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2019年08月03日
またまた鉄道事故(八月一日)
この件に関しては、最初は書くつもりはなかったのだけど、日本のヤフーでこんな映像記事を見つけて、久しぶりにチェコのニュースだと思ったらこれかよと思ったのと、例によって情報が微妙に正しくないのが気になったので、チェコテレビのニュースで把握できたことを書いておく。
映像についている記事には、「脱線事故の現場は、ドイツとの国境から12キロの温泉保養地として有名なマリアーンスケー・ラーズニェとポドバー・プラナーの間で、石灰石を輸送中の貨物列車が先頭から13両脱線した」とあるのだが、ドイツ語でマリエンバードと呼ばれることもあるマリアーンスケー・ラーズニェが正しく表記されているのはいいとしても、もう一つの町の名前がちょっと違う。正しくは「ポドバー・プラナー」ではなく、「ホドバー」である。
このホドバーという形容詞は、もう少し南に行ったドマジュリツェを中心とするホツコ地方と関係がある。このホドバー・プラナーの辺りは、厳密な意味でのホツコ地方には含まれないのだが、ホツコ地方と同様に、かつて国境警備を担ったホットと呼ばれる人たちが住んでいたところらしい。そのホット人を意味する言葉からできたのが、ホドビーという形容詞で、後に来るプラナーが形容詞型の女性名詞であることから、ホドバーとなっている。あえて訳せばホット人たちのプラナーということになろうか。だから僅かな違いだけど、「ポドバー」では意味を成さないのである。
無理に小さな地名を使わないで、マリアーンスケー・ラーズニェ付近とか、マリアーンスケー・ラーズニェからプルゼニュに向かう鉄道でなんて書けばよかったのに。翻訳記事のようだから、英語版が間違えていたという可能性もあるのか。ちなみにホツコ地方にある地名の場合には「ホツキー」という形容詞がつく。
それから「先頭から13両脱線した」というのは正しいが、本当の先頭についていた機関車二両は脱線していないし、貨物車両も5両は脱線せずに線路上に留まったらしい。機関車を運転していた運転士は当然無事だったが、危うく犠牲になりそうだった人たちは存在する。
実はこの区間、マリアーンスケー・ラーズニェの街を迂回するためのバイパス道路の建設工事が行われており、脱線現場付近で働いていた人がぎりぎりで逃げ切る様子が写っているたまたまその場にいた人が撮影したビデオがニュースで流された。道路と鉄道が交差するところでの事故というと、モラビアのストゥデーンカで起こった事故を思い出すが、今回も下手をすれば同じような大惨事になりかねなかったようだ。
それで、「問題の貨物列車は現場付近を規定の制限速度の3倍を超えるスピードで走行していた」というのも、工事のために特別に30キロに落とされた制限速度の3倍ということになる。30キロに落とされているのは、工事のためにもともとのほぼまっすぐの路線が、暫定的な蛇行する路線につけ変えられているからで、もともとはこの区間時速100キロで走っていたらしい。つまりもともとの制限速度で走ったら、現在の制限速度の3倍になったという可能性もある。
運転士が制限速度をオーバーしたのが、事故の直接の原因であるのは間違いないが、現在問題にされているのが、制限速度が30キロに落とされたという情報が十分に伝えられていたかということで、路線管理会社では十分だと主張しているけれども、事故が起こる以前から運転士の側から、今のままでは重大な事故が起こりかねないという指摘がされていたともいう。
そもそも時速100キロで走っている18両もの貨物列車が、しかも石灰石を満載した列車が、そんなに簡単にスピードを落とせるのだろうか。定期的にこの区間を走らせている人であれば、事前にわかっているから問題なくスピードを落とせるのだろうが、貨物列車の運転士が定期的に同じルートを走っているとも思えない。その場合、線路脇の30キロにスピードを落とせという表示を見落とす可能性は高いし、表示を見てからでは十分にスピードを落としきれない可能性もある。
この区間を旅客列車を走らせている運転士の中には、自分も30キロという制限速度を越えて走らせたことがあると匿名で語っている人もいた。重い貨物列車ではなかったので事故にはならなかったのだろうが、乗客を乗せた特急で事故が起こっていたらと思うとぞっとする。問題は運転士のスピード違反というだけには留まらないのである。問題があっても事故が起こるまでは放置して、事故が起こってから対策することの多いチェコだから、この工事区間に関しても何らかの対策はとられることになるだろう。
事故が起こったのが日曜日、脱線した貨物列車の残骸と、零れ落ちた積荷の回収と路線の改修には数日の時間がかかると予想され、この区間の鉄道の運行が再開されるのは金曜日に予定されている。その間は、普通列車も特急もバスで代替輸送ということになるのだが、代替バスは遅れることが多いし、ぎゅうぎゅうづめにもなりやすいんだよなあ。今年の夏は、各地で鉄道の改修工事が行われていて、全体的に鉄道の遅れが多くはあるのだけど。それでも、2000年前後の送れて当然の時代に比べたら格段によくなっている。そう考えると、批判されることの多かった代々の運輸大臣結構がんばっているのである。
2019年8月1日24時40分。
この区間の運行再開予定は8月20日以降に延期された。8月2日追記。
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2019年06月06日
危険なチェコの鉄道②(六月四日)
以前、同じような題名で、チェコ鉄道で事故が連発しているという話を書いたが、今回は事故ではなくて、チェコ的には問題ないようだけど、日本人の目から見ると危険で恐ろしいチェコの鉄道の姿についてである。ただし、2000年代に入って、鉄道網の改修工事が進むとともに、かつての危険極まりないと思えた状況は改善されつつある。
➀ホームのない乗り場
プラハやオロモウツなど交通の要衝となっている駅は、以前からちゃんとした(長年改修されれずぼろぼろの場合もあったけど)ホームがあって、比較的安全に電車に乗ることができたが、田舎のローカルな駅になると、ホームなど影も形もなく、線路と線路の間に立って待っているか、電車が停まってから、線路をまたいで電車のドアのところに走っていくしかなかった。
