
Pilsner Urquell 12°“šnyt“
Pilsner Urquell 12°“mlíko“
Kozel 10°tmavý
řezané pivo (PU/Kozel)
※ピルスナー・ウルクエル社が指定するオリジナルレストランで、ビールといえばピルスナーというお店。後ろについているのはビールの種類ではなくて次ぎ方で、一番上の「ナドバクラート」は泡がジョッキの縁よりも高く盛り上がっている注ぎ方で特に注文しなければこの形出てくる。次の「フラディンカ」は泡がジョッキのふちの高さと同じで平らになるように告がれたもの、「シュニト」は泡が三分の二ぐらいで、「ムリーコ」は注いだ時点ではジョッキの底まで泡で真っ白で、「牛乳」という呼ばれ方をしている。シュニトとムリーコは、500mlのジョッキについでも300mlの扱いになる。
この飲み屋のビールは、普通のお店がケグと呼ばれるアルミの樽からビールを注ぐのに対して、熟成用のタンクで納入されたビールが飲める。アルミの樽はせいぜい何十リットルのオーダーだが、熟成用のタンクは、工場で使われているものと同じ大きさではないだろうが、最低でもその10倍、20倍、何百リットルの容量のはずだから、ビールが大量に飲まれるお店にしか提供されていないのである。その点ドラーパルは、正規の入り口から入った一階と二階だけでなく、別の入り口から入る地下もあって席数が多く、しかも込み合っていて客のほとんどはビールを飲むために来るから、毎日それこそ何百リットルものビールが飲まれているに違いない。ある意味でチェコを象徴する場所なのである。
Kudy: ホルニー広場をアリオンの噴水のある角から出て、大通りに突き当たったところの交差点の左手前方の角にある。ちなみに右手前方は裁判所である。夏場はトラムの通る大通りと歩道の間にザフラートカが設置されるが、交通量の多い通りでビールを飲みたいとは思わない。中と違って、席数も少ないから満席のことが多いけどね。
Pozor: 実際のところはわからないが、このドラーパルと姉妹関係にあるのではないかと思われるレストランが聖モジツ教会の近くにあるウ・モジツェである。ビールもタンクのビールで、様々な注ぎ方のピルスナーを飲むことができる。ドラーパルが典型的なチェコのホスポダという感じなのに対して(トイレは除く)、こちらのほうはちょっと小じゃれた感じのインテリアである。街の中心に近いところにあるので、外国からの観光客がやってくることも考えているのだろうか。
以下次号
2019年5月31日22時55分。
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