2019年02月21日
平行線や縞模様で頭痛も?視覚情報と健康の深い関係について
皆さんは、視覚情報が私たちの健康に深い関わりがあるのをご存知でしょうか?
身近な例をあげると車酔いなどがありますが、酔わない人と酔う人とで大きな違いがあります。
今回は不思議な視覚情報と健康について、医師に詳しく解説していただきました。
視覚情報は目と脳でどう処理される?
視覚情報は目の黒目と水晶体を通り、上下左右反転して眼球の奥に映し出されます。
眼球の内側に張り巡らされた網膜が光を受け取ると、網膜にある様々な細胞が情報処理を行い、電気信号を発して脳に伝えます。
脳の一番後ろ側にある後頭葉で、視覚情報はさらに処理され、側頭葉や頭頂葉に伝えられます。そして聴覚など他の情報と統合されたり、記憶の中にある映像と照合したりして意味づけされ、意識に上ります。
視覚情報による悪影響1:ポケモンショック
光過敏性発作
1997年に放送されたアニメ、ポケットモンスターの1場面で、画面が点滅するシーンがあり、その放送を見た700人以上の患者(多くは子ども)が体調不良や頭痛、てんかん発作のような症状を訴えました。
症状は「光過敏性発作」と呼ばれるもので、被害者の人数の多さからこの事件は世界的に有名になり、学術論文でも言及されています。
光刺激が多数の脳細胞を刺激して、特殊なパターンの集団活動を引き起こすことで、脳全体が刺激され、てんかんのような脳の状態が呼び起こされると考えられています。
事件後の対応
記者会見で多数のフラッシュが焚かれた映像には注意書きのテロップが入ったり、子どもの見るアニメやゲームでは、光の点滅や縞模様・渦巻きなど、視覚に強い刺激を与える映像を避けるような工夫がされるようになりました。
視覚情報による悪影響2: 縞模様や渦巻き
動画に限らず、縞模様や渦巻きなどの模様もてんかん発作を引き起こしたり、頭痛を引き起こすことがあるとされております。
不特定多数の人が目にする建造物などのデザインにおいては、こういった模様を使用しないように配慮が必要という意見もあります。
視覚情報による悪影響3: 平行線が並んだ模様
オフィスなどにあるブラインドで見られるような平行線が並んだ模様は、自然界では見られないパターンです。
その為、人間の脳がうまく処理できず、頭痛や発作を引き起こすのではないかとも考えられます。
視覚情報による悪影響4: 3D映像
VR
両眼に微妙に違う映像を見せることで、本当は平面の画像を見ているのに3Dの画像を見ているような錯覚を起こさせるVR(バーチャルリアリティ)機器が販売されています。
■ 対象年齢の設定
しかし、目や脳が未発達な子どもには使用しないようにと対象年齢が設定されています。機器によって異なりますが、多くは12〜13歳未満の子どもへの使用は推奨していません。
■ 子どもは目の機能が未発達
子どもは両眼の情報の違いから奥行きを感じる機能や、奥行きに応じて両目の位置を変える機能が未発達であり、VR機器の映像をみることで機能発達に悪影響を及ぼす可能性があるためです。
もともと見るものに対して左右の目をバランスよく動かしたり、脳で左右の目の画像を融合して立体的に捉える能力があまり高くない子どもが、VR機器の画像を見てしまうと、斜視やものが2つに見える症状を発症する可能性もあると考えられます。
今後の動向
遊園地の3Dアトラクションや3D映画について、「何歳からしか視聴を認めない」という法的な決まりは今のところなく、今後の業界の動向が注目されます。
視覚情報による悪影響5: 乗り物酔い
体の位置や動きを感じ取っている内耳の信号と、目から入ってくる移動の情報が一致しないことから、脳が混乱して乗り物酔いが起こるのではないかと考えられています。
そのため、窓から動く景色を見ることで乗り物酔いが軽くなります。
視覚を鍛える方法
ものを見るには目と脳、両方が健康である必要があります。
目
目の重要な部分の構造自体は、生まれた時には完成していますが、脳が視覚情報を受け取り処理するのに慣れていないため、赤ちゃんはぼうっとしか見えておらず、10歳ぐらいになってやっと脳が成熟すると言われています。
それまでの間であれば、脳が柔軟であるため、たとえ何らかの病気があっても、訓練次第で視機能を伸ばすことができます。
脳
脳が未発達な時期に両目から適切な情報を入れ続けないと、脳が鍛えられず、その後の人生では「眼球に病気があるわけではないのに、視力が出ない(弱視)。立体的にものが見えない」という状態になることがあります。
訓練方法
幼少時から目の位置の異常や左右の目の視力のバランスに気を配り、異常があれば早めに原因を調べて訓練を行うことが必要です。
左右の目の視力に差がある場合に、良い方の目を隠し、悪い方の目を使わざるを得ない状況を作る訓練、立体的な映像を見たり、左右の目でものを見る訓練などが行われます。
人間は視覚の生き物と言われ、外部から得られる情報の多くを視覚情報が占めています。ものを見ることは楽しみの一つですが、健康に影響を及ぼすこともあり、注意が必要です。