ホームがないので何番線に電車が来ると言われても、よくわからないこともあったし、手前側の線路にすでに電車が止まっているときには、その向こう側で待っていなければならなくて、乗る電車が入ってくるときに怖い思いをしたこともある。止まっている車両の間を抜けて乗り場の線路に出るなんてこともあったなあ。チェコの人たちは慣れたもので、駅から見て線路の反対側で待っていて、反対側からドアを開けて乗ってくるなんてこともしていた。
最近はローカルな駅でも改修が進んで線路と線路の間に何もないという駅はかなりへって、正規のホームよりは幅も狭く線路からの段差も小さいのだけど、それらしきものが設置されるようになっている。それでも、電車が入ってくるときにスピードが落ちきっていないことがあって、その上でも待つのが怖いのは変わらないのだけど。それから、ホームもどきまで行くためのルートが指定されて、枕木や石を踏まなくてもいいようになったのも進歩だとは思うけれども、特にスーツケースなんかを引っ張っているときには厄介なのは変わらない。チェコの人はそんなの無視してどこからでも線路を渡っているし。
チェコの鉄道が危険なのは、チェコの人たちの安全に対する意識が低すぎるのも原因の一つになっている。線路わきの道のないところを歩く人や、駅の反対側から線路を越えて駅に入ってくる人は、特に田舎だといくらでもいるのである。事故が起こってから、何でそんなところにと言ってみたところで、毎日通っていたんだということが多い。
②手動ドア
最近はボタンを押すとドアが開く半自動の車両が増えたが、以前はドアはハンドルを自分で回して開けなければならなかった。自分で回して開けるシステムだったので、走行中にドアを開けることも可能で、電車が駅に入ると止まり切らないうちにドアを開けて、電車を降りていく人もいたし、走り始めた電車にとびついてドアを開けて乗り込む人もいた。駆け込み乗車どころの危険さではなかったのだが、ドアが走行中も自由に開け閉めできるというのが問題にされることはなかった。
それが、もう十年以上前の話になるが、オロモウツの近くで電車の中で子供が行方不明になるという事件が発生したことでやっと風向きが変わった。当初は、誘拐されたとかいろいろな説が飛び交っていたのだが、最終的にはトイレに行った際に開いていたドアから転落して亡くなったという結論になり、走行中にドアが開くことの危険性が議論されるようになった。正直、遅いと思ったけど、対策がなされたのはさらに遅く、最近になってようやく手動で開け閉めするドアに関しては、ドアの上にランプを付けて、ドアがしっかり閉まっているかどうか、いちいち触らなくても遠目から確認できるようなシステムが導入され、閉まっていない場合には発車できなくなった。走行中には鍵がかかってドアは開けられなくなったのかな。
それでも、いまだにときどきドアをめぐる問題が起こっているのは、チェコだから仕方がないというか、以前の全く問題にされていなかったのに比べればはるかにましである。急行や特急がスピードを出して走っているときに、ドアが開いてばたばたしているところを通ってトイレに行かなければならなかったのは、今思い出しても背筋がぞっとする。
➂踏切
鉄道網の発達したチェコには踏切がたくさんある。しかし、遮断機の設置された踏切の数はそれほど多くない。多いのは音とランプで電車が近づいていることを知らせるタイプの踏切である。だから、電車が近づいていることがわかっていても、平気で踏切の中に侵入する人が後を絶たない。人ならまだ、踏切の中に入ってから電車が見えた時点で、すぐに引き返せるからいいのだが、車の場合にはすぐには戻れない。落ち着いて対処すれば事故にならないはずなのだが、パニックに陥って車を踏切内に残したまま、逃げてしまう人もいる。
最悪なのは遮断機がある踏切で、遮断機が下りているというのに踏切に進入して、電車が見えるのに気づいてパニックに陥ってその場に車を止めてしまう人だ。それが物資を輸送するトラックやカミオンだった場合には事故が起こったときの被害が格段に大きくなる。ストゥデーンカのペンドリーノの事故を思い出すと、先頭の車両に乗るのが怖くなる。
いくら鉄道会社の側が安全対策をしたとしても、利用者の意識が変わらなければあまり意味がない。踏切を考えると鉄道の利用者だけではなく、車を運転する人の意識を変える必要もありそうだ。チェコ人のメンタリティを考えると新幹線のように全線高架にして踏み切りを一番いいと思うのだけど、お金がかかるからなあ。チェコの鉄道が、日本人の目から見て安全だといえるまでにはまだまだ時間がかかりそうである。
2019年6月4日24時30分。
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タグ:昔話
2019年01月27日
チェコ鉄道事情最終回(正月廿五日)
レギオジェットが、チェコ鉄道の正規運賃の半額ぐらいの安い席から、時期によっては1等と同じぐらいの席までという幅で運賃を設定しているのに対して、レオ・エクスプレスのほうは、全体的に高いというイメージがあった。一番高いプレミアムなんて、プラハ-オロモウツで1000コルナを越えることがあるのである。一度使ったことのあるビジネスでもあのときは400コルナを越えていたから、一番下のエコノミーでも安くて200コルナぐらいだろうと考えていたら、時間帯によっては100コルナほどのものがあった。その便でもプレミアムは600コルナ以上だったからその差は大きい。
料金の差の分、サービスに差があるのかどうかは知らないが、売り切れになっていることがままあるのは、レオ・エクスプレスのプレミアムのサービスに満足して、この値段でも繰り返し利用する客がいるからであろう。席数が少ないから、早い者勝ち状態になっているのかもしれない。
このレギオジェットとレオエクスプレスの参入は、チェコ鉄道との乗客の奪い合いの側面がなかったとは言わないが、少なくともプラハ-オロモウツ間においては、相乗効果で鉄道の利用客自体が増えているために、チェコ鉄道の利用客も増加したのではないかと考えている。その証拠としては、プラハ-オロモウツ間を走るチェコ鉄道の特急、急行の数が、私鉄参入以前と比べて増えていることを挙げておこう。
