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ゴッドファーザー、最初の5年間

 今回は、少し前に入手して、楽しみにしていたCDを聴きました。
 今年リリースされた、James Brownの新しい編集盤です。
 これは、JB研究の大家、Cliff White先生の最新の仕事で、JBのキャリアの最初の5年間に焦点を当てたコレクションになっています。

 
I'll Go Crazy
Every Track Released By The Godfather 1956-1960
James Brown

Disc: 1
1. Please, Please, Please (James Brown, Johnny Terry)'56
2. I Feel That Old Feeling Coming On (Nafloyd Scott, Nashpendle Knox)'56
3. Why Do You Do Me (Bobby Byrd, Sylvester Keels)'56
4. I Don't Know (James Brown, Johnny Terry)'56
5. I Walked Alone (Nash Knox, Nafloyd Scott)'56 
6. No, No, No, No (James Brown, Bobby Byrd, Johnny Terry)'56 
7. You're Mine, You're Mine (James Brown, Nafloyd Scott)'56
8. Hold My Baby's Hand (James Brown, Wilbert Smith, Nafloyd Scott, Bobby Byrd)'56 
9. Chonnie-On-Chon (James Brown, Wilbert Smith, Nafloyd Scott, Bobby Byrd)'56 
10. I Won't Plead No More (Bobby Byrd, Sylvester Keels)'56 
11. Just Won't Do Right (James Brown)'57 
12. Let's Make It (James Brown)'57 
13. Gonna Try (James Brown)'57 
14. Can't Be The Same (James Brown)'57 
15. Messing With The Blues (Floyd Hunt)'57 
16. Fine Old Foxy Self (James Brown)'59 
17. Love Or A Game (James Brown)'59 
18. Strange Things Happen (aka Why Does Everything Happen To Me)(Roy Hawkins, Jules Taub)'59
19. Begging, Begging (Rudolph Toombs, Julius Dixon)'58
20. Baby Cries Over The Ocean (James Brown)'57
21. That's When I Lost My Heart (James Brown)'58
22. That Dood It (Rose Marie McCoy, Rudolph Toombs)'57
Disc: 2
1. Tell Me What I Did Wrong (James Brown)'58 
2. Try Me (James Brown)'58
3. There Must Be A Reason (James Brown)'59
4. I've Got To Change (James Brown)'59 
5. Got To Cry (James Brown)'59
6. It Was You (James Brown)'59
7. I Want You So Bad (James Brown)'59 
8. It Hurts To Tell You (James Brown, Albert Shubert)'59 
9. Don't Let It Happen To Me (James Brown)'59 
10. Bewildered (Teddy Powell, Leonard Whitcup)'60  
11. Good Good Lovin' (James Brown, Albert Shubert)'60 
12. Wonder When You're Coming Home (James Brown)'60
13. I'll Go Crazy (James Brown)'60
14. This Old Heart (James Brown)'60 
15. I Know It's True (James Brown, Lloyd Stallworth)'60 
16. (Do The) Mashed Potatoes (Part 1) (Dessie Rozier)'59 
17. (Do The) Mashed Potatoes (Part 2) (Dessie Rozier)'59
18. Think (Lowman Pauling)'60 
19. I'll Never, Never Let You Go (James Brown)'60
20. You've Got The Power (James Brown, Johnny Terry)'60 
21. If You Want Me (James Brown)'60
22. Baby, You're Right (James Brown, Joe Tex)'60 
23. And I Do Just What I Want (James Brown)'60 
24. So Long (Irving Meisher, Remus Harris, Russ Morgan)'60
25. The Bells (Billy Ward)'60

 私は、これまでずっと「James Brownが好きになりたい」と思い続けてきました。
 しかし、未だに手放しで好きとまでは言えません。
 私には、JBのファンキー・ソウルは、アルバム1枚を聴きとおすには、Too Muchなのでした。
 曲単位では、大好きなものもあるんですが…。

 そんな私ですが、実は初期のリズム&ブルース時代は、割りと好きだったりします。
 というわけで、この2枚組CDには期待していたのでした。
 何しろ、あのクリフ・ホワイト先生の仕事です。

 JB研究にかけるクリフ先生の熱意あふれる仕事は、私にCDの黎明期を思い起こさせます。
 コンパクト・ディスクというものが出始めたころの、ごくごく初期にJBを体系的にCD化し始めたのがクリフ・ホワイトでした。(80年代中期から後期だと思います。)

 多分、どこかに隠れているはずですが、私が最初に買ったJBは、クリフ・ホワイト編集による、その名も"CD Of JB"だったはずです。
 何という独創的な(?)タイトルでしょう!!
今なら考えられないタイトルですが、CD黎明期ならではの見事なネーミングです。
 
 このCDが素晴らしかったのは、JBのショーを模した曲順で、スタジオ録音が収録されていたことでした。
 MCのコールをそのまま収録し、間髪いれず、JB'sの"Doing It To Death"でスタートするショーは、汗が飛び散るアップ・ナンバーの連続で火が出そうです。

 そして、"Bewildered"だったか、"It's Man's World"だったかと思いますが、JBが自分に酔いながらろうろうと歌う大げさなバラードを挟んで、再びアップ・ナンバーの連続攻撃となり、"Papa's Got A Bland New Bag"や"Sex Machine"を経て、最後は泣き咽ぶバラードの"Please, Please, Please"で大団円を迎えるという、初期から中期のJBのセットリストを疑似体験するような流れになっていたのです。
  
 このCDは、今では入手できないだろうと思いますが(?)、今思っても良くできていたと思います。
 最新のリマスタ盤が出れば欲しいものです。
 これは、続編も作られ、私はそちらも購入しました。
 続編は、第一集から外した曲を中心に収録したもので、こちらはコンセプト的には普通のコレクションでした。 

 さて、その懐かしのクリフ先生の最新のお仕事です。
 私は、久々にまとめて初期のJBを聴きました。
 本コレクションでの私の注目曲は、以下のとおりです。

Disc 1
1. Please, Please, Please
3. Why Do You Do Me
9. Chonnie-On-Chon
12. Let's Make It
Disc 2
2. Try Me
10. Bewildered
11. Good Good Lovin'
13. I'll Go Crazy
14. This Old Heart
16. (Do The) Mashed Potatoes (Part 1)
18. Think
20. You've Got The Power

 当たり前の選曲も当然含んでいますが、その他は少しマニアックなチョイスかも知れません。

 "Why Do You Do Me"は、JBとしては珍しいスロー・ブルースです。
 仮にFamous Flamesのコーラスがなく、ピアノだけの伴奏だったら、古いシティ・ブルースという感じです。

 "Chonnie-On-Chon"は、リトル・リチャードが元ネタのような、意味のない言葉を叫ぶロックンロールです。
 実は、初期のJBは、案外このてのものが少なく珍しいのでした。

 スタイルを模索していたころのJBは、大きく分けて、二つのスタイルしかありませんでした。
 ゴスペル・カルテットそのものといったスタイルと、ブルージーなR&Bのスタイルです。
 しかも、この二つは、かなり接近していて区別しがたいものもあります。

 先輩のスタイルをいただいた曲では、主としてリトル・リチャードや、ハンク・バラードの匂いを感じます。
 今回、改めて思ったのですが、JBって、本当に抽斗の少ない人なのでした。

 デビュー曲の"Please, Please, Please"は名作だと思います。
 去っていく恋人に対して、「行かないで、どうか行かないで」と懇願する歌です。
 歌詞の量が少なく、同じフレーズを執拗に繰り返します。
 スタイルは完全にゴスペルで、JBの「お願いだ、お願いだ」というコールの連呼に、Famous Flamesが「行かないで、行かないで」とレスポンスの連呼で応えます。
 
 確かに名作だと思いますが、実はこのパターンを使った曲が多数あります。
 すぐあとに出した"I Don't Know"からして、まさにそれです。
 ここでは、「分からない、分からない」と叫び続けています。

 一方、ブルージーR&Bと呼びたい一連の曲があって、これは先輩のスタイルを模したもの以外は、大体これに当たります。
 先輩のスタイルを模したものは、ロックンロールに接近したタイプです。
 初期のゴスペル風でない曲は、ほとんどブルージーR&Bタイプだと言いたいです。

 さて、それでも、流石にDisc2になると、幅が広がった気がします。
 自作の歌詞の量も人並みになったようです。
 また、三連のブルーバラードなどもやるようになります。

 同じ時期で、私が好きなのが、"Good Good Lovin'"と"This Old Heart"です。
 どちらも、リトル・リチャードにインスパイアされた曲だと思いますが、ポップさもあり、印象に残る曲です。

