2019年04月24日
Česko〈私的チェコ語辞典〉(四月廿二日)
チェコ語の言葉の中には、一般にはよく使われていて、意味もよく知っているけれども、いろいろな理由で個人的には使わないようにしている言葉がいくつかある。このチェスコもその一つで、使わない理由は、モラビアのオロモウツに住んでいるからである。と、これではよくわからないだろうから、少し詳しく説明していこう。
チェコのチェコ語における正式名称は「Česká republika」だが、英語で正式な略称として国連に申請したらしい「Czechia」当たる言葉が存在しない。現在一国となっているチェコは、歴史的にはボヘミア(Čechy)、モラビア(Morava)とシレジア(Slezsko)の一部から成り立っている。「Česko」は、そのうちのボヘミアから派生した言葉でなので、ボヘミアだけを指すのかチェコ全体を指すのかわかりにくいところがあった。
具体的には「Čechy」の形容詞形「český」が、他の形容詞と結びつくときに、例えば「českomoravský」「česko-japonský」などの形で使われるのだが、その最初の部分が独立して使われるようになったのが、この「Česko」だと考えられる。ただし、かつてのチェコスロバキアを表す名詞として、「Československo」という名詞が使われていて、その前半部分が独立したと考えたほうがいいかもしれない。そうすると「Česko」はボヘミアだけよりも、チェコ全体を指す言葉だということになる。
形容詞「český」がボヘミアだけではなく、チェコ全体を表すものとして使われる例は、そもそも「Česká republika」という例があるのだから、特に目くじらを立てる必要はないと言われればその通りなのだけど、少なくとも2000年ごろまでは、「Česko」について、ボヘミア臭が強すぎて使いたくないという人は、特にモラビアに多かった。モラビア、シレジアの地名でも「Český Těšín」という地名もあるから、国内のほかの地域とではなく、他の国と対比した場合には、「český」がチェコ全体を意味するのはわかる。わかるんだけど……。
このわかるんだけどの「けど」の部分が言葉を使う上では重要で、日本語のら抜き言葉も、受身形から可能形が独立する過程にあると理解することはできるんだけど、自分では使いたくない。ということは、チェコ語の「Česko」は、日本語のら抜き言葉と同じような位置づけになるのか。チェコ人の間でも、使わない人は意識的に使わないのに、使う人はほとんど何も考えないで使っている点も、ら抜き言葉に似ているし。
ただ、ちょっとだけ通時的なことを言えば、2000年前後の段階では、使う人はいても使い方が限定的というか、状況に応じて使ったり使わなかったりしていたものが、次第に状況を問わず使われるようになり、最近ではチェコテレビのニュースでも普通に使われるようになっている。これがいいことなのか悪いことなのかはともかく、毎回毎回「Česká republika」と言っていられない事情はよくわかる。わかるんだけどと、またまた「けど」がついてしまう。
いつまで頑張れるかはわからないが、「Česko」は使わずに生きていこうと思う。なくても何とかなるし、自分で使うと何とも言えない違和感をぬぐえないしさ。同時に「Česko」を使うことを否定する気もない。
なんだか今まで書いてきたことの繰り返しで中途半端な内容になってしまった。昨日も夜更新するのを忘れて寝てしまったし、なんか最近たるんでるなあ。春バテの復活かもしれない。
2019年4月23日22時。
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