以前は、夕方以降の便はほとんどなく、プラハに夕方飛行機で到着した場合に、オロモウツまで戻って来られるかどうか心配になることも多かったのだが、午後7時以降でも、寝台の夜行列車を除いて8本走っている。これなら飛行機でプラハの空港に入るのにあまり時間を気にしなくてもよさそうだ。オロモウツ到着が12時過ぎになる便はできれば使いたくないけど、あるのは安心である。日本にいた頃は、終電で帰宅が1時過ぎなんてよくあることだったけど、チェコに来てからは考えられないことである。
とまれ、簡単にまとめておくと、プラハからオロモウツを経てオストラバなどに向かう路線に関しては、チェコ鉄道と私鉄二社との競争がいい方向に向かっている。限られた乗客を奪い合うというよりはそれぞれの特性を生かして、ひたすら安さを求める客層から贅沢を求める客層まで、鉄道の利用客を増やしているという印象である。
オロモウツから、もしくはオロモウツまでの利用であればあまり関係はないのだが、さらに遠くに向かう人たちにとっては、電車始発、終点の設定も重要になる。以前もチェコ鉄道のプラハ発の急行はいくつかの町を終点にしていたが、レギオジェットの参入以来、プラハ発の終点となる駅が増えている。その結果、直通で行ける場所が増えて、利便性が向上した。一度は採算が取れないとして廃止されたものが復活したりもしているようだ。これも利用客が増えて採算性が高まったおかげであろう。
競争といえば、チェコ鉄道が気になる動きを見せている。最初に気づいたのは、プラハとブルノを結ぶ便についてなのだが、レイル・ジェットという名前がつけられた電車が走るようになっていた。それは、「ガラーン」や「グスタフ・マーラー」のような個々の特急につけられた名前ではなく、ペンドリーノのような特急のカテゴリーの名称のようで、時刻表や駅の掲示板に表示される電車番号も「rj」で始まる。最初に見たときにはチェコ鉄道の電車ではなくレギオジェットのものかと思ったのだが、レギオの電車番号は「RJ」と大文字で始まるのである。
もう一つは、地方都市と地方都市を結ぶ急行に新しく導入された車両に書かれた名前である。地方によっていろいろあるのだが、すべて「レギオ」+動物の名前となっている。レギオ・シャーク、レギオ・パンサー、レギオ・エレファントなどなど。「レギオ」が地方という意味の「レギオン」から取られているのは明らかだけれども、レイル・ジェットと合わせて考えると、チェコ鉄道のレギオジェット対策じゃないかという気がしてくる。レギオ・ジェットとチェコ鉄道がつながっているような印象を与えようとしているとかいうのは考えすぎだろうか。そのうち、レギオ・ライオンとか、ライオン・エクスプレスなんて、レオ・エクスプレス対策っぽい名前の電車も走るかもしれない。
このシリーズのきっかけとなった記事に出ていたチェコ鉄道のコメントで値下げ競争の激化を懸念していたのは、私鉄と同居する路線においてではなく、運行に補助金の出る地方の路線の運行権の入札についてではないかという気もする。これは鉄道だけではなく、バスに関しても行なわれていて、簡単に言えば助成金を請求する額が一番低い会社が選ばれるのだが、採算の取れない額で入札する業者があるらしいのだ。先日もどこかの地方で落札して運行を開始しておきながら、バス会社が現在の助成金の額では採算が取れないとか言い出したというニュースが流れた。チェコ鉄道では採算割れするような額での入札はできないだろうし……。
長く書いているうちに、当初の目的がわからなくなってしまって、迷走してしまった感があるけれども、これでお仕舞い。書こうと思っていたことは他にもあるのだけど忘れてしまった。
2019年1月26日23時。
2019年01月26日
チェコ鉄道事情四度続(正月廿四日)
承前
二つめは変動する運賃である。同じ区間の同じ座席でも、季節によって、同じ週でも曜日によって、同じ日の中でも時間帯によって、高くなったり安くなったりする。購入の時期による価格の変動は、あるのかもしれないが、現時点では確認できていない。この価格変動制は、レオ・エクスプレスもより極端な形で追随し、チェコ鉄道でも最近部分的に取り入れられている。全席指定ではないチェコ鉄道が、競合する私鉄の走っていない路線でも便指定の割引を行っているのは、立ち乗りを減らすために乗車率の低い時間帯の便に乗客を誘導する目的もあるのかもしれない。
先週末に所用でプラハに行くのにレギオを使ったのだが、全体的に昨年の同時期より高くなっている印象で、便によっては一番安い席でも199コルナになっていた。これではチェコ鉄道の便を指定した割引乗車券と大差ない。一番安い時期の安い便であれば100コルナぐらいですむこともあるからほぼ倍である。実際に乗ったのはビジネスで、行きは399、帰りは299と、100コルナも差があった。便によっては499というのもあったかな。ペンドリーノは2等で290コルナだったから、コーヒー、紅茶を考えると399なら許容範囲ではあるのだけど、499は微妙である。
三つ目は、座席のグレード間の格差を目に見える形でつけたことである。チェコ鉄道の電車にも1等席と2等席の区別はあって、1等の運賃は2等の二倍ぐらいなのだが、ペンドリーノでも座席の色が赤になるぐらいの違いしか見えない。多少一人分のスペースが広くなっているにしても、見てわかるほどではないし、以前1等に乗った人の話では、取り立ててサービスがいいというわけでもないようだ。だから、チェコ鉄道の電車では2等席が満席でも、1等席を利用する人はあまり見かけない。使うとすれば、混雑が予想される電車で確実に座るためという理由だろうか。
それに対して、レギオジェットでは、現在の一番下のローコストは、通路の両側に2つずつ、一列に4つの座席が並び、一人当たりのスペースはチェコ鉄道の古い客車と大差なく、座席も写真で見るだけでも安っぽさを感じさせるもので背を倒すこともできない。車内サービスは一切なく、水と新聞だけはセルフサービスでもらえるが、車内販売は利用できない。プラハ-オロモウツ間は、一番安い時期の一番安い時間帯で100コルナぐらいだが、一番高いのは200コルナ以上で、チェコ鉄道の運賃を越えることもある。