 そして、わざと後回しにしてきましたが、"Try Me"、"I'll Go Crazy"、"Think"は外せない名作ですね。
 あとの2曲と"Please, Please, Please"は、ダグ・サームのお気に入りで、Sir Douglas Quintetのライヴ盤で、繰り返しソフト化されていました。
 ダグは、"Try Me"はやっていたでしょうか?
 やってなくても、好きに違いないと思います。
 インストですが、JB版の"Night Train"もやっていました。

 JBの"Night Train"は、本選集収録曲の少し後くらいの録音じゃなかったかと思います。
 すでにファンクの香りがします。
 この後、JBは、まもなく"Out Of Sight"を発表して、ファンキー・ソウルの彼方へと旅立っていくのでした。



アポロ・シアターでのI'll Go Crazyです。






愛の栄光はまぶたの下に

 今回は、The Five Keysです。
 私は、黒人ボーカル・グループが大好きなんですが、Five Keysはリズム&ブルースを聴き始めて、最も早い時期に気に入ったグループかも知れません。

 当時、東芝から出ていた「アメリカを聴こう」というロックンロールのルーツをたどるシリーズの中に、「ベスト・オブ・ドゥワップ」という1枚がありました。
 その日本盤で聴いたのが、Five Keysとの出会いでした。

 
Rocking & Crying
The Complete Singles 1951-1954 Plus
The Five Keys

Disc: 1
1. With A Broken Heart (Pierce)'51 Aladdin 3085
2. Too Late (Pierce)'51 aladdin 3085
3. Hucklebuck With Jimmy (Pierce)'51 Aladdin 3099
4. The Glory Of Love (Hill)'51 Aladdin 3099 R&B#1
5. It's Christmas Time (West, Ingram, Pierce, Smith)'51 Aladdin 3113
6. Do I Need You (Harris)'51 Aladdin 3113
7. Old Mcdonald (Had A Farm) (trad.arr.Five Keys)'51 Aladdin 3118
8. Yes Sir That's My Baby (Donaldson, Khan)'51 Aladdin 3118
9. Goin' Downtown (Unknown)'51 not released
10. Darlin' (West)'51 not released
11. Red Sails In The Sunset (Williams, Kennedy)'52 Aladdin 3127
12. Be Anything But Be Mine (Gordon)'52 Aladdin 3127
13. How Long (Mesner)'52 Aladdin 3131
14. Mistakes (Leslie, Nichols)'52 Aladdin 3131
15. Hold Me (Little, Oppenheim, Schuster)'52 Aladdin 3136
16. I Hadn't Anyone Til You (Little, Oppenheim, Schuster) Aladdin 3136
17. I Cried For You (Amheim, Lyman, Freed)'53 Aladdin 3158
18. Serve Another Round (Toombs) Aladdin 3158
19. Can t Keep From Crying (Smith)'53 Aladdin 3167
20. Come Go My Bail, Louise (Smith, West)'53 aladdin 3167
21. There Ought To Be A Law (Tobias, Kafman)'53 Aladdin 3175
22. Mama (Your Daughter Told A Lie On Me) (Smith)'53 Aladdin 3175
23. I ll Always Be In Love With You (Green, Ruby, Stept) Aladdin 3182 not released
24. Rocking And Crying Blues (Toombs) Aladdin 3182 not released
25. These Foolish Things (Remind Me Of You) (Link, Moschowitz)'53 Aladdin 3190
26. Lonesome Old Story (Pierce) Aladdin 3190
27. Teardrops In Your Eyes (Smith)'53 Aladdin 3204
28. I m So High (Demetrius, Toombs)'52 Aladdin 3204
Disc: 2
1. My Saddest Hour (Robinson)'53 Aladdin 3214
2. Oh Babe (Smith)'53 Aladdin 3214
3. Someday Sweetheart (Spikes, Spikes)'54 Aladdin 3228
4. Love My Loving (Pierce) Aladdin 3228
5. Deep In My Heart (Unknown)'54 Aladdin 3245
6. How Do You Expect Me To Get It (Young)'54 Aladdin 3245
7. Why Oh Why (West)'54 Aladdin 3263
8. My Love (Pierce)'54 Aladdin 3263
9. Story Of Love (West)'56 Aladdin 3312
10. When Will My Troubles End (Thomas, Kirkland)'54 RCA/Groove not originally issued
11. I'll Follow You (Lunceford)'54 RCA/Groove 0031
12. Lawdy Miss Mary (Willis)'54 RCA/Groove 0031
13. Ling Ting Tong (Godwin)'54 Capitol 2945 R&B#5, Pop#28
14. Close Your Eyes (Willis)'55 Capitol 3032 R&B#5
15. The Verdict (Moore, Freed)'55 Capitol 3127 R&B#13
16. I Wish I'd Never Learned To Read (Thomas, Kirkland)'55 Capitol 3185
17. She's The Most (Berlin)'56 Capitol 3392
18. I Dreamt I Dwelt In Harlem (Dixson)'56 Capitol 3392
19. My Pigeons Gone (Davenport)'56 Capitol 3455
20. Out Of Sight Out Of Mind (Hunter)'56 Capitol 3503 R&B#12
21. Wisdom Of A Fool (Alfred, Silver)'56 Capitol 3597
22. Let There Be You (Young, Cavanaugh)'57 Capitol 3360
23. It's A Cryin Shame (Wood, Schroeder)'57 Capitol 3830
24. Emily Please (Shuman, Shuman)'58 Capitol 4009
25. Handy Andy (Jones)'58 Capitol 4009
26. One Great Love (Otis, Gorso)'58 Capitol 4092
27. From The Bottom Of My Heart (Willis)'57 Capitol LP 828
28. The Gypsy (Reid)'57 Capitol LP 828
29. Who Do You Know In Heaven (That Made You The Angel You Are) (Derose, Stillman) Capitol LP 828
30. To Each His Own (Livingstone, Evans) Capitol LP 828

 「ベスト・オブ・ドゥワップ」のA面1曲目に収録されていたのが、The Five Keysの"The Glory Of Love"でした。

 この2枚組CDは、少し前に入手したのですが、最近の私のお気に入りリイシュー・レーベル、英Jasmineからリリースされたものです。
 Five Keysは、LP時代にもアルバムを入手せずじまいでしたので、いい編集盤が手に入って嬉しいです。

 このCDは、51年から54年までのAladdin時代の全シングルの両面をコンパイルしたものですが、それに加えて、54年以降のCapitol時代の音源から、50年代後半の代表曲をチョイスして収録しています。

 初期の黒人ボーカル・グループを、バード・グループと呼ぶことがあります。
 レイヴンズ、オリオールズなど、成功したグループが鳥の名前であったことから、ラークス、スワローズなど、鳥の名前を付けるのが流行ったようです。
 これらのグループの多くは、ドゥワップ以前のブルージーなスタイルを持っていました。

 一方、グループ名に"Five"と付くグループというと、何を連想しますか?
 ゴスペル・カルテットなら、Five Blind Boys Of MississippiとFive Blind Boys Of Alabamaでしょうか。

 リズム&ブルースなら、私がすぐに思いつくのは、Five Satins、Five Royals、Five Keysです。
 まあ、Five Royalsは、ゴスペル・カルテットからの転身組ですが、そんなことを言えば、他の2組も元は教会で歌っていたかも知れません。
 多分、みんな5人組だと思います。

 ただ、Five Keysの前身は、The Sentimental Fourといったそうですから、元は4人組だったのでしょう。
 さらにその前は、The Harmonizing Fourというゴスペル・カルテットだったという話もあるようです。

 Five Keysは、Rudy West、Benny West、Dickie Smith、Ripley Ingram、Maryland Pierceからなる5人組で、主としてRudy Westがリードを歌い、曲によっては、Dickie Smithがリードをとることもあったようです。
 代表曲は、Rudy Westがリードだと思いますが、残念ながら、Smithのリードがどれなのか私には分かりません。

 さて、Five Keysのこの1曲といえば、やはり"The Glory Of Love"でしょう。
 初めて聴いたときから、そのスタイリッシュ、かつダイディズムに溢れるスタイルに夢中になりました。
 
 このバージョンに痺れていた私は、初めてオーティス・レディングのバージョンを聴いたとき、ひっくり返りそうになりました。
 「なんて泥臭くて、へたくそなんだ」と本気で思ったものでした。
 もちろん、今では考えが変わっています。 
  
 ところで、本アルバムは収録曲が多いので、話をシンプルにするため、注目曲をチョイスしてみました。
 以下のとおりです。

Disc 1
3. Hucklebuck With Jimmy
4. The Glory Of Love
8. Yes Sir That's My Baby
11. Red Sails In The Sunset
25. These Foolish Things
Disc 2
1. My Saddest Hour
12. Lawdy Miss Mary
13. Ling Ting Tong
14. Close Your Eyes
15. The Verdict
17. She's The Most
20. Out Of Sight Out Of Mind
21. Wisdom Of A Fool

