2018年12月19日
だから環境保護活動家は……(十二月十四日)
先日こんな記事を発見してしまった。ポーランドで開催されている気候変動会議とやらで肉を使った食事が提供されることに対して、環境保護活動家たちがいちゃもんをつけているという内容なのだが、思わず正気を疑ってしまった。そもそも、この手の国際会議の食事というのは、開催国にとっては自国の産物の見本市のようなところがある。だからポーランドという畜産が盛んで、肉類、乳製品の輸出も多い国で会議を開催することが決まった時点で、こうなることは明らかだったはずである。
記事中に「家畜だけで世界の温室効果ガスの14.5%を排出している」という国連の概算が引用されているが、この人たちは、人類が畜産をやめることを望んでいるのだろうか。地球温暖化を防ぐためなら、ある産業を衰退に追い込んで、その産業に従事している人たちに廃業を押し付けてもかまわないと考える。この傲慢さが、おそらく地球温暖化を訴える環境保護活動家たちの意見や、活動が一般社会に受け入れられにくい原因となっているのだろう。
仮に、家畜が排出する温室効果ガスが14.5%だというのが正しいとして、人間が肉食を減らすことと、そのガスの量が減るのとの因果関係がはっきりしない。もちろん、現在飼育されている家畜をすべて処分してしまって、家畜のいない世界にしてしまえば、14.5%分の温室効果ガスは減るかもしれない。いや、肉の代わりに人間が食べるものの生産にかかる温室効果ガスのコストを考えれば、そこまでは減らないか。
12日にわたっておこなわれる会議の期間に、出席者たちが肉料理を食べ続けることで、約190万リットルの恐らくガソリンを燃やすのと同等の温室効果ガスを排出する可能性があるという主張も記されているが、これが出席者たちが自宅で普通の食事をしていた場合との差なのか、肉類を提供しなかった場合との差なのか、単に会議で提供される食事に使われる肉類を生産する際に発生する温室効果ガスの量でしかないのか判然としない。
会議が、冬のポーランドで開催されていることを考えると、環境保護活動家が主張する野菜や果物、ナッツ類中心の食事を供する場合には、そのほとんどが国外からの輸入品ということになろう。これらの食品は、下手をすれば、南米やアジアから輸入することになるのだから、輸送によって発生する温室効果ガスの量も馬鹿になるまい。
それに、こんなデータを出すのであれば、会議を開催したことによって発生する温室効果ガスの量についても触れなければ、不公平というものであろう。会議のために世界中から集まった人々の移動や、会議の会場の暖房などによって発生した温室効果ガスの量と、肉食を提供するために発生した温室効果ガスの量を比べると、どちらが多いのか気にならないのだろうか。
そんなことを考えると、いわゆる地球温暖化を防ぐには、グローバリゼーションを抑制するのが有効だという声が聞こえてこないのが不思議である。かつてないほどの数が地球の空を飛びまわっている飛行機や、大陸間の貨物の輸送のために海を行く多くの船舶は、地球温暖化に影響は与えないのか。人工衛星を打ち上げるためのロケットはどうなのか。その辺りのことを無視して肉食を減らせば温暖化が緩和できると言われても、反感を生むだけである。
ポーランドでの国際会議で肉をつかった食事が提供されることを批判するなら、ポーランド産の肉を使った料理を提供するために排出された温室効果ガスの量と、環境保護活動家が主張する野菜、果物を中心とする食事を提供するために排出された温室効果ガスの量を、輸送、保存にかかる分まで算出して比較するべきであろう。その結果、肉料理の提供のためにかかる温室効果ガスの量のほうが、はるかに大きいというのであれば、活動家の言葉も説得力を持つが、ただ肉を生産するために温室効果ガスが大量に出ているから、肉食を減らそうなどと言われても、食文化の破壊としてしか受け止められない。
これは自動車についても同じで、自動車を走らせるためのいわゆるランニングコストが、電気自動車のほうが小さいのはわかる。問題は電気自動車とガソリン自動車を、部品も含めて開発、生産、廃棄処分するために必要な温室効果ガスの量まで含めた比較したデータはないのだろうか。それなしに電気自動車の方が環境にいいとか言われても、両手を挙げての賛成はできない。環境保護活動家は一方的なデータしか出さないとか、自分たちの考えに都合の悪いデータは隠すとかいう批判が消えないのは、環境保護活動家たちのやり方に原因があるのである。
件のプラスチックストローの問題にしても、プラスチックを紙に置き換えることですべて問題は解決するみたいな風潮があるけれども、割り箸の使用を森林を破壊するものとして批判していた環境活動家たちのことを思い出すと、どうにもこうにも信用できない。これだから環境保護活動家というのは……。
2018年11月14日20時35分。
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