二番目のスタンダードは、座席の広さは変わらないが、質が格段に上がり、前の座席の背には映画を見たり音楽を聞いたりすることができるモニターがついているという航空機的なつくりになっている。ただし、向かい合わせになっている4人がけの席もあるので、その設備を利用できない場合もある。コンパートメントの場合には6人掛けで、8人掛けだった昔のチェコ鉄道の車両よりは、一人分のスペースは広いはずなのだけど、実際に座ってみるとそんな印象は全くない。コンパートメント自体が狭いのだろうか。
車内サービスは、普通に利用でき、水や雑誌新聞は配布に来るし、リンゴジュースとアメリカンコーヒーかミントティーなんかも出るのかな。コンパートメントの席だと、もらっても置き場に困るのだけどさ。運賃の幅は130コルナぐらいから300コルナ超までで、ペンドリーノより高い場合もある。
たしか、参入当初は、ローコストは存在せず、一番安いのはスタンダードだったのだが、一度、安いというのと、話の種にとで利用したことがある。その後長らく使用しなかったことからも、あまりいい印象は抱かなかったことは確実なのだが、乗客は多く、混んでいたから、安さを求める人たちが多いのも事実なのだろう。客層のせいか、せわしない、落ち着かないという感じで、座席も窮屈だったし、これなら、多少高くてもペンドリーノを使った方がましだと思ったのである。
その上のリラックスは使用したことはないが、ビジネスと同じ車両に置かれているので、様子を見たことはある。座席はペンドリーノと同じで通路を挟んで片側は二人掛け、反対側は一人掛けになっていて、ところどころ向かい合わせになっている席もある。席の作りはスタンダードより上で、ペンドリーノよりも広そうである。
一番上のビジネスとのサービスの違いがどのぐらいあるのかは知らないが、問題は価格差で、料金を比べて、これならビジネスでいいやと考えてしまうことが多い。せいぜい50コルナの差では試す気にはなれない。ひどいときには150コルナの差があることもあるようだけど、そういう高い時期はプラハ行きを避けてしまうのが人情というものである。
2019年1月24日23時55分。
2019年01月25日
チェコ鉄道事情続三度(正月廿三日)
実は、ペンドリーノ導入後、レギオジェットの前に、プラハ-オロモウツ-オストラバ間を結ぶ路線に参入ようと計画した企業が存在する。たしか2006年ぐらいにリベレツのほうでローカル線を運行している会社が、ドイツから中古の機関車と客車を購入して参入することを計画し、12月に改定される時刻表に載るところまで行ったんじゃなかったか。結局機関車を使用するための認可が下りずに計画を撤回することになった。
当時はまだ、ペンドリーノも空席が目立っていたから、時期尚早ということで、チェコ鉄道を守るための手が動いたのかもしれない。時刻表を見たときに朝のオストラバ行きか、夕方の戻りかに、チェコ鉄道の電車よりもいい時間帯の便があったから、期待したのだけどね。今から考えると、仮に参入が実現していたとしても、採算が取れずに2、3年で撤退していた可能性もある。
そんな事情もあったので、後にスチューデント・エージェンシーが子会社のレギオジェットを設立して鉄道事業への参入を発表し、時刻表に載ったときも、実現はしないだろうと悲観的に見てしまったのを覚えている。しかし、12月の時刻表の変更すぐには実現しなかったものの、翌年の秋ぐらいに初めてのレギオジェットの電車が走ったのだった。これは、タイミングがよかったというのが一番大きいだろう。
レギオジェットが参入したのは、7両編成で1便あたりの座席数を増やせず、車両の数の関係で一日の運行回数にも制限のあるペンドリーノの輸送力に限界が見え始めたタイミングだったというと、現実を理想化しすぎかもしれないが、レギオジェットの参入も、それに少し遅れてのレオ・エクスプレスの参入もこれ以上ないぐらいのタイミングだった。チェコ鉄道がペンドリーノとそれに伴う路線の高速化によって、多少高くても速さと快適さを求めるという客層を開拓することに成功し、レギオジェットやレオ・エクスプレスは、その客層をターゲットの一つにして参入したが、同時に二社の参入によって鉄道の利用客がさらに増えたのも事実である。
さて、黄色い高速バスの運行で知られていたが、実は旅行会社として航空券や宿泊の手配、国外ツアー旅行なども手がけているスチューデント・エージェンシーが、チェコの鉄道に持ち込んだのは、単なる価格競争ではなく、航空業界的な手法で、レオ・エクスプレスも当然のようにそれに追随した。
一つは、ペンドリーノと同様の全席指定である。チェコ鉄道の場合には、ペンドリーノであっても普通の乗車券に、座席指定券を購入するという形をとり、座席指定したペンドリーノに乗り遅れた場合には、乗車券を使って、次の座席指定のいらない特急、急行に乗ることができるのに対して、レギオジェットとレオ・エクスプレスの乗車券では、座席指定した電車以外には乗れず、別の便に乗る場合には、改めて乗車券を買い直す必要がある。
事前に乗車券を買う場合には、予定の変更の可能性も考えると、面倒だけど、駅について空席があったら買うという買い方なら、窓口で適当に席を決めてくれるから面倒はそれほどでもない。空席がない場合もあるけれども、窓口の脇に空席情報が表示されていて、あと何席残っているかわかるようになっているので、なければチェコ鉄道の乗車券を買えばいいだけである。チェコ鉄道なら空席がなくても通路に立っていることができるし。
全席予約を活用しているのはレギオジェットで、予約状況を見ながら客車の数を増やすことがままある。切符を買ったときには8両目が一番後だったのに、実際に乗ろうとしたら9両目、10両目が追加されていたなんてこともあった。さすがに予約を受け付け始めてから車両数を減らすことはないだろうが、便によっては最初は車両を少なめにしておいて、予約が埋まりそうになったら車両を追加するということもありそうである。
それに対して、レオ・エクスプレスはペンドリーノ的に電車の編成が決まっているのか、いつも同じ車両数で走っているような印象がある。以前一度乗ったときに使った座席予約画面で、どの便も同じ座席構成だったような記憶もあるし。チェコ鉄道の場合には、特急、急行は全席予約ではないので、レギオジェットほどの融通は利かないが、長年の利用客の傾向データを持っているので、それに基づいて車両を増やしたり減らしたりしている。増やす数には限界があるので、座れない乗客が出ることもあるけど、逆に言えば席はなくても移動だけは確実にできるのである。これはチェコ鉄道の強みと言っていいのかな。