 いかがでしょう?
 中でも重要作は、"My Saddest Hour"、"Ling Ting Tong"、"Close Your Eyes"、"Out Of Sight Out Of Mind"でしょうか。
 もちろん、"The Glory Of Love"を除いた場合の話です。

 この中では、"Ling Ting Tong"だけが変則的な曲です。
 いわゆるノベルティックな曲で、「リン、ティン、トン」という意味のないフレーズを歌う、Five Keysとしては珍しいタイプの曲でした。
 
 "Close Your Eyes"は、いいバラードです。
 この曲は、リンダ・ロンシュタットとアーロン・ネヴィルが、デュエットでカバーしていました。
 作者は、チャック・ウィリスですが、本人盤はあったでしょうか?
 例によって、ウイりスのアルバムがすぐに出てこないため、確認できないのでした。

 ウィリスは、ロック・ファンには、"It's Too Late"で知られていますね。
 R&Bファンには、それに加えて"What Am I Living For?"とか、名曲がたくさんありますね。
 ニール・ヤングは、"Hang Up My Rock & Roll Shoes"をロカビリー・アレンジでカバーしていました。

 "Out Of Sight Out Of Mind"は、アイヴォリー・ジョー・ハンターが書いた曲です。
 この曲は、サニー&サンライナーズのカバーがあります。
 特定のコミュニティでの、サニー・オズナの影響力は凄いと思われます。
 何が言いたいかといいますと、私は「チカーノはこの曲が好きに違いない」と思うわけでした。

 このアルバムは、ロックンロールの嵐へと突入する時期の曲が多数入っています。
 54年というのは、いろいろとエポック・メイキングな曲が出た年だと思われますが、本作で、はっきりとリズムが変化したなと感じるのは、Disc 2の17曲目、56年の"She's The Most"からです。
 先ほど、この曲を注目曲に選んだのは、そういう意味からなのでした。

 今回は、ゆったりとした時間の中で、好きなリズム&ブルースの世界に浸ることが出来ました。
 私は、やはり古い黒人音楽が大好きだと改めて思いました。


Close Your Eyesです。




LindaとAaronのClose Your Eyesです。





侯爵と孔雀のバックビート

 日本盤はすでに廃盤かと思われますが、米盤ならまだ入手できるようです。
 ただ、いつまでもあるとは言えないので、欲しい人は早めにオーダーしましょう。
 有名曲がほとんどですが、一部レアな曲が含まれています。


Duke-Peacock's Greatest Hits

1. Hound Dog - Big Mama Thornton (Jerry Leiber, Mike Stoller)
2. I'm Gonna Play the Honky Tonks - Marie Adams & The Three Tons of Joy (Marie Adams, Don Robey)
3. The Clock - Johnny Ace (David Mattis)
4. Pack Fair and Square - Big Walter Price (Walter Travis Price)
5. Pledging My Love - Johnny Ace (Don Robey, Ferdinand Washington)
6. Next Time You See Me - Junior Parker (Bill Harvey, Don Robey)
7. Farther up the Road - Bobby "Blue" Bland (Don Robey, Joe Veasey)
8. Tell Me Why - Norman Fox & The Rob Roys (Don Carter, Marshall Buzzy Helfand)
9. So Tough - The Original Casuals (Gary Mears)
10. Dance With Me - The El Torros (Van Wayne Blackens)
11. Gonzo - James Booker (Deadric Malone)
12. I Pity the Fool - Bobby "Blue" Bland (Deadric Malone)
13. Funny How Time Slips Away - Joe Hinton (Willie Nelson)
14. Treat Her Right - Roy Head, Traits (Roy Head, Gene Kurtz)
15. Eight Men, Four Women - O.V. Wright (Deadric Malone)
16. Everlasting Love - Carl Carlton (Mac Gayden, Buzz Cason)

 デューク、ピーコックのコンピレーションです。
 Junior Parker、Bobby Bland、Johnny Ace、そしてO.V.Wrightとフル・アルバムが容易に手に入るアーティストの有名曲が収録されていて、これだけなら面白みはあまりありません。
 とはいえ、聴けば力技で納得させられてしまう、名曲ぞろいであるのも確かです。

 Big Mama Thorntonの"Hound Dog"も、Roy Headの"Treat Her Right"も同様です。
 
 日本での人気はないですが、Joe Hintonは、近年リイシュー・アルバムが組まれて簡単に手に入るようになりました。 
 ニューオリンズR&BのJames Bookerが入っているのは、レアかも知れません。

 そんな中、Marie Adamsは、全く知らないシンガーで、声質こそ細くタイプは違いますが、肝っ玉が座っていそうな歌いくちです。
 アナザー・ビッグ・ママと呼びましょう。
 "I'm Gonna Play the Honky Tonks"は、ジャンプ・ブルースからリズム&ブルースへの過渡期のような、そんな雰囲気の曲です。
 
 同様に、無名どころでは、3組のボーカル・グループが入っているのが嬉しいです。
 
 私は、テキサスのボーカル・グループに関心があります。
 Norman Fox & The Rob Roysは、黒人白人の混成グループらしいです。
 混成グループの有名どころでは、"Come Go With Me"のデル・ヴァイキングスを思い出しますね。
 "Tell Me Why"は、田舎版のフランキー・ライモンみたいに聴こえます。

 "So Tough"を歌っているThe Original Casualsは、ダラス出身の白人グループのようです。
 おそらくチカーノ・グループではないでしょう。
 ロックンロール風ののドゥワップです。

 The El Torrosは、グループ名からチカーノ系かと思いましたが、セントルイス出身らしく、名前には特に意味はないようです。
 "Dance With Me"は、出だしがラテン・フレイバーでスタートする曲で、ドリフターズの同名異曲を連想しますが、リード・シンガーの力に差がありすぎるのがすぐに判明します。

 これらの3曲は、ワン・ヒット・ワンダーなのかも知れず、本コンピへの収録は、その意味ではレアだと思います。 

 さて、私が最も関心を持っているのは、Big Walter Priceです。
 この人は、本作のライナーには、ヒューストン・ジャンプ系と紹介されていますが、私はニューオリンズR&Bの人かと思っていました。

 現在は、まとまった音源を入手するのはなかなか難しいと思われます。
 ヒューイ・モーのCrazy Cajun音源が、英エドセルからリリースされていますが、比較的容易に入手できるのはそれくらいでしょう。
 このコンピに収録されているピーコックの音源は、レアだと思います。

 "Pack Fair and Square"は、私は、J.ガイルズ・バンドのカバーで始めて聴きました。
 私は長い間、原曲を聴きたいと思っていたものでした。

 さて、J.ガイルズ・バンド盤では分かりにくいですが、原曲を聴けば、この曲がジョー・ターナーの"Flip Frop & Fly"からインスパイアされた曲であることがよく分かります。

 この曲の録音では、当時リトル・リチャードのツアー・バンドをやっていた(あるいはその後やることになった)、アップセッターズが当たったという話を、かつて別のDukeのコンピ(LP)のライナーで知りました。
 アップセッターズは、ロイ・ゲインズの兄弟で、サックスのグラディ・ゲインズがバンマスをしていました。

 名曲からかなりいただいているところはありますが、これはこれで一つの完成品でしょう。
 好きな曲のひとつです。

 この曲を収録したコンピCDは、私の知る範囲では、ほかには見かけません。
 そういう意味で、私にとって、このコンピの価値は高いのでした。



Pak Fair And Squareです。




Big Joe TurnerのFlip Frop & Flyです。




関連記事はこちら

ドナルド・ロビーの試供品
アップセッターズ、心をかき乱されて


イーストサイド・ワールドへようこそ

 少し前に入手した、コンピレーション・シリーズの1枚です。
 実は、全部で第12集まであって、これがなんと紙箱入り全巻セットというのが販売されていたのです。(多分、今でも購入可能だと思います。)
 これは、その第3集にあたります。


East Side Story Vol.3

1. La La Means I Love You : Delfonics(T.Bell, W.Hart)
2. What's Your Name : Don & Juan(C.Johnson)
3. How Can I Tell My Mom & Dad : Lovelites
4. You Cheated : The Shields(D.Burch)
5. My Dearest Darling : Etta James
6. Right on the Tip of My Tongue : Brenda & The Tabulations(V.McCoy, J.Cobb)
7. It's Okay : The Sunglows(R.Gonzales)
8. Dedicated to the One I Love : The Shirelles(L.Pauling, R.Bass)
9. Sitting in the Park : Billy Stewart(B.Stewart)
10. Don't Be Afraid : Frankie Karl(G.Gozier)
11. Darling : Phil & Harv
12. Sixteen Candles : The Crests(L.Dixson, A.Khent)

