2017年11月14日
危険!「鉄分は多く摂れば良い」は間違い。がんや死亡率と大きく関連
鉄分はあればあるほどいいと思っている人も多いのではないか。
しかし、鉄分過剰ががんの発生率や死亡率と関連しているというデータが出てきている。しっかりとした知識を持って、鉄分を摂取してほしい。
□鉄濃度とがん発生リスクの関係
1997〜2008年に、台湾で、血清の鉄濃度を調べた30万人以上を対象に、平均約7年間調査を行った。血清鉄の濃度が高かった(≧120μg/dL)のは、男性の35%、女性の18%であった。
その7年間のうちに何らかの「がん」を発症したのは、8,060人であり、血清鉄が高いとがんの発症リスクは25%高いという統計結果が得られた。
また、がんによる死亡率のリスクは、39%も高くなっていた。
□ある一定の鉄濃度を超えるとがん発症リスクは比例して増加
血清鉄濃度が80μg/dL以上では、10μg/dL増える毎に、がんの発症リスクは4%ずつ増加するという傾向も見られた。
一方、血清鉄濃度が60μg/dL以下の場合には、肝臓がんが2倍になるなど、男性のがん発症リスクは全体で39%も高かったが、女性の場合はほとんどリスクに変化がなかった。
□鉄ががんを発生させるメカニズム
ではなぜ鉄の多量摂取ががんの発生率を引き上げてしまうのか。
鉄は体内で、電荷を帯びた鉄イオンというものとして存在するが、2価の鉄イオン(Fe2+)は、酸素が反応性のきわめて高いヒドロキシラジカル(・OH)に変化するのを助けるのである。活性酸素の一種であるヒドロキシラジカルは、酸化力が非常に強く、生体内の分子を傷つける。
それにより、さまざまな遺伝子の欠損や増幅を引き起こし、がんの発生リスクを高める。
一方で、男性では鉄欠乏でもがん発生のリスクが高くなっており、鉄の影響は複雑なようである。
□それでもやはり鉄分の過剰摂取はリスクがある
ならば、結局鉄は摂っても摂らなくてもがんのリスクは高くなるんじゃないか、とお叱りの声が飛んできそうだが、そういうわけでもない。
名古屋大学の豊國教授によると「成長過程の子供や妊婦などは積極的に鉄を摂取しなければならないが、普通の大人が積極的に鉄のサプリメントを摂取していると、必要以上に体内に鉄をため込んでいる可能性がある」という。
一度体内に取り込まれた鉄は、出血以外には体外に出ることがない。
男性では30歳、女性では50歳を過ぎたころから、体内に鉄が蓄積しやすくなるという。やはり鉄分は摂りすぎも注意が必要であるようだ。
□鉄を「がん細胞のためのサプリメント」にしないために
必要な栄養素は、サプリメントから摂っているという人も珍しくないのではないか。
しかし、普通の食品と違い、特定の栄養素を大量に含んだサプリメントはその摂り方に注意が必要だ。人間の体というものは不思議なもので、足りない栄養素を無意識に摂ろうとするものだという。無性にひじきや貝、レバーなどが食べたくなったらきっとその時は体が鉄を欲している時だ。
よく分からない、という方は自分で下まぶたの裏側の色を見てみたり、医療機関で検査してもらってみたりすることも可能だ。くれぐれも摂りすぎの鉄分が「がん細胞のためのサプリメント」にならないよう注意したい。