終わらない。
2019年1月23日23時30分。
2019年01月24日
チェコ鉄道事情続続(正月廿二日)
話をペンドリーノに戻そう。ペンドリーノが走り始めた当初、それまでの特急と比べても、所要時間が大きく短縮され、座席も当時の急行や特急に使われていた古いコンパートメント式のものに比べれば、ずっと快適だったが、乗客はそれほど多くなく、最初のころはなかなか増えなかった。原因の一つは、鳴り物入りで導入したせいか、チェコ鉄道が必要以上に特別扱いしてしまったことである。
まず座席指定券がないと乗れなかった。当時から急行(R)、特急(EC/IC)は無料で座席指定することが可能だったが、座席指定などせずに乗る人が多かった。実際には乗車券を買うついでに座席も決められたから特に面倒ではなかったのだが、座席指定券が必要だという注記をみて面倒だと思う人はいたはずだ。
そして、その座席指定券が高かった。オロモウツ-プラハ間は運賃が250コルナぐらいだったと思うが、座席指定券が200コルナもしたので、普通の急行に乗るのの倍近くかかったわけである。当時毎週一回オストラバに通訳の仕事をしに通っていたが、帰りによくペンドリーノの最終便を利用していた。当然運賃よりも座席指定券のほうが高かったわけで、会社で交通費を出してくれていなかったら、ペンドリーノの利用は避けていた可能性も高い。
考えてみれば当時は、特急に乗るのにも特急料金が60コルナ必要だったのだ。カテゴリーが上のペンドリーノの追加料金がそのぐらいしてもおかしくはなかったのだろうが、割高感は否めなかった。始発のオストラバ中央駅で自分が乗った車両に他の乗客は一人もいないなんてこともあったし、満席で乗れないという状況は想像もつかなかった。その後チェコ鉄道は、特急の追加料金を廃止したが、ペンドリーノの追加料金は、廃止したり、再導入したり、値段を上げたり、下げたり、試行錯誤をしていた。適正な額を模索していたのだろう。一時期は、年に二、三回ペンドリーノを利用して、利用するたびに値段が変わっていた。
それから、ペンドリーノの乗車券専用の窓口を設置して、発券システムも独立したものにしたのも、少なくとも最初のうちは逆効果だった。このシステムが不安定で、頻繁に落ちていたのである。駅で切符を買おうとすると、乗車券だけ買わされて、座席は適当にあいてるところに座ってなんて言われることもあった。ペンドリーノ自体に不具合が起こって、真冬に暖房が効かなかったり、トイレのドアが凍り付いて開かなくなったりなんて、冗談だろと言いたくなるようなこともあった。
その後、オストラバに行かなくなってしばらくして、オロモウツの駅でペンドリーノを見て、乗客が多いのにびっくりしたことがある。プラハから乗ろうとして満席で乗れなかったこともあるし、チェコ鉄道の目標は数年がかりで達成されたということになろうか。乗客が増えたのは追加料金が安くなったというのもあるが、速くそして快適になった電車に、利用客が戻ってきたという面のほうが大きい。発券システムも含めて安定して運行されるようになり、ペンドリーノ導入のための路線の改修のおかげで遅延が大幅に減ったというのも、これまで時間のかかりすぎる鉄道を避けていた人たちが鉄道を利用し始めた理由になっているだろう。
また、ペンドリーノの利用客が増えた理由の一つとして、プラハにおける発着駅がホレショビツェから中央駅に変更されたことも考えられる。かつては、ペンドリーノ以外にもモラビアの方に向かう特急の中に、ホレショビツェから出る便があって、駅を間違えると乗れないということもあったのだが、現在ではすべて中央駅に集約されているため、近距離の各駅停車を除けば、とりあえず中央駅に行きさえすれば乗れるようになって、利用しやすくなっている。
かつてチェコ鉄道では乗客獲得のためにさまざまな模索をしていた。現在でも残っているのは、インカルタと呼ばれる会員証みたいなカードで、年会費(確か3年で300コルナ)を払うと、すべての乗車券を25パーセント割引で買うことができ、提携しているお店で割引を受けることもできる。会費の高い50パーセント割引になるものもあるのかな。
迷走していたのは団体割引で、当初は10人以上とか20人以上のグループに適用されたと記憶するのだが、一時期は二人から適用されることになって、二人目以降は、正規の運賃の50パーセントということになっていた。現在では二人からということはないはずである。往復割引も以前はあったけれども、今は往復で買っても、別々に買っても差はないと思う。土日の特別割引のSONE+とかいうのもあったなあ。以前はあちこちで大々的に宣伝していたのに、最近全く聞かなくなったから廃止されたかな。
そんな、鉄道の乗客増加を目指したサービスの中で一番効果があったのが、ペンドリーノの導入による所要時間の短縮と、現在でも引き続いて行われている新しい(一部外国の中古もあるけど)機関車、客車の導入による快適さの向上だったと言っていいだろう。そして、利用客が増えつつある中で、さらなる拡大を目指して導入されたのが、チェコ鉄道と私鉄が同じ路線を走るという政策だった。
終わらないので、もう一回か二回。
2019年1月22日22時35分。
2019年01月23日
チェコ鉄道事情続(正月廿一日)
もう一つ指摘しておかなければいけないことは、現在のレギオジェット、レオエキスプレスの成功の前提として、チェコ国内の鉄道網路線の近代化、高速化があるという点である。かつて、1990年代から2000年代初頭のチェコの鉄道網は、長期にわたって設備投資が滞っていたこともあって、老朽化が進み遅延するのが当然になっていた。線路も電車も高速走行に耐えられる規格ではなかったので、遅延なく走っても、オロモウツ-プラハで、速いものでも3時間以上、下手すれば4時間近くかかるという状態だったのだ。車両も老朽化して、暖房はあっても冷房はなく、清掃なども適当で、快適さとはほど遠い存在だった。その結果利用者離れが起こっていたといってもいい。
オロモウツ-プラハ間は、高速道路が開通していないため、当時は鉄道と自動車の所要時間が同じぐらいだったが、高速道路を使ったスチューデント・エージェンシーの直行バスが走っていたプラハ-ブルノ間は、バスを使ったほうが遥かに早く、快適でサービスもよかったらしい。値段も安かったのかな。そのため、途中の停車駅を利用する人はともかく、プラハからブルノ、その反対はバスを使う人の方が多かった。
