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2017年05月16日

青い鯨(五月十三日)



 チェコ語で「モドラー・ベルリバ」という言葉を初めて聞いたのは、一月ほど前のことだっただろうか。ロシアからチェコにまで入ってきたインターネット上のゲームで、そのゲームをプレーしていた十代の子供たちの間に自殺者が出ているので、親は警戒が必要だというニュースだっただろうか。
 ニュースでは、何件かの自殺に関して警察がゲームと関連性の捜査をしていると言っていたのだが、もちろんソースは警察である。それに対して、完全に関連性がわかっていないのに、こういう発表をするのは、社会にパニックを引き起こす可能性があると警察を批判する声も上がっていたようである。
 ゲームを通して自殺に導くというので、ゲームをしていると催眠術みたいなものにかかってしまって、性格が変わったり、行動を支配されたりして、最終的には自殺に至るSFめいたものを想像してしまった。ゲームのプログラムが人間の意識を支配してしまうという話をどこかで読んだことがあるような気がするのだけど、違ったかな。

 しかし、今日のニュースによると実際は、ゲームと言ってもコンピューターゲームではなく、人間相手のゲームのようだ。ただし、インターネットを介して行うところが、普通の子供同士のゲームとは違うところである。
 フェイスブックなどのSNSを通じて、「青い鯨」ゲームをしようと呼びかけ、それに応えた人に、ゲームマスター役の人から連絡が行くという形のようである。ゲームマスターは一人ではなく、複数人いるようで、それぞれのやり方がぜんぜん違うのだという。
 コンタクトを取ると、通っている学校とか、誕生日とか、さまざまな個人情報を教えるように求められ、後にはその個人情報を元に脅迫されたりしたらしい。そして最終的には自殺に導かれるというのだけど、どうやるのかいまいち想像できない。具体的な手口については、情報が出てこないのは、表に出すと悪用される可能性があるからだろうか。
 先月の報道以来、両親や教師などからの通報がふえ、子供の電話相談ダイヤルにも寄せられる相談が増えていたようである。このゲームについての情報が共有されることで、沈静化が進んでいると相談ダイヤルの人が語っていた。

 被害者が十代の少年少女であるということ、ゲームの犯罪性が100パーセント証明できているわけではないことなどが理由になっているのだろうが、チェコテレビの報道も、隔靴掻痒のもどかしいものになっている。
 ニュースに出てきた「青い鯨」に関連するネット上のページには、鯨の写真と、腕に傷をつけて鯨の絵を描いた写真が上がっていたのだけれども、ゲームに参加すると体に傷をつけて染み出す血で鯨を描くことを求められるのだろうか。
 こういうゲームにのめりこんでいくのは、おそらくネットとか、SNSなんかに依存してしまっている子供が多いはずだ。そうするとかりそめの連帯感を感じるために、他の参加者と同じようにと言われたら、自傷行為でもしてしまうのかもしれない。それがエスカレートすると、考えてみても、ネットを通しての対話で自殺に導くというのが想像できない。

 昔、オーストリアの警察犬を主人公にした刑事ドラマで、ネット上のサイトを通じて知り合った子供たちが、サイトの運営者の誘導で集団自殺を企てるという事件を見た記憶がある。あれは確か、人生に悩みを抱える子供たちの相談に乗るふりをして、そんなに人生が辛いのなら終わらせればいいとか何とか言っていたんだったかな。
 そうすると、この「青い鯨」の運営者達も、順風満帆の人生を送っている子供たちではなくて、生きることに苦しんでいる子供たちを餌食にしているというのかもしれない。精神的に不安定な十代の子供たちの中には、自殺という行為そのものに憧れているなんてのもいそうだし。

 ただでさえ生きていくのが大変なこの世の中に、こんな罠みたいなゲームまで存在するというのだから、今の子供たちも大変だ。インターネットなんてなかった時代には、考えられなかった話である。やはり、技術の進歩というのはいい面ばかりではないのである。

 中途半端な情報を基に書いたら、またまた中途半端な失敗作が出来上がってしまった。
5月13日23時30分。






posted by olomoučan at 05:50| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ
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