 このコンピレーション・シリーズは、セットとしては、01年ころにリリースされたようで、単発のオリジナルは90年代に出されているようです。
 内容は、特段説明がないのですが、シリーズ・タイトルや、収録曲の傾向からいって、どうもイーストL.A.のヒスパニック系の人たちが好む音楽を集めたものではないか、と推察します。
 会社の住所を見ると、カリフォルニア州のSanta Fe Springsと記されていました。

 とはいえ、最近の若者は、ギャングスタ・ラップ(?)とかに夢中なのでしょうから、こちらは少し親父世代向きの選曲といえるでしょう。
 チョイスされている曲は、既存のサブ・ジャンルでくくるのが難しい雑多なイメージを受けます。
 
 収録曲の傾向ですが、基本的に、ダンサー・タイプの曲はまれで、ドリーミーでマーベラスなバラードばかりが選ばれている印象が多いです。

 あえて乱暴にいうなら、リズム&ブルース(主として50年代のドゥワップ)から、60年代のブリル・ビルディング、モータウン、シカゴのノーザン・ソウルを経て、70年代のフィリー・ソウルから、果てはニュージャージー系までを、なんの略脈もなく並べた、スイート・ソウル風のバラードのコンビということになろうかと思います。

 とはいえ、私はまだこの第3集までを聴いただけなので、あるいは全てを聴き通せば、別のコンセブトが見える可能性はあります。
 ただ、おそらくは当たっているのではないか、とも密かに思っています。

 広義には、少し前の世代のラティーノ(スペイン語を公用語とするラテン・アメリカの出身者)たちが、好んで聴いた音楽という推測もできます。
 しかし、やはり南カリフォルニアのイーストL.A.と呼ばれる地域を居住区とする人々が主たる対象ではないかと思います。

 早速、今作収録曲を聴いてみましょう。
 私が、第1集、2集を外して、あえてこの第3集をセレクトしたのには、理由があります。
 比較的、有名曲がチョイスされていること、とりわけ、ダグ・サーム関連の曲が入っていることが大きいです。

 冒頭の"La La Means I Love You"は、デルフォニックスの大有名曲ですね。
 初期のフイリー・ソウルを代表する名バラードでしょう。
 これは、もうヒット曲集に頻繁に収録されている曲で、新鮮味はないです。
 しかし、定番の名曲が冒頭に鎮座したことで、ぐっとひきしめた印象もあります。

 続く、"What Your Name"は、ドン&ファンというデュオによる、これまた名バラードです。
 ドリーミーとはこういう曲をいうんでしょう。
 ソウル・デュオではありますが、歌唱のスタイルは、明らかに伝統的なドゥワップをベースにした古いスタイルのものです。

 この曲は、ダグ・サームが、名作ソロ"Juke Box Music"で素晴らしいカバーを披露していた曲です。
 ダグ盤からあまりにも強い印象を受けたため、当時は原曲を探し回ったもでした。
 ところが、ライノのドゥワップ・ボックスに収められていたことを後で知り、急に疲れがきたことを覚えています。  
 ドゥワップ・ボックスは、私の愛聴盤でしたが、収録されていたことを失念していたのでした。

 ひとつとばして、Etta Jamesの"My Dearrest Darling"もまた、ダグが"Juke Box Music"でカバーしていた曲です。
 バラードではありますが、Ettaが歌うと、時折りハードなシャウトが聴けるのが面白いです。
 原曲は、モダンかチェスへの録音だったと思います。

 続く、Sunglowsの"It's Okey"がとても気になる曲です。
 ここでいう、Sunglowsとは、Sunny & Sunglowsの後継に当たるグループなのでしょうか?
 ここでリードをとっているのは、どうもJoe Bravoというシンガーらしいです。
 またまた、気になる存在か出てきました。
 
 ここに収められているのは、今までのグループの曲とは明らかに違う曲調です。
 テイク自体も、疑似ライヴっぽい印象を受けますが、かなりかっこいい曲で、とても興味深いです。

 ここでは、習慣性のある反復グルーヴにのせて、黒人でいえばプリーチのような語りを積み重ねて曲が進行します。
 あるいは、元ネタは、Joe Bravo & Sunglowsのライヴ盤(疑似ライヴ盤?)の1曲かも知れません。

 続く"Dedicated to the One I Love"は、ガール・グループのシレルズ盤が収められています。
 シレルズは、ビートルズが大好きだったグループですね。
 チャーミングな魅力を発散させている曲で、このバージョンは比較的有名なものです。

 実は、このシリーズの第2集には、同曲のThe Temprees盤が収録されていました。
 それだけ人気曲だという証左でしょう。
 オリジナルは、硬派のドゥワップ(ブルージーなハーモニー・グループ)のThe"5"Royales盤です。
 作者には、ステイーヴ・クロッパーのアイドルであったギタリスト、ローマン・ポーリングの名前が記されています。

 ファイヴ・ロイアルズは、ゴスペル・カルテットからの転身組であることがバレバレのグループで、JBが愛したグループでもありました。
 JBは、彼らの"Think"を、初期の模索時代にいち早くカバーしましたが、ファンキー・ソウル確立後に、再度ニュー・バージョンを吹き込んでいます。
 JBファミリーのリン・コリンズ盤も有名ですね。

 そして、Billy Stewartの"Sitting in the Park"が入っています。
 ますます、チカーノ好みの選曲だなあと感じました。
 やはり本シリーズは、ヒスバニック向けオールディーズ・コンピだろうと思いました。
 曲は、もう名曲というほかないです。
 この曲は、サニー&サンライナーズもカバーしています。

 私が知らないグループがいくつか含まれていましたが、何となくラティーノ系ではないかと想像しているもの(Phil & Harv)や、一部ルイジアナ系ではないかと思われるもの(Frankie Karl)などもあり、新たに関心を持ちました。

 そして、ラストは、オールディーズ・コンピの常連、クレスツの16キャンドルズで締めです。
 チーク・タイム向けのおセンチなバラードですね。
 リードのジョニー・マエストロは、ディオン&ベルモンツらと並び、マイノリティ系ホワイト・ドゥワップ・グループを代表する存在でしょう。
 これは、問答無用の名曲ですね。

 たくさんのカバーがあると思いますが、私はかつて、ストレイ・キャッツによるカバー盤が聴きたくて、ある映画のサントラ・ミニ・アルバム(?)を買ったような記憶があります。
 あのバージョンは、CD化されているでしょうか?

 というわけで、このシリーズは、リズム&ブルースがいかにチカーノに影響を与えたかということや、彼らの嗜好の傾向を知るうえでも大変興味深いものだと思います。
 (シリーズ・コンセプトが、私の想像どおりだとした場合の話ですが…。)

 このシリーズは、ゆっくり聴いていきたいと思っており、またいずれ別の盤をとりあげるかも知れません。


It's Okeyです。




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セクシー・ウェイズ

 今回は、Hank Ballardの50年代のシングル・コレクションを聴きます。
 Hank Ballardは、以前から、私のお気に入りR&Bシンガーの一人です。

 
Come On And Get It
The Singles Collection 1954-1959
Hank Ballard And The Midnighters

Disc: 1
1. Work With Me Annie
2. Until I Die
3. Give It Up
4. That Woman
5. Sexy Ways
6. Don't Say Your Last Goodbye
7. Annie Had A Baby
8. She s The One
9. Annie's Aunt Fannie
10. Crazy Loving (Stay With Me)
11. Tell Them
12. Stingy Little Thing
13. Ashamed Of Myself
14. Ring, A, Ling, Ling
15. Why Are We Apart
16. Switchie Witchie Titche
17. Henry's Got Flat Feet (Can't Dance No More)
18. Whatsoever You Do
19. It s Love Baby (24 Hours A Day)
20. Looka Here
21. Give It Up
22. That Woman
23. Rock And Roll Wedding
24. That House On The Hill
25. Don't Change Your Pretty Ways
26. We'll Never Meet Again
27. Partners For Life
28. Sweet Mama, Do Right
29. Rock Granny Roll
30. Open Up The Back Door
Disc: 2
1. Tore Up Over You
2. Early One Morning
3. I'll Be Home Some Day
4. Come On And Get It
5. Let Me Hold Your Hand
6. Oh Bah Baby
7. E Basta Cosi
8. In The Doorway Crying
9. Oh, So Happy
10. Is Your Love For Real
11. Let 'Em Roll
12. What Made You Change Your Mind
13. Stay By My Side
14. Daddy's Little Baby
15. Baby Please
16. Ow, Wow, Oo, Wee
17. Teardrops On Your Letter
18. The Twist
19. Kansas City
20. I'll Keep You Happy
21. Sugaree
22. Rain Down Tears
23. Cute Little Ways
24. A House With No Windows
25. I Could Love You
26. Never Knew
27. Look At Little Sister
28. I Said I Wouldn t Beg You