仮にこの高速化が行われる前の時点で、レギオジェットやレオエキスプレスが、参入していたとしたら、現在ほどの成功は収めていなかっただろうことは断言できる。所要時間が大幅に短縮された上で、サービスや乗り心地が改善されたからこそ、鉄道に利用客が戻ってきたのである。
チェコの鉄道網の近代化、高速化はなかなか進まなかったのだが、転機を挙げるとすれば、チェコ鉄道が、高速化、時間短縮の切り札として、イタリアのペンドリーノの導入を決定したことだろうか。2000年前後のことで、当時ですらイタリアの十年以上前の最新列車とイタリアから来た日本人に馬鹿にされていたのだが、実際は旧型のペンドリーノであっても、その能力を十全に発揮できていないのだから、最新型を導入してもまったく意味がなかったのである。
一番最初にペンドリーノの試験運転が行われたのはプラハから北に向かう路線で、なんと各駅停車に使われていた。せいぜい数十キロのスピードで走らせながら本格的な運行に向けて問題点の洗い出しを行っていたのである。同時に導入が予定されていたプラハ-パルドゥビツェ-オロモウツ-オストラバ間では重点的な路線の改修工事が行われていた。老朽化し、また高速走行を前提として敷設されていない路線では、ペンドリーノでも時速100キロをいくらか超える程度の速度しか出せなかったのである。
線路そのものだけでなく。山間部では新たにトンネルを開削して、スピードを極端に落とさなければならなかった区間のカーブを緩やかにしたり、高速運行に向けて安全装置の設置も進められたんだったかな。全線を通じて最高時速160キロで運行できる規格で改修が進められた結果、ペンドリーノが実際に運行を始めた2005年ぐらいの時点では、プラハ-オロモウツ間を特急ECが3時間弱で結ぶところを、ペンドリーノは2時間30分ほどで走っていた。例によって遅れることも多かったけど。その後もあれこれ改修が続けられ、現在では最短で2時間2分と、もうすぐ2時間を切るところまで短縮が進んでいるのである。
路線の改修、高速化によって、ペンドリーノ以外の電車も時間の短縮が進み、停車駅が多い急行でもプラハ-オロモウツ間を、3時間以内、特急は2時間半以内で結んでいる。チェコ鉄道の所有するペンドリーノの数に限りがあるため、日によってはSCペンドリーノが走るべき時間に、普通の特急の機関車と客車を使った特急ICが走ることがある。現在ではペンドリーノでなくても、最高時速160キロで運行できるようになっていて、所要時間は途中の停車駅の数によって左右されると言っていい。ただし、レギオジェットの機関車は最高時速140キロらしく、これがチェコ鉄道の特急より時間がかかることがある理由のようだ。
この最高時速160キロというのは、チェコの鉄道網の整備、高速化の一つの基準になっていて、モラビアだと、ペンドリーノが走る区間以外にも、ポーランドからオストラバを経由してウィーン、ブラチスラバに向かう電車が走るプシェロフ-ブジェツラフ間、ブルノからウィーン、ブラチスラバに向かうブルノ-ブジェツラフ間も、特急、急行は最高時速160キロで走行している。車両によっては車内にモニターがあって、速度表示がされているので、速度を確認することができる。さすがに駅の構内を最高速で走るわけにはいけないから常時160キロというわけではないけど。
この話もうしばらく続きそうである。
2019年1月21日23時10分。
チェコのとは見た目が違うなあ。
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2019年01月22日
チェコ鉄道事情(正月廿日)
最近発見したのだが、昨年の11月にこんな記事が出ていたらしい。「東洋経済」という雑誌の記事は、ヤフーの雑誌のところでたまに読むことはあるのだが、これは古い記事だったので雑誌のページにまで行って読んだ。新しいヨーロッパの鉄道における全体的な傾向について書かれた同じ著者の記事に紹介されていたので、珍しく検索をかけてまで読んだ。
日本で「ヨーロッパの」と枕をつけると、たいていドイツ、フランス、イギリスあたりの事例を元に、それがヨーロッパ全体に適用されているかのような、読んで損したと思う記事を書く人が多いのだけど、この著者の記事は、旧共産圏にまで目を配った本当の意味でヨーロッパについての記事だった。過去のレギオジェットについての記事にも期待して読んだのだが、期待を裏切らない内容で、読み応えもあった。
ただ、チェコの鉄道運営会社が価格競争に走っているような印象を受けかねないチェコ鉄道のコメントが紹介されていたので、チェコの鉄道における競争が単なる運賃の値下げ競争ではないことは書いておきたい。私鉄のほうが旧国鉄のチェコ鉄道より安いとは言い切れないのである。
まず、大前提として、チェコの鉄道は、一部の路線を除けば赤字である。国や地方の補助金をもらいながら運行しているのが、チェコの鉄道である。もちろん、国や地方が補助金を出すのは、住民の足を確保するのと同時に、運賃が高くなりすぎるのを抑えるという目的もある。運賃が高くなると利用者が減り、さらに赤字が膨らみ、廃線の恐れも高まる。
現時点で補助金の対象外となっているのは、チェコ鉄道の国際列車(大抵はEC)とチェコ国内の特急(SCとIC)、レギオジェットなどの私鉄の特急だけで、それ以外は、長距離を走る急行(RやEX)には国の、各駅停車には地方の補助金が補助金が出ている。両方からの補助金が出ているものもあるかもしれない。車両に運輸省や地方がお金を出していることが明記されている場合もあって、こんなのわざわざ書かせなくてもいいだろうにと思わされてしまう。
補助金を出しているからか、地方もチェコ鉄道に対して強気に、時刻表の改正や利用車両の改善などあれこれ要望を出たり、補助金の額を上げるようにチェコ鉄道側から要望があったり、それに国が口を出したり、巻き込まれたりで、必ずしも全く問題なく運営されているというわけではないが、国費で(地方の補助金ももともとは国庫から地方に分配された予算の中から出されている)、鉄道事業を支えているというのがチェコの現実なのである。
