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2017年05月17日

フランス対フランス人(五月十四日)



 現在、フランスのパリと、ドイツのケルンを舞台に、アイスホッケーの世界選手権が行なわれている。アイスホッケーの世界選手権は、毎年ヨーロッパ各国のリーグが終了し、北米のNHLのプレーオフが始まる五月の頭から行なわれる。去年は終了してから、世界選手権とはあまり関係のない文章を物したが、今年はちゃんと今年の世界選手権に関係のある文章を書いておこうと思う。

 世界選手権の出場チームは、全16チームで、グループステージでは、8チームずつの2グループに分かれて、それぞれ総当りのリーグ戦を行なう。各グループの上位4チームが準々決勝に進み、最下位のチームが下のカテゴリーに降格することになっている。チェコは、カナダやフィンランドとともにフランスのパリで試合をするグループに入っている。
 長野オリンピックで優勝した後、チェコの黄金期ともいうべき時期があって、世界選手権三連覇を成し遂げたこともあったのだけど、近年は準々決勝に進むのがやっとという事が多い。去年は久しぶりに危なげなく準々決勝に進出したので、優勝を狙えるかと期待していたのだけど、準々決勝で敗退してしまった。

 今年の大会は、初戦からカナダという近年の最強チームにあたり、予想通り負けてしまった。完敗だったようだ。ヨーロッパの四カ国対抗のユーロ・ホッケー・トゥールで好調だったので、ちょっと期待していたのだけど、カナダの壁は厚かった。NHLの選手が多いとは言っても、リンクの横幅が違うなど、適応が大変だと思うのだけど、アメリカと違ってカナダは世界選手権に力を入れているのである。
 二戦目のベラルーシのとの試合は、途中までは点差もあまり開かず、てこずっている印象だったが、第三ピリオドで突き放して勝利。ベラルーシはたまに上位争いに絡んでくることがあるけれども、それ以外は勝ち点を取れれば御の字というチームなので、もう少し楽に勝ってほしかった。

 三戦目が今大会最大の劇的なフィンランドとの試合で、第一ピリオドに3点とられて、リードされていたのを、第三ピリオドに一気に同点に追いついた。一点目を取るまではこれは駄目だと思われていただけに、こんな事故も起こってしまった。



 チェコテレビの実況担当のロベルト・ザールバが、実況しながら興奮のあまり机をドンドンたたいていたら突然、モニターやマイクの電源が切れてしまったのだ。どこで電源がオフになっているのかすぐにはわからず、あれこれ確認している様子がビデオに収められている。結局、電源のオン・オフ機能のついた延長コードのスイッチをオフにしてしまったのが原因だったらしい。チェコテレビーのブースだけでなく隣の四つのブースでも電源がオフになってしまったらしいが、たまたま使われていなかったので、よそのテレビ局には実害はなかったようだ。結局この試合は、延長戦の後のPK戦みたいなのにまでもつれ込んで最後にはチェコが勝利した。

 次の四試合目のノルウェーとの試合は、規定の60分ではどちらも点が取れず、延長戦の末にチェコが勝利。五試合目のスロベニアとの試合も問題なくチェコの勝ち。ノルウェーに苦戦したとはいえ、グループ内の順位争いを考えると、この二試合を勝ちきれたのは大きい。カナダの首位は変わらないにしても、進境著しいスイスとの二位争いが待っているのだ。

 そして、本日迎えた第六戦の相手が、開催国のフランスだった。フランスは今大会最大の驚きと言っていい。初戦でノルウェーには負けたものの、二戦目でフィンランドに圧勝し、三戦目ではスイスにも勝っているのである。戦前の予想では、最下位で降格しなければ御の字という評価だったのが一転警戒すべき相手になっている。
 そのフランスとの試合、チェコのゴールキーパーがフランツォウスだったのである。チェコ語がわかる人にはわかると思うが、この試合、フランスチームのフランス人選手対チェコチームのフランス人の戦いでもあったのである。アイスホッケーの代表の場合には、二人のエースキーパーがいて、グループステージでは交互に試合に出ることが多いのだけど、この試合のキーパーにフランツォウスが選ばれたのは、順番だったのか、監督がしゃれがわかる人だったのか、どちらだろう。
 チェコテレビも、今大会チェコ代表の試合の実況はチェコテレビのザールバと解説者のホスタークという現時点で世界最高のアイスホッケーの実況チームが担当していたのだが、この試合だけは担当を変えてきた。フランス語ができるアナウンサーを起用することで、実況中に名前の読み間違いなどの問題が起こらないようにという配慮だったようである。チェコテレビのスポーツ部門には、英語以外の外国語ができるアナウンサーが何人もいるのだ。

 試合のほうは、開始直後のフランスチームの猛攻を、キーパーのフランツォウスの好守もあってしのぎ、期待の若手NHL選手のパステルニャークのゴールで先制し流れを変えると、あとはチェコが主導権を握って、一度は同点に追いつかれたけど、突き放して勝利。二戦目から六連勝を飾った。最優秀選手には、予想通りフランツォウスが選ばれていた。
 この大会で、フランツォウスは特別なヘルメットを使用している。左右の面にマサリク大統領と、ハベル大統領というチェコが世界に誇れる過去の大統領の肖像をあしらっているのだ。これは、世界選手権が開催中に大統領選挙の決選投票を迎えたフランスの人たちへのメッセージだったのだろうか。こういうヘルメットで試合に出られるのは光栄だなんて言っていたから、本人のアイデアではないのかもしれないけれども。

 とまれ、スイスがカナダに勝ってしまったためにチェコがグループ二位にはいるためには、最終戦の直接対決でスイスに勝つしかなくなった。
 アイスホッケー、そんなに応援しているつもりはないのだけど、世界選手権やオリンピックになると、ついついチェコの試合だけは見てしまうのである。ながら見ではあるけれどもさ。スポーツの中継時間が多いというのも良し悪しだなあと仕事をしながら思ってしまう。

5月14日23時。 





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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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