 皆さんは、海外アマゾンを使われているでしょうか?
 私は、アマゾンUSとUKをよく使います。
 ここ最近の私のオススメは、アマゾンUKのマーケット・プレイスです。

 基本的に、USとUKを比較しますと、UKのほうが配送が早いです。
 USは配送スピードを3段階から選ぶようになっていて、スタンダードだと、長いときは約1か月かかり、早い配送を選ぶと料金がアップします。

 対して、UKでは通常配送でも、2週間以内に届くと思います。
 しかも、UKでは、アマゾン本体より、マーケットプレイスのほうが国際送料が安いです。
 マーケットプレイスでは、実際に掛った額に関わらず、アマゾンが送料を定額で定めています。
 この額が、UKでは、マーケットプレイスのほうがユーザーに優しい設定になっているのです。
 利用しない手はないですね。
 (…この段落は個人の感想に基づいています。)

 まあ、ここ数日、数年続いた円高から、円安へとトレンド変化したのではないか、と言われ始めており、為替の動向が気になるところではあります。

 さて、このアルバムは、私が最近気に入っているリイシュー・レーベル、英Jasmineから10年にリリースされたものです。
 これも、現在なら、海外アマゾンのほうが安価で入手できる思います。
 2枚組ですが、1枚もの並みの価格設定になっていると思います。
 一度本邦アマゾンと、アマゾンUS、UKの価格を比較してみることをお勧めします。

 さて、ハンク・バラード&ザ・ミッドナイターズですが、ロックンロール時代にフィットした、黒人ボーカル・グループだと思います。
 ポップでキャッチーな曲が多数あり、とても聴きやすいです。

 50年代のハンク・バラードは、みんな良いですね。
 なかでも、本アルバム収録曲では、以下の曲に特に注目です。

Work With Me Annie (Ballard)'54 R&B#1
Sexy Ways (Ballard)'54 R&B#2
It's Love Baby (24 Hours A Day)(Ballard)'55 R&B#10
Tore Up Over You (Ballard)'56
Teardrop On Your Letter (Glover)'59 R&B#1,Pop#87
The Twist (Ballard)'60 R&B#6,Pop#28
Sugaree (Robbins)'59
Look At The Little Sister (Ballard)'59

 "Work With Me Annie"は、ハンク・バラード作の名作ですが、Etta Jamesの"Roll With Me Henry"、又は"Dance With Me Henry"としても知られている曲です。
 そちらでは、作者は、Hank Ballard、Etta James、Johnny Otisとなっています。

 Etta盤に登場する人物の名前が、ヘンリーさんなのも興味深いです。
 一般的に、Hankの正式名はHenryだからです。
 話を面白くしようとしすぎですか?

 アニーは、その後シリーズに発展して、"Annie Had a Baby"54' R&B#1、"Annie Aunt Funny"54' R&B#10なんていう、二匹目、三匹目のヒット曲を生んでいます。  
 基本的に、似たようなパターンを使った曲です。

 Sexy Waysも、似たリズム・パターンを使い回しした曲があると思います。
 こういった見え見えの戦略は、いつの時代でも同じですね。

 ところで、「アニーが結婚した」っていうタイトルの曲はなかったですか?
 私の勘違いかなあ…。

 It's love Baby (24 Hours A Day)は、ハンク作となっていますが、どうなんでしょう。
 一般的には、Earl Gainsの代表曲として知られている曲に同名のものがあり、作者は、Ted Jarrettです。

 アール・ゲインズは、ボビー・ブランドのフォロワーとしては、バディ・エイス、ジーター・デイヴィスと並ぶ大物です。
 アール盤は、後に御大ボビー・ブランドも、87年のマラコ盤、"Blues You Can Use"でカバーした名作です。
 ハンク盤は、出だしこそ少し違う感じに思えますが、サビは同じように聴こえます。
 このへんは、あっさりクレジット間違いという可能性もありますが、少し調べてみたいところです。

 "Teardrop On Your Letter"は、三連ブルー・バラードの名作ですね。
 レーベル・メイトのFreddie Kingによるカバー盤があり、こちらも素晴らしい出来です。
 Doug Sahmファンとしては、Garrett、Sahm、Taylor Band盤ですね。
 
 The Twistは、世の中にツイスト・ブームを巻き起こした、説明不要の大ヒット曲ですね。
 一般的には、チャビー・チェッカーによるカバー盤で有名になった曲で、続編のLet's Twist Againも、最高にスイングする名作でした。

 "Sugaree"も気になる曲です。
 Marty Robbins作というのが気になるのです。
 このマーティ・ロビンズというのは、大物カントリー歌手に同名の人がいますが、どうなんでしょう?
 このスワンプ・ポップ調のロックンロールが、"El Passo"とか、"White Sport Coat"と同じ人が書いた曲とは思いずらいですが…。

 また、似たタイトルと曲調を持つ、"Sugar Bee"というEddie Shulerの作品(Sir douglas Quintetもカバーしています。)もあり、関係が気になるところです。 

 "Look At The Little Sister"は、あまり知られていない曲だったはずですが、スティーヴイー・レイ・ヴォーンが取り上げたため、注目曲になりました。
 カッコいい曲です。

 本作未収録曲では、"Finger Popin' Time"、"Let's Go、Let's Go、Let's Go"が、特にお勧めです。
 "Finger Popin' Time"は、ルー・アン・バートンの素晴らしいカバーがあります。
 また、"Let's Go、Let's Go、Let's Go"は、ジョン・フォガティが、CCR時代の自作を封印していた時代に、ステージのレパートリーにしていた曲でした。
 この曲とオーティスの"I Need Your Lovin'"をメドレーでやっていて、かっこよかったです。

 何だか、思いつくままに書いていたら、気になることだらけになりました。
 というか、書くことによって、自分が気になっていたことが明らかになったという感じです。

 今回の内容のいくつかは、別の機会に再度とりあげたいと思います。


Let's Go、Let's Go、Let's Goです。




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メイベル姐さんの夢は夜ひらく

 貫禄たっぷりな女性ボーカルです。
 Hound DogのBig Mama Thorntonは凄い迫力ですが、この人も負けてはいません。
 確か、Jerry Lee LewisのWhole Lotta Shakin' Goin' Onは、この人がオリジネイターだったのでは?


Blues, Candy & Big Maybelle
Big Maybelle

1. Candy
2. Ring Dang Dilly
3. Blues Early, Early
4. A Little Bird Told Me
5. So Long
6. That's A Pretty Good Love
7. Tell Me Who
8. Ramblin' Blues
9. Rockhouse
10. I Don't Want To Cry
11. Pitiful
12. A Good Man Is Hard To Find
13. How It Lies
14. Goin' Home Baby
15. So Long
16. Say It Isn't So
17. If I Could Be With You
18. Goodnight Wherever You Are
19. That's A Pretty Good Love
20. White Christmas
21. Silent Night
22. How It Lies
23. Goin' Home Baby
24. I Ain't Got Nobody
25. I Understand
26. I Got It Bad
27. Some Of These Days
28. Until The Real Thing Comes Along

 このCDは、Big MaybelleがSavoyからリリースした2枚のアルバムをカップリングしたもので、いずれも50年代後半の録音を収録しています。

 元のLPのタイトルがよくわからないのですが、CDのタイトルからいって、"Blues, Candy"と、"Big Maybelle"でしょうか?
 トラック1から14と、トラック15から28が、それぞれのアルバムに該当します。

 録音時期がほぼ同じということもあって、2枚にはさほどの違いを感じませんが、あえていうなら、前半の方がリズム&ブルース度が高く、後半はおとなしめに感じます。
 
 私は、この人はオーケー時代の録音は聴いていたのですが、サヴォイ録音をまとめて聴いたのは初めてです。
 先に触れた、Whole Lotta Shakin' Goin' Onは、55年頃リリースのオーケー録音ですね。
 この曲は、ほぼ同時期に、ヒルビリーのRoy Hall盤がありますが、どちらがオリジネイターでしょう。 

 さて、私は、サヴォイというレーベルに対して、先入観といいますか、勝手な思いこみがあります。
 なんとなく、ハイソなイメージを持っているのです。

 リズム&ブルースに関しては、黎明期の重要な録音を記録したという思いがあり、一種特別なレーベルと感じていました。
 
 具体的には、まず、バード・グループ(広義にはドゥワップ)のパイオニア、Ravensの名作、Ole Man Riverが頭に浮かびます。
 スタイリッシュなバラーディアー、Billy Eckstineや、女性R&Bシンガーを代表する一人、Little Estherの顔も浮かびます。
 そして、リトル・エスターを持ちだすまでもなく、ゴッド・ファーザー・オブ・R&B、Johnny Otisの初期の吹き込みは忘れられません。
 
