2020年10月18日

別れ

仏教の教えの『四苦八苦』の一つに『愛別離苦』がある。
この世で思い通りにならないことを『苦しみ』と定義し、「(この世の)人生は苦である」と解いた。
『愛別離苦』とは、「愛する者と別れる苦しみ」のことである。


今日、人間ではないが、一年一ヶ月預かって育てた老犬「琴」との別れをした。
十歳を超える雌犬で、私の愛犬の雄が淋しそうなので、借りて預かっていたのだ。
その老犬「琴」が、最近急に元気がなくなった。

そんな彼女の様子を見て、貸して下さっている犬舎のご主人が、「こちらに戻して下さい。同じ年齢の犬と一緒にして、余生を過ごさせます」、という指示が来た。

と言うわけで、急に「琴」との別れとなったのだ。

前日に「琴」の写真を撮ったが、あまり目が開けられず、元気そうな写真にはならなかった。
「もう、明日の朝で、一緒に散歩するのは終わりだよ…」
「琴」は、分かっているのか分かっていないのか、無反応。

「これまでありがとうね…。」
そう言って、頭をなでる。
開かない細い目が、さらに細くなった。

一緒に暮らしている愛犬「ポン太」は、私が「琴」ばかりをかわいがるものだから、一生懸命私に身体をこすりつけてくる。

「なかなか一緒にいてあげられないから、犬たちはみな淋しいのかな…。」
外は雨が降っていて、十分な散歩もできかった。

「琴」を車に乗せて、犬舎に向かうも、今までのような元気さがなかった。
あまりに大人しく、バックミラーからその姿が見えないので、吐いたり、けいれんしたりしているのではないかと、心配になったほどだ。
「犬舎についたときにぐったりしていたらどうしよう…。」
そんな不安で、どこかで車を停めて、様子を見たい衝動にかられながらも、二十分ほどで犬舎に着く。

果たして「琴」は、ご主人の姿を見て喜んだ。
力を振り絞って、最大減のサービスをした。

その後、じっとしてあまり動かなくなった。
「ゆっくり過ごそうな…。」
犬舎のご主人が言う。
「畑の小屋に行こうか…。」
と。「琴」を軽トラックの助手席に誘った。
「琴」は自分から車に飛び乗った…。

「いつまでも元気でな…。」
私はそう声を掛けた。

「琴」と会えるのは、これで最後のような気がした。

犬との別れも、私に撮っては『愛別離苦』だ。





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