現時点ではほぼすべての補助金の出る路線をチェコ鉄道が運営しているが、昨年末のニュースで、何年か後からの補助金つきの運行会社の入札が行なわれ、プラハ周辺の中央ボヘミア地方は、ドイツ鉄道の子会社のアリバが、モラビアのブルノとオストラバを結ぶ区間はレギオジェットが落札したと言っていた。
ちなみにチェコ国内で最初に走った私鉄は、チェコ鉄道が補助金をもらっても採算が取れないと投げ出した路線の運行を引き受けたものだった。たしか北ボヘミアの小さな町から国境を越えたところにあるドイツの町を結ぶ路線だったと記憶する。かつてのオーストリア時代に敷設された鉄道の中には、現在の国境線を出たり入ったりしながら走っているものがあって、かつては国境管理の関係上途中の駅に停車しなかったり、停車しても乗降不可だったりして、大変だったろうと思わせる。この路線もそんなものの一つじゃなかったかな。今はEUで何の問題もなくなったけど。
それから、シュンペルクからベルケー・ロシニのほうに向かう路線は、1997年にモラビアを襲った水害で壊滅的な被害を受けチェコ鉄道では復旧をあきらめてしまった。それに対して住民の足の確保のために沿線の町が共同で、路線を復旧し運営会社を設立して10年以上にわたって運行し続けていた。これも、私鉄である。現在では再びチェコ鉄道による運行に戻っているけれども。
つまり、チェコにおける最初の私営の鉄道会社の参入は、チェコ鉄道の競争相手というよりは、小回りの利かないチェコ鉄道では対応しきれない部分を補完する役割が求められていたと言える。同じ路線をチェコ鉄道と私鉄が走るということはなく、ごく一部の路線を私鉄が運行していたにとどまる。国鉄民営化直後の日本のJRと地方のローカル線を運行した私鉄の関係と似ていると言えば言えるか。
長くなったので以下次回。
2019年1月20日24時。
2018年12月14日
ブルノ駅改修工事(十二月九日)
先日レギオジェットからメールが届いて知ったのだが、今日からブルノの中央駅の大改修工事が始まるらしい。たしか去年か一昨年も春から夏にかけて改修工事が行われ、一部の電車が中央駅まで行かず途中の駅どまりになった結果、大混乱を引き起こしていたが、今回の改修工事はそれを上回る規模で行われ、レギオジェットの電車も、中央駅まで行くのは夜行電車一本だけで、それ以外は郊外のジデニツェ、もしくは中央駅近くのドルニー駅に停車することになるらしい。
夜のニュースによれば、鉄道の時刻表が新しいものに切り替わるこの日に合わせて改修工事を開始したようである。工事の予定期間は1年と言っていたから、来年の時刻表の切り替えに合わせて、改修が終わった中央駅の使用を元通りにするのだろうか。前回の改修の際には、中央駅の代役となった駅はドルニー駅一つで、中央駅まで行く電車もかなりあったのだが、今回はほとんどの電車が中央駅まで行かず、郊外の駅発着に変更されるようである。
今回も改修工事による発着駅の変更でかなりの混乱が起こっており、ニュースでは朝から情報不足で立ち往生したり、特別に配置された係員に質問する人たちの姿が映し出された。中には説明を聞いてもよくわからなかったり、一度別の駅まで出てきたけど中央駅に戻らなければならなかったりしている人の姿もあった。外国人の観光客が英語で説明を受けた挙句に、確実性を重視してタクシーを呼んでいたのが、この混乱を象徴している。
代理の発着駅となるのは、ブルノの北部にあるクラーロボ・ポレ駅、東部のジデニツェ駅、南のフルリツェ駅と前回も使われたドルニー駅の四つ。レギオジェットの電車はプラハを出てブルノを経由してブジェツラフのほうに抜けるのだが、ジデニツェを出た後は中央駅を迂回してドルニー駅に停車して、南東のブジェツラフに向かうようである。
ジデニツェ駅から中央駅まではチェコ鉄道が改修中に特別に走らせる電車が往復していて、所要時間は3分らしい。中央駅からドルニー駅までは、市の交通局が走らせる無料バスが利用できる。61番のバスで10分おきに駅をでて右に行ったところの停留所から出ているらしい。ただ、直線距離で200mほどというから歩いても10~15分ぐらいか。大きな荷物がなければ歩いてもよさそうである。中央駅の裏側からテスコの前を通って、ショッピングセンターのバニュコフカの中を抜けて、バスターミナルを越えたところにドルニー駅があるらしい。
個人的に関係がありそうなオロモウツからブルノに向かう便は、ジデニツェに停車した後、クラーロボ・ポレ駅まで向かうことになっている。ジデニツェ止まりにならないのは、駅の規模が小さすぎて始発駅にできないということだろうか。とまれブルノの中心に用があるときには、ジデニツェで降りて、別の特別な電車に乗り換えて中央駅に向かうことになりそうである。
それなら最初から電車を使うのは諦めて、バスを使った方が、便利で早く、そして値段も安いということになる。ただただでさえ込んでいるレギオジェットのバスはチケットを押さえるのが大変になりそうな気もする。そうするとARRIVAのバスということになるのだけど、この会社実はドイツ鉄道の子会社らしくて、最近のドイツ鉄道の体たらくを知ってしまうと、利用するのをためらう気持ちが起こってしまう。レギオジェットが本数を増やしてくれないかなあ。レギオの方がちょっと高いけど早いしさ。
プラハからブルノに向かう場合は、ブルノが終点の電車を使うと、中央駅まで行くものがある。それに対して、ブルノを出て、ブジェツラフを経由してウィーン、ブラチスラバなどに向かうものは、チェコ鉄道の電車でも、中央駅は迂回してジデニツェとドルニー駅の二つに停車する。町の中心に行くならドルニー駅の方が便利である。また、幹線ではないビソチナのほうを通る電車を使うと、北部のクラーロボ・ポレ駅が終点となる。
ということでプラハ発、チェスカー・トシェボバー経由、ブルノ終点の電車に乗るのが一番便利なのだが、ブルノ終点の電車は数が少ないうえに、国内線のため停車駅が多く、時間が3時間以上かかるのが難点である。他の国際線は2時間半程度でブルノのドルニー駅に到着するから、その差をどう判断するかである。オロモウツからのブルノ行きもドルニー駅まで行ってくれれば楽なのだけど。
ブルノは現在トラムの路線も改修していて、市内交通も結構混乱しているようである。ということは特に必要なことがなければブルノには行かないのが吉だな。
2018年12月10日8時55分。