 私のリズム&ブルース体験は、東芝やワーナーの日本盤からスタートしましたが、最初に買った輸入盤が、ジョニー・オーティス・ショウの2枚組サヴォイ盤でした。
 冒頭に入っていた、ハーレム・ノクターンが忘れられません。
 悪魔の音楽との遭遇ですね。

 初期リズム&ブルース(というかジャンプ)のスタンダード、ポール・ウイリアムズのHukle-Buckも、サヴォイでした。
 そして、レイ・チャールズの元ネタのひとつ、Nappy BrownのThe Right Timeも、このサヴォイに録音があります。

 このビッグ・メイベルのアルバムでも、重厚なサウンドに支えられて、メイベルの迫力満点のボーカルが、時に炸裂し、時に優しく囁きかけるように迫ってきます。

 曲によって、リズム&ブルース度の濃淡に差があるように思いますが、楽団自体は、もともとジャズ畑の人たちだと思われます。
 当時は、ジャズだけでは食べていけなかったため、リズム&ブルースも掛け持ちしていた奏者が多かったという話を聞いたことがあります。
 彼らの幾人かは、ブリブリとブロウしたりするのは本意でない人がいたかも知れません。
 チャーリー・パーカーも、サヴォイでリズム&ブルースを吹き込んでいます。

 さて、本作です。
 リズム&ブルース度の高い曲では、攻撃的なギターが聴こえます。
 一瞬で世界の色を変えるこのギターは、ミッキー・ベイカーが弾いています。

 ビッグ・メイベルは、歌がうまく、貫禄充分です。
 姉御肌にシャウトしたりも、スムースに優しく語りかけることも、彼女の中に矛盾なく同居しています。

 私的には、いくつか注目したい曲があります。
 まず、冒頭のCandyです。
 この曲は、ドクター・ジョンが、アルバムIn A Sentimental Moodでやっていた曲です。

 そして、10曲目のI Don't Want To Cryは、チャック・ジャクソンに同名ヒットがありますが、別の曲です。
 こちらは、シンディ・ローパーが、ブルース・アルバム、Memphis Bluesでカバーした曲です。
 私は、このシンディ盤が気に入りました。

 実は、ビッグ・メイベルのサヴォイ録音を入手しようとした動機がそれなのでした。
 驚いたことに、緊迫感ではシンディ盤のほうが勝っているように感じます。
 ディープ・ソウル風の伴奏のせいかも知れません。
 いずれにしても、私は満足しました。

 ついでといってはなんですが、11曲目のPitifulという曲にも触れたいと思います。
 この曲は、残念ながら、オーティスのMr.Pitifulとは何の関係もない曲のようです。

 今名前をあげた3曲は、いずれもミッキー・ベイカーがギターを弾いた曲でした。
 その他のいくつかの曲では、ジャズ畑のケニー・バレルが弾いています。

 後半(トラック15以降)の曲は、いくぶんおとなしめのアレンジが続きます。
 そんな中で、ワイルドな魅力をまき散らしている曲があります。
 19曲目のThat's A Pretty Good Loveです。
 メイベルのボーカルからして違いますが、この曲のギターが、やはりミッキー・ベイカーなのでした。

 ビッグ・メイベルは、60年代になっても凄い曲を残している人なので、いつかまた取り上げたいと思っています。



メイベル姐さん、クエスチョン・マークを歌う




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バードからワームへ

 以前から欲しかったThe SpidersのCDを入手しました。
 本当は、Bear Familly盤が欲しかったのですが、(私にとっては)高価なため、こちらをチョイスしました。
 結果、届いたものは、どうもブートくさいです。


The Spiders Volume2

1. (True) You Don't Love Me
2. Witchcraft
3. You Played The Part
4. Is It True
5. How I Feel
6. That's The Way To My Heart
7. Goodbye
8. I'll Be Free
9. Don't Pity Me
10. Dear Mary
11. A-1 In My Heart
12. Without Love
13. Someday Bye And Bye
14. That's My Deaire
15. Better Be On My Way
16. Honey Bee
17. I'm Glad For Your Sake
18. Poor Boy
19. The Bells Are Ringing
20. I Miss You
21. Times
22. You're The One
23. Tennessee Slim

 アナログ時代のブートは、スクラッチ・ノイズが当たり前でしたが、CD時代になって、音の面ではオフィシャルとそん色ないことが普通です。
 しかし、ジャケットやリーフレットがお粗末なものがほとんどで、がっかりさせられます。
 この盤も収録曲に関するデータは一切記載されていません。

 スパイダーズは、私がリズム・アンド・ブルースを聴き始めたごく最初のころ、「ドゥワップ旋風」という日本盤LPで聴いたのが最初だと思います。

 これは、「アメリカを聴こう」という、ロックンロール、リズム・アンド・ブルースのシリーズの1枚で、ドゥワップのコンピレーションでした。

 スパイダーズは、ニューオリンズの黒人ボーカル・グループです。
 ロックンロールの時代になり、フランキー・ライモンらの成功を受けて、ドゥワップ・グループが雨後のタケノコのように出現しました。
 その多くは、北部の大都市から出たイメージが強いです。

 ドゥワップは、ストリート・コーナー・シンフォニーなどと呼ぶ人もいるように、最初は街角でグループを組んだティーンネイジャーたちが、アカペラでハモって街ゆく人々に披露していたのでしょう。
 その中の一部の幸運なグループだけが、レコードを作り世の中に出て行くことができました。

 少し前の、ベテランのプロ集団だけが活躍できた時代から、10代の若者が夢をつかめる時代が、つかの間やってきたかのようでした。
 ヒスパニック系の若者たちがレコードを吹き込み、リズム・アンド・ブルースのチャートに顔を出すようなったのも、このころからだと思います。

 さて、ドゥワップは、ルーツ・ミュージックの宝庫たる南部では、あまり成功したグループが見当たらないように思います。
 とりわけ、ニューオリンズではそういうイメージがあります。

 決して、ドゥワップが都会でだけ盛り上がっていた訳ではないと思います。
 当時は、ニューオリンズでも相当数のグループが存在したと思います。
 でも事実として、ナショナル・チャートに顔を出したグループは、わずかだったのではないでしょうか。

 ニューオリンズでは、このスパイダーズが代表的存在でしょう。
 というか、他に思いつきません。
 同じ南部でも、ナッシュビルあたりなら、まだいくつか頭に浮かぶグループがあるのですが…。

 このグループのリード・ホーカルは、後にソロとして独立したチャック・カーボです。
 サウンドとしては、アカペラではなく、プロの楽団が付いたしっかりとしたつくりです。
 また、グループ自体も、古い職人集団の匂いがします。
 ニューオリンズR&Bの素晴らしい伝統が、ここにも息づいていると思いました。

 グループの代表曲は、I Didn't Want To Do Itでしょう。
 私が初めて聴いた曲が、まさにその曲でした。
 いわゆるドリーミーなバラードではなくて、調子のよいリズム・ナンバーです。
 そういう予断で聴いているせいでしょうか、いかにもニューオリンズだなと感じてしまいます。

 しかし、このアルバムには、その代表曲が収録されていません。
 かわりに、それに次ぐヒットだと思われる、Witchcraftが入っています。
 また、I Didn't Want To Do Itのメロを再使用したような、Better Be On My Wayなんて曲もあります。

 スマイリー・ルイスのThe Bells Are Ringingなんてのもやっていて、その正体は明らかです。

 さて私が、代表曲を収録したVol.1ではなく、こちらのVol,2を先に入手したのには理由があります。
 それは、I'm Glad For Your Sakeが収録されていたからです。

 この曲は、ダグ・サームの愛唱歌のひとつで、マーキュリー時代に素晴らしいバージョンを吹き込んでいます。
 私はダグの元ネタを探すため、これまで、古いジャズのアンディ・カーク盤、ヒルビリーのカウボーイ・コーパス盤、アトランティック以前のレイ・チャールズ盤、ニューオリンズR&Bのジョー・ジョーンズ盤を聴いてきました。

 ここに、スパイダーズ盤が、新たに加わったわけです。
 ここでは、リード・ボーカルに絡んで、まさに「ドゥワッ、ドゥワッ」というコーラスのリフレンを聴くことが出来ます。

 私は、次はダイナ・ワシントン盤を入手したいなと考えています。



I Didn't Want To Do Itです。




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ベリー・ゴーディの初期のお仕事

 昨日まで何ともなかったのに、今日はひどいです。
 眼はしょぽしょぽするし、痒いし、くしゃみは出るし、風邪のひき始めかと思いましたが、どうやら何年ぶりかで花粉症が再発したようです。

 こんなことを言うと、そもそも治ることがないんだから、再発というのはおかしいと思われるかも知れません。
 しかし、事実として、私は、かつてひどい花粉症でしたが、ここ数年は治まっていたのでした。
 というわけで、メンタルが少しダウン気味です。


