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2019年11月29日
スラビア終戦(十一月廿七日)
チェコから唯一ヨーロッパのカップ戦の本戦に出場しているスラビア・プラハが、チャンピオンズリーグのグループステージで最下位に終わりヨーロッパリーグの春の部にも出場できないことが決まった。バルセロナ、ドルトムント、インテルと、スペイン、ドイツ、イタリアの上位チームと同組になるという組み分けに、勝ち点0で終わるんじゃないかとか、ぼろ負けの連続になるんじゃないかなんて心配もしたのだが、多くの予想を覆すような頑張りだったようだ。
組み合わせに恵まれていれば、グループ勝ち抜けも狙えたんじゃないかとも思わなくもないけど、選手やファンにしてみたら、この三チームを相手にできたのは、勝ち負けを抜きにして最高の経験だったはずだ。興業的にも客を呼べる対戦相手ばかりだったしさ。ということで、10年ぶりのスラビアのチャンピオンズリーグ出場は、グループステージで勝ち点2、最下位に終わった。まだドルトムントとの試合が残っているけど、勝ち抜けのかかる相手にアウェーで勝ち点を取れるとは思えない。
10年前は、確かもう一つ旧東側の国のチームが入っていて、そことの3位争いを制して、ヨーロッパリーグに回ったはずだが、あの時と比べても、今回のスラビアが残した印象ははるかに上で、もう少しで、スパルタが90年代、2000年代の初頭に残した成績に追いつけるんじゃないかなんてことを考えてしまう。実際にはそのもう少しが、ものすごく大変なんだろうけどさ。
今日は、インテルと最後のホームでの試合だったのだが、始まる前はスラビアがやってくれそうな予感はあった。U19のチームの選手たちが、インテルを圧倒して4−1で完勝したのである。外国人っぽい名前の選手が、ハットトリックの大活躍だったらしい。今回はこれをAチームの試合の結果だと勘違いするようなことはなかったのだが、予兆としてはこれに勝るものはない。
前回プルゼニュがチャンピオンズリーグに出たときも、このU19の大会が行われていたと思うのだけど、特に話題になった記憶もないから、特に好成績を残してはいなかったのだろう。今回は、バルセロナにもインテルにも勝ったわけだから、将来が楽しみになる。とはいえ、主要な選手たちはAチームに上がる前に外国に買われていくのだろうけど。
試合前の状況を整理しておくと、4試合終えてスラビアは勝ち点2で最下位。3位のインテルは勝ち点4。スラビアが3位になって、ヨーロッパリーグに進むためには、イタリアで引き分けることに成功したインテルに勝つしかない。引き分けでも理論上の可能性は残るが、ホームで負けたドルトムントに勝たなければならなくなる。ドルトムントがインテルに負けなかったら、この試合引き分けでもよかったのだけどなあ。
この勝たなければならないというのが、スラビアには結構重くのしかかる。チェコリーグレベルならどんどん得点できるけど、チャンピオンズリーグでは、とにかくゴールが遠いのである。これまで4試合でたったの2得点。だから勝てるとすれば1−0の場合だけで、相手に先制されたらよくて引き分けなので、敗退はほぼ決定というのが試合前の予想。
そして、恐れていた通りインテルに先制されてしまう。前半のうちに、一度は同点に追いつくものの、勝たなければいけないスラビアが攻勢に出た結果、カウンター食らって失点して試合に負けたというのが簡単なまとめである。監督によれば、ミスが多くてここまで最低の出来だったらしいけれども、それも勝たなければならないというプレッシャーのせいだったのだろう。
この試合は1−3でインテルが勝ったのだが、一番注目を集めたのは、ビデオ審判だった。インテルは5つゴールを決めたのだが、2つはビデオ審判によって取り消され、スラビアがPKから挙げた得点もビデオ審判の判定のおかげだった。
テキスト速報でちらちらと試合の流れを確認していたのだが、1点取られたあと、しばらくして0−2の表示になって終わったと思ったら、1−1にスコアが変更された。速報をやっている人の入力ミスかとも思ったのだが、実は、インテルのゴール前での攻防で、スラビアのオライエンカが倒されたのを、審判は反則ではないと流してプレーを続行させた。その後のインテルの攻撃をスラビアがしのいでキーパーのコラーシュがボールを抑えたところまではよかったのだが、パスを出したディフェンスの選手がミスしてボールを奪われてしまいそのままゴールも決められてしまう。
この時点で速報の表示が0−2になったようだが、ビデオ審判が介入し、発端のオライエンカが倒れたシーンの確認が行なわれ、インテルのゴールは取り消し、スラビアにPKが与えられた。ソウチェクが決めて同点に追いついたのだけど、このときはスラビアにはまだ運があるから、いけるかもしれないと期待したんだけどねえ。
試合終了直前には、テキスト速報の表示が1−4になった。それ自体はまたカウンター食らったのかで仕方がないとは思えたのだが、しばらくしたら1−3に戻った。これもビデオ審判が、ぎりぎりのオフサイドを指摘した結果、ゴールが取り消されたようである。後で映像を見た限りでは、撮らなくても文句は出なさそうな、本当にぎりぎりのオフサイドだった。バルセロナでのメッシのオフサイドといいスラビア、つきがないわけではないのである。
とまれこれでホームでの試合は3戦3敗となった。その代わり、アウェーでは2試合とも引き分けて貴重な勝ち点を稼いでいる。ドルトムントでの最終戦も引き分けの可能性がなくはないのか。それにしても今のスラビアに全盛期のコレルかラファタのような点取り屋がいたらなあと思わずにはいられない。そうしたら本気でグループステージの勝ちぬけが期待できたのに……。この辺はチェコ代表についても同じなんだけどさ。決定力のなさに悩まされているのは日本のチームだけではないのである。
2019年11月28日23時。