2018年12月08日
チェコ鉄道の不思議な料金体系(十二月三日)
オロモウツとプラハを結ぶ私鉄のレギオジェットと、レオエキスプレスの料金は流動的で、電車の走る時間帯によって値段が変わるし、同じ電車でも季節や曜日によって上下する。レギオに関しては、何回も使っているうちに、どの程度の幅で値段が上下に変化していくのかわかってきたし、変化のある程度の傾向も見えてきた。とはいえ、ここhttps://www.regiojet.cz/で検索してみないと、実際の値段はわからないというのは、予定をたてる際にはちょっと厄介である。検索してみたら予想よりも200コルナ以上高いなんてことあったし。
それに対して、チェコ鉄道の料金は距離を基に決まっていて変動しないから、オロモウツ―プラハなら、220コルナ、ペンドリーノを使うと250だったか、290だったかで安定している。そして、ブルノに行くなら100コルナだと思い込んでいた。今回所要があって早朝から(といっても7時発だけど)ブルノに出向かなければならない事情があって、前日にネット上のチェコ鉄道のE-shop https://www.cd.cz/eshop/でチケットを買おうと、検索をかけたら、違う金額のチケットが表示された。
そういえば、以前、プラハからオロモウツに来た人に、特定の電車にしか乗れないチケットで廉価に販売されているものがあるという話を聞いたことがあった。あのときには、プラハ-オロモウツは、私鉄が3社も乗り入れていて競争が激しいし、私鉄のチケットはすべて全席予約だから、チェコ鉄道もそれに合わせて、乗る便を指定することで安くするチケットを導入したのだろうと考えていた。普通のチェコ鉄道のチケットは路線だけが指定されていて、どの電車に乗ってもかまわないものである。
ブルノ―オロモウツは私鉄も走っていないし、バスとは競合するけれども、かかる時間では完全にバスに負けているから、特に値下げをして対抗したりはしないだろうと考えていた。その考えは間違えていて、この路線についても、乗車便指定で価格を下げるチケットを導入したようである。その理由を考えると、今年の夏前に、政府が人気取り政策のひとつとして、政府負担で、26歳以下の学生と、年金生活者に対する鉄道運賃の値引きの幅を大きく拡大したことが考えられる。
これによって、鉄道の乗車率が大きく高まったらしいのだが、同じ時間帯に乗客が集中することもあって、便によっては立ちっぱなしということも増えていた。それを緩和するために、乗車率の低い便の運賃を値下げすることで、乗客を誘導し乗車率の均衡化を図っているのではなかろうか。そう考えると、こんかいちょっと調べた結果、便によって割引運賃があったりなかったり、その値段も何段階かに分かれている理由が理解できる気がする。以前からこの手の割引チケットがあった可能性もないわけではないけどね。
ちなみに、国費で鉄道運賃の値下げ分を負担する政策は、またまたスロバキアの制度の真似で、スロバキアでは学生と高齢者に関しては運賃が無料になっている。スロバキアでも野党から批判を浴びている政策を、ちょっと形を変えてチェコでも導入したわけだ。ただ、一概にただの人気取りで、批判されるべき政策というわけでもなく、公共交通機関の利用を促進することで、個人個人の自動車の利用を抑制するという効果はある程度あるはずである。
とまあ、ここまでは割引運賃の話、オロモウツ―ブルノは、便によっては89コルナと1割引になっていた。帰りは、ちょうどいい直行便がなかったので、プシェロフ経由で戻ってくることにした。以前このルートを使ったときに、ブルノ―プシェロフ、プシェロフ―オロモウツと分けて買った方が安かったような記憶があるので、別々に購入してみた。ちなみにまとめて買うと、161コルナである。ただし窓口で買ったときと同じかどうかは不明。
ブルノ―プシェロフは、定価で131コルナ、便指定の割引で99コルナというのが出てきた。後で調べたら89コルナというのもあるから、この路線も、いくつかの割引があるようである。プシェロフ―オロモウツのほうは、定価が41コルナで割引のチケットは出てこなかった。距離が短いからだろうか。さらにオロモウツ―ブルノをプシェロフ乗り換えでまとめて買う場合にも、便は少ないが割引運賃が存在していて、なんと半額に近い89コルナになっていた。うーん。今回使った接続は全く割引がなかったので、プシェロフまで割引で買った方が、20コルナほど安かったのだが、なんとも釈然としない。プシェロフからブルノに行くより、オロモウツからプシェロフを通ってブルノに行く方が安いのである。
さらによくわからないのが、正規運賃の体系で、オロモウツ―プラハは250キロで220コルナ、オロモウツ―プシェロフは22キロで41コルナ、オロモウツ―ブルノ(直通)は、100キロで100コルナだから、利用する距離が長くなればなるほど、1キロあたりの運賃は下がるものだと思っていた。しかし、今回購入したブルノ―プシェロフ間の営業距離は88キロなのである。つまり、ブルノからプシェロフに行く方が、オロモウツに行くより距離は短いのに、運賃は高いのである。さらにブルノからブジェツラフ周りでオロモウツまで来ると、距離は181キロで、運賃はたしか250コルナを越えたはずである。プラハへ行くよりも距離が短いのに、運賃は高いのだ。
理由として思いつくのは、やはり各地方が地方内の路線に対して出している補助金の額が違うのではないかということだ。地方とチェコ鉄道の間で補助金の額を巡って交渉が行われているというニュースは毎年のように聞かされている。それに、幹線に対しては国が出している補助金もあるのかもしれない。特にプラハ-オロモウツ-オストラバとつながる部分は、高速道路の利用を抑制するためにも鉄道にお金を投入していそうだし。
ということで、乗る電車が完全に確定している場合には、チェコ鉄道のEショップで割引チケットを購入するのも悪くない。プラハ-オロモウツだとレギオの一番安いのに匹敵する値段のものもあるかもしれない。ただ、窓口で勝ったものとは違い、ネットで買ったチケットは人に譲ることはできず、検札の際に身分証明書の提示を求められることがある。
さて、次に電車で出かけるのは、恐らくプラハになるのだが、チェコ鉄道の安いチケットを試してみるべきか、否か、悩むところである。
2018年12月4日10時15分。