Berry Gordy Motor City Roots

1. Reet Petite (The Finest Girl You Ever Want To Meet)/ Jackie Wilson
2. That's Why (I Love You)/ Al Kent
3. Thrill Of Love/ The Solitaires
4. My Love Is Coming Down/ Kenny Martin
5. Is It Too Late/ The Fideltones
6. Everyone Was Three/ Bob Kayli
7. I Took A Dare/ Bob Kayli
8. Never Before/ Tom Clay&The Rayber Voices
9. Marry Me/ Tom Clay&The Rayber Voices
10. Got A Job/ The Miracles
11. My Momma Done Told Me/ The Miracles
12. I Need Some Money/ The Miracles
13. I Cry/ The Miracles
14. Blabber Mouth/ The Five Stars
15. Baby Baby/ The Five Stars
16. You (You You You You)/ Eddie Holland
17. Little Miss Ruby/ Eddie Holland
18. It's So Fine/ Lavern Baker
19. Etcetra/ Jackie Wilson
20. Lonely Teardrops/ Jackie Wilson
21. Action (Speaks Louder Than Words)/ Bobby Darin
22. Once Upon A Time/ Marv Johnson
23. My Baby O/ Marv Johnson
24. In Nature Boy/ Briant Holland
25. Don't Be Afraid Of Love/ Harvey Fuqua

 こういうときは、米国版、植木等ともいうべき、ジャッキー・ウイルソンのReet Pettiteを聴いて、弱気の虫を吹き飛ばしたいものです。

 このアルバムは、09年に英Jasmineからリリースされた編集盤で、タイトルから想像できるとおり、モータウンの創始者、ベリー・ゴーディの最初期の仕事をコンパイルしたものになっています。
 おそらくは、09年がモータウンの50周年に当たるため、企画されたものだと思われます。

 収録曲は、それぞれ色んなレーベルからリリースされたものです。 
 ゴーディは、主にソング・ライターと制作で関わっていると思われ、ここに収録されたアーティストは、サウンド・オブ・ヤング・アメリカの礎となった人たちなのでした。

 このなかで、その関係が比較的知られているのは、ジャッキー・ウイルソンとマーヴ・ジョンソンだと思われます。
 ここには、モータウン設立前に、ゴーディが行った様々な試行錯誤が凝縮されていると思います。

 あとは、エディ・ホーランド、ブライアン・ホーランド、そしてミラクルズは、身内的な存在ですね。
 また、ハーヴェイ・フークァがゴーディと関係があることも、まあ知られている方かも知れません。

 他では、ラヴァーン・ベイカーが入っていて、これは軽い驚きでした。
 ラヴァーンについては、少し調べてみましたが、私の限られたリサーチの範囲では、収録曲以外では、ゴーディとの接点はないようです。
 Jim Dandy Got Marriedに関わったという話もあるようですが、未確認です。

 ボビー・ダーリンの存在も面白いですが、あまり関心はありません。
 それよりも、何となく、この人以外にも無名人の中に、白人シンガー、ないしはグループがいるようなが気がします。

 さて、今回聴いてみて、ジャッキー・ウイルソンは別格として、ミラクルズの曲は、ゴーディとスモーキーの共作ですが、若干古いスタイルのR&Bの匂いを感じます。
 それでも、ドリーミーで、マーベラスなスモーキーのボーカルの萌芽は、形作られつつあると思いました。
 こういったスタイルでは、バレット・ストロングとか、マーべレッツとかは、ここに収録されていてしかるべきアーティストではないかと思いました。 

 さて、私がこのアルバムで最も注目したのは、ラヴァーン・ベイカーです。
 実は私は、ラヴァーンのファンなのでした。
 ルース・ブラウンよりも、エスター・フィリップスよりも好きです。

 まあ、人気はあまりないと思います。
 まず、女性としてのチャーミングさがあまり感じられず、吐き出すようなボーカルは、曲によっては迫力ものですが、ノベルティックな曲では、色ものという印象をより増してしまうようです。

 それでも、私が好きなのは、彼女には、ロックンロールやリズム&ブルースの原初的なエネルギーを感じるからなのでした。
 彼女の作品が、多くの白人歌手にカバーされ、お上品に薄められたバージョンとして再生されていることは比較的知られています。
 
 さて、ただ1曲収録されているラヴァーンのIt's So Fineですが、この曲はなかなか興味深い仕上がりになっています。
 私は、すぐにジャッキー・ウイルソンを連想しました。

 彼女が力強く繰り返す「It's So Fine、ine、ine、ine…」のフレーズは、ジャッキーのReet Pettiteの「She So Fine、Fa Fa Fa Fine、ine、ine」という、世界最高のお調子者ソングと、かなりの度合いでシンクロしています。

 ジャッキーのこの歌い方や、とりわけスーテジングは、直接的精神的ともに、エルヴィスのお手本となったと私は思っています。
 
 そういった意味からも、ラヴァーンとジャッキーとの接点の発見は、とても興味深いものでした。
 ちなみに、ラヴァーン・ベイカーのIt's So Fineは、彼女のアルバムでは、59年のBlues Balladsに収録されています。



Reet Pettiteです。




It's So Fineです。




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ミス・デロレス・ベイカー


ウーマック・ブラザーズを聴こう

 ブートではありますが、Valentinosがこれだけまとめて聴けるCDは他にないと思います。
 ジャケットのデザインや、レタリング(フォント・デザインのことです)のイケてなさから、オフィシャルではないと思いましたが、収録曲の魅力に抗い難く、ついにオーダーしてしまいました。


Do It Right
The Valentinos

1. Darling, Darling, Darling  
2. Everybody Wants to Fall in Love *
3. Baby, Lots of Luck * 
4. Lookin' For a Love *
5. I've Got Love For You *   
6. I've Got a Girl  
7. Tired of Living in the Country * 
8. It's All Over Now * 
9. I Found a True Love **
10. What About Me  
11. Do It Right  
12. I'm Gonna Forget About You
13. Let's Get Together chess
14. I've Come a Long Way
15. See Me Through
16. Sweeter Than the Day Before
17. Baby Girl
18. A Lonesome Man **
19. Couldn't Hear Nobody Pray * 
20. Yield Not to Temptation * 
21. Somewhere There's a God * 
22. I Can Understand It

 ヴァレンティノスについては、Sam Cooke's SAR Records Storyと、かつてPヴァインから出ていたLPで聴いていたものが全てでした。
 例によって、PヴァインのLPが所在不明で確認できませんが、少なくとも、SAR Records Story収録曲は全て、このCDにも収められています。
 曲名のあとに*マークをつけたものが該当曲です。

 このうち、19,20,21の3曲、Couldn't Hear Nobody Pray、Yield Not to Temptation、Somewhere There's a Godは、ウーマック・ブラザーズ名義でリリースされたもので、最も早い時期の録音になります。
 SAR Records Storyのライナーによれば、61年録音ということですので、最も新しい録音である、73年のI Can Understand Itとは10年以上の開きがあって、明らかに音が違うことが分かります。

 また、ボビーのソロ名義で出された曲が2曲あり、**マークをつけました。
 I Found a True LoveとA Lonesome Manがそれで、65年にチェッカーからリリースされています。

 さて、全体を通して思うのは、バラードが少なく、アップの曲が多いということです。
 ソウル・ダンスや、ノーザン・ダンサー風のものが耳に残ります。
 その一方で、正体をもろに表している、ゴスペル・カルテット・スタイルで、力強く推進するような曲も印象的です。

 SAR Records Storyを聴いたときには、他のシンガーのゴスペル曲により惹かれるところがあり、ヴァレンティノス盤は、あまり印象になかったのですが、これを聴いて、その魅力に気付かされました。

 多くの曲では、ボビーの兄貴、カーティス・ウーマックがリードを歌っています。
 この人の声は、太めのスムースなバリトンで、ゴスペル調の曲でシャウトすると、荘厳な感じがしてカッコイイです。
 なおかつ、これは特筆したいのですが、ファルセットも多用していて、こちらはインプレッションズのスタイルを連想します。 
 というわけで、カーティスがリードをとる曲は、力強いカルテット・スタイルのゴスペルと、インプレッションズを連想させるノーザン・ダンサーという印象が強いです。

 一方、ボビー・ウーマックがリードをとる曲は、ダーティーなしゃがれ声が耳につき、兄に比べて下品と言えなくもないですが、良く言えばワイルドな魅力に溢れているとも言えます。

 そんな二人ではありますが、サム・クック・フレイバーを感じさせるという点では共通しています。

 カーティスでいいますと、冒頭のDarling, Darling, Darlingからして、サムを思わせるフレーズが出てきます。
 ボビーは、野卑な歌い方で、サム・スクールの優等生とは言い難いですが、ここは、サムのハーレム・スクウェアでの歌い方を思い起こしましょう。

