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2023年01月08日

タカ考



 前回書いたように、日本語の「タカ」には、トビやノスリなども含まれるのだが、それらのタカの仲間たちはチェコ語では何と呼ばれているのだろうか。種の名称としてはjestřábだということが確認できたので、日本語でタカと呼ばれる鳥たちの多くはjestřábに形容詞が付いた形で種名とされているのだろうと予測したのだが、その形のものは「オオタカ=jestřáb lesní」だけだった。
 jestřáb に近いものとしては、jestřábec východníというのがあるが、これはタカの仲間でも「タカ」のつかないサシバを指すもの。後ろに「východní」とあることから、東、この場合には東アジアに固有の種ということになろうか。jestřábecはjestřábの指小形だろうが、ワード上のスペルチェックで赤線が引かれるから、一般的に知られている言葉ではなさそうだ。

 以下、せっかくなので、ウィキペディアなどで確認できたタカの仲間の鳥たちの和名とチェコ語名を対照して挙げておく。


➀本語では「タカ」が付くのに、チェコ語では「sokol」はもちろん「jestřáb」も使われていないもの。

  ハイタカ krahujec
  クマタカ orel horský
  ヒメクマタカ orel nejmenší

※クマタカなど日本語では「タカ」なのに、チェコ語では「ワシ=orel」となっている。「タカとワシの区別はかなり便宜的なもので、分類学的な分け方ではない」という『日本大百科全書』の説明を如実に反映している。


A日本語の名称に「タカ」が使われていないもの。

  ハチクマ včelojed lesní

※このタカはハチ(の幼虫やさなぎ)を食べるクマタカということでの命名らしいが、チェコ語からは、クマタカとの関連は見いだせない。ただし、včelojedも「ミツバチ食い」とでも訳せそうな言葉ではある。

  ミサゴ orlovec říční

※日本語ではタカの仲間なのに、チェコ語ではワシっぽい。この「orlovec」は、orelの指小形だろうから、チェコ語ではミサゴもタカよりはワシに近いと考えられているのだろうか。


➂細かく分類されているもの
  トビ luňák (hnědý)
   アカトビ luňák červený

  ノスリ káně
   ヨーロッパノスリ káně lesní
   ケアシノスリ káně rousná
   アカオノスリ káně rudoocasá

  チュウヒ moták východní
   ヨーロッパチュウヒ moták pochop
   ハイイロチュウヒ moták pilich
   ヒメハイイロチュウヒ moták lužní
   ウスハイイロチュウヒ moták stepní

※この三種、トビ、ノスリ、チュウヒは、一般的な呼称と、具体的な種名の呼称の関係が、日本語とチェコ語で対応している感じでわかりやすい。アカトビとアカオノスリに至っては、直訳できてしまうレベルである。またチュウヒの例からは、形容詞ではなく名詞(っぽいもの)を付加することがあることも確認できる。

 ここにあげた鳥のうち、この調査をするまではチェコ語名を知らなかったというものも多いし、日本語でもそんなのいたっけレベルのものもある。だから、調査をしたかいはあったのだということにしておこう。ただ、鳥類学の素人に見て違いがわかるとは思えないから、これらのうちの多くは、よほど特殊な翻訳、通訳でもしない限りは、使うことはなさそうだけど。



『日本大百科全書』の引用は例によってジャパンナレッジより。



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