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2021年05月24日

最後の砦

昨今は、「質問があります。教えて下さい」、と私を訪ねてくる生徒も少なくなった。

もしかしたら、私が潜在的に拒否しているのかも知れない。
と同時に、彼等と年齢が離れすぎて、聞きずらいのだろう。

そう考えると、教える先生の年齢は、生徒たちと近い方がいい。

私が彼等に寄り添おうとしても、彼等から見れば、自分の親よりも年齢が高い先生に違いなく、怖れのようなものを感じることだってあるだろう。

私自身の中学、高校時代を振り返っても、印象に残っているのは若手の先生だった。
年配の先生は、それなりに面白かったが、やっぱり少し距離があり、話しかけにくく、親しく話をするにはほど遠い存在であったように思う。

今、自分がそうした年齢になって、生徒との距離が年々離れていくのは仕方のないことだ。
だからこそ、引退時期があるのだろうが、それを感じる年齢になってしまったことに、悲しみを感じる。

年配の教師たちがよく言う、「あの頃はね…」という口癖も、私の口から頻繁に出てくるようにもなった。

そんな中で、今でも中学時代の教え子である何人もの高校生が、私の姿を見るたびに、満面の笑顔で挨拶をしてくれる。

そんなとき、「あぁ、教員でよかったなぁ…」、とひととき幸せな気持ちになる。

もしかしたら、これが『最後の砦』で、こうした情景すら失われた時には、私は潔く引退すべきなのだろう。

確かに、年々、そうした生徒が減っていくようにも思える。
つまり、『最後の砦』は、少しずつ崩壊し、砦としての形態を失いつつあるようでもある。

もし、私自身が、生徒から話しかけてもらえない教師となったとき、私は、淋しくて孤独死してしまうかもしれない。

それほどまでに私は寂しがり屋であったのだろうか。

かつて私に、「丹澤先生は、生徒と結婚したようなものだからな…」、と言った校長がいたことを思い出す…。
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