 何曲か、気になった曲をピックアップしたいと思います。

 まず、有名どころからいきましょう。
 Lookin' For a Loveは、ボビーのソロでのバージョンの印象が強烈ですが、こちらのオリジナル・バージョンも良いです。
 ハンドクラッピングが、性急な感じをあおっていて、ダーティーなボビーのボーカルを一層際立たせています。

 Tired of Living in the Countryは、本作の中では、珍しくドゥ・ワップ・スタイルの曲です。
 ニューオリンズR&B風のリズムにのせて、ドゥ・ワップらしいベース・シンガーのフレーズや、古いスタイルのコーラスが聴ける珍品です。
 ボビーは、ソロ作、B.W.Goes G.Wでやっています。
 (ただし、所在不明のため聴き比べられませんでした。)

 It's All Over Nowでは、ストーンズ盤でのギターの元ネタを聴く事が出来ます。
 あのバージョンは、決してチャック・ベリー風にやったわけではなくて、原曲からしてそんなスタイルの演奏なのでした。
 ボ・ディドリー風のマラカスが、チェス・サウンドを連想させ、また、ボビーのギターは、まるでマット・マーフィーみたいに聴こえます。
 
 I'm Gonna Forget About Youは、クック作の曲で、ここではカーティスがリードを取っていますが、ボビーもソロ作、My Prescriptionでやっています。
 その他、アーサー・コンリーとか、O.Vとかもやっていたように思いますが、ここでのバージョンは、まるで違う雰囲気に仕上がっています。

 I've Come a Long Wayは、後にウイルソン・ピケットが吹き込んだ曲です。
 このアルバムでは、珍しいミディアム・サザン・ソウル・バラードで、ボビーの熱い歌声が聴けます。

 ラストのI Can Understand Itは、カーティスのリードですが、73年ということもあって、サウンドが全く違います。
 こちらは、ボビーがソロ作、Understandingの1曲目でもやっている曲で、音のつくりはとてもモダンで、ほとんどボビー盤に近いです。

 そのほかの曲にも少し触れたいと思います。
 Everybody Wants to Fall in Loveは、カーティスのリード曲ですが、インプレッションズを思わせる展開の曲です。
 ファルセットになったときなど、同じカーティスつながりで、私などは、ストレートにメイフィールドを連想しました。

 I've Got a Girlは、ボビーがリードの曲ですが、SAR Records Storyでは、別トラックに収録されていた、録音開始前のおしゃべりが、曲のあたまにしっかり収録されています。
 ボビーの後のソロ時代を思わせる、熱気に満ちたバージョンで、ボビーのShe So Fineというリフレインと、ハンドクラッピングが効果的に使われています。
 
 Baby Girlは、カーティスのリードによる、本アルバムでは珍しいバラードです。
 ボビーとは違い、ジェントルな雰囲気のボーカルを聴かせます。
 
 最後に、ウーマック・ブラザーズ名義の曲を聴いて締めたいと思います。
 Couldn't Hear Nobody Prayは、ボビーのリード曲で、珍しくクリーンで滑らかな歌声でスタートしますが、やはり途中からダーティーなボーカルに変わる、カルテット・スタイルのゴスペルです。

 Yield Not to Temptationは、ボビー・ブランドに同名曲がありますが、別の曲です。
 ブランド盤はジャンプ・ナンバーでしたが、こちらは、カーティスの荘厳なボーカルによる、感動的なカルテット・スタイルのゴスペルに仕上がっています。

 Somewhere There's a Godもまた、カーティスのリードによるゴスペルです。

 今回、聴き返して一番印象を新たにしたのは、彼らのゴスペルの良さでした。



It's All Over Now です。







愛を戻してくれるなら扉は開いている

 Cardinalsは、私がリズム・アンド・ブルースを聴き始めた、最も早い時期に好きになったグループです。
 Driftersによって、黒人ボーカル・グループの素晴らしさに眼を開かされた私が、次に感激したのが、シュ・ブーンズ(コーズ)と、このカーディナルズでした。


Ths Door Is Still Open
The Cardinals 

1. The Door Is Still Open (Willis)
2. Shouldn't I Know (Meredith Brothers, Azrael)
3. Lovie Darling (Ertigun)
4. I'll Always Love You (Azrael, Meredith Brothers)
5. The Wheel Of Fortune (Benjamin, Weiss)
6. Come Back My Love (Mansfield)
7. You Are My Only Love (Abramson, Rey, Glazer)
8. Under A Blanket Of Blue (Livingston, Neiburg, Symes)
9. Here Goes My Heart To You (Samuels, Samuels)
10. For Awhile (Carter, Scott)
 
 最高のグループだと思います。
 おそらくは、レイヴンズやオリオールズに続くグレイトなハーモニー・グループだと思います。
 初めて聴いたときは、大感激したものでした。

 カーディナルズは、テナー・リードのErnie Lee Warrenを中心にした5人組のグループで、51年に Shouldn't I Know / Please Don't Leave Meで、アトランテックからレコード・デビューしたようです。
 時期的には、アカペラ中心のバード・グループと、R&R時代のドゥワップとの狭間くらいでしょうか。

 最初に聴いたのは、アトラッティックの日本盤ドゥワップ・コレクションで、探せば出てくるはずですが、Come Back My Loveがファースト・コンタクトだと思います。

 Come Back My Loveは、名曲というほかない曲ですね。
 時代的にも、55年リリースですから、ロックンロール爆発の時期です。
 最高にスイングするコーラスが、楽しさ満載という感じで一発で気に入りました。
 ポップでキャッチーなフックが満載の曲で、去っていく恋人のことを歌っているのでしょうが、うきうきするような曲調です。

 ポップさでは、フランキー・ライモンのWhy Do Fools Fall In Loveあたりと双璧ではないでしょうか。
 私には、ジョニー・ムーアがリードをとった、ドリフターズのFools Fall In Loveなどと並ぶくらいに好きなフェイヴァリット・ナンバーです。

 そして、それに次ぐのが、私の好みでは、The Wheel Of Fortuneです。
 これも、やはり日本盤LPで知った曲で、この頃聴いた音楽は、思い入れがとても深いので、久しぶりにCDで聴くと、胸がジーンと熱くなるようです。

 この曲は、52年リリースですが、すでにスタイルは完成していると思います。
 Come Back My Loveとは違って、スロー・バラードですが、ドミノズやクローバーズにも負けないブルージーな味わいが心に沁みてくるようです。
 スピニン、スピニンと歌うアーニーのリードと、それにからむコーラスが、何度聴いても素晴らしいです。
 
 こんな完成度の高いグループですが、実はシングルが10数枚しかなく、ついにはアルバムを出すことも出来なかったグループなのでした。

 私は、R&Bを聴き始めたころ、もっと他の曲を聴きたいと思いましたが、別のアンソロジーなどで探すほかなく、そのころから、何となくアルバムが存在しないグループなのかな、とうすうす感じてはいました。

 このアルバムは、06年にコレクタブルズから出されたもので、10曲入りと、CD時代としてはあまりにもボリューム不足を感じます。
 私が聴いていた範囲でも、ほかに「ミザルー」なんていう曲があったはずです。
 未発表曲を発掘した、コンプリート集をぜひ聴いてみたいです。

 ちなみに、彼らの主な活動期間は、アトランティックでの約5年間で、私などは、これほどのグループがと信じられない思いです。
 時代に乗れなかった名グループというほかないです。 

 実は私は、このCDを聴いて、カーディナルズが好きだと思っていたわりには、ほとんど聴いていなかったことに気付きました。

 まず、アルバム・タイトル曲のDoor Is Still Openからして、初めて聴きました。
 これは、作者がWillisとなっていますが、どうやらChuck Willisのようで、作者盤があるのかは不明です。
 どうも他人に提供しただけの曲の可能性が高いように思います。
 ブルージーなナンバーで、55年リリースのわりには、少し古いスタイルのように感じました。

 それよりも、私が興味を持ったのは、Ertigun作となっているLovie Darlingです。
 Ertigunが、アーメット・アーティガンであるのは言うまでも有りません。
 
 私が注目したのは、この曲のメロディです。
 このCDをお持ちの方は、虚心に聴いてみてください。
 何となく聴きおぼえがあるメロディだと思いませんか?

 私は、ロイド・プライスのLawdy Miss Clawdyを連想しました。
 ちなみに、Lawdy Miss Clawdyは52年のリリース、Loveie Darlingは53年リリースでした。

 最後に、トリビアをひとつ、作者名にあるMeridith Brothersというのは、メンバーのことなんですが、メリディス兄弟ではなく、セカンド・テナーの人のフル・ネームのようです。
 ファミリー・ネームがBrothersなんて嘘みたいですね。
 本名か芸名なのかまでは不明です。 



Come Back My Loveです。





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