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2019年01月22日

チェコ鉄道事情(正月廿日)



 最近発見したのだが、昨年の11月にこんな記事が出ていたらしい。「東洋経済」という雑誌の記事は、ヤフーの雑誌のところでたまに読むことはあるのだが、これは古い記事だったので雑誌のページにまで行って読んだ。新しいヨーロッパの鉄道における全体的な傾向について書かれた同じ著者の記事に紹介されていたので、珍しく検索をかけてまで読んだ。

 日本で「ヨーロッパの」と枕をつけると、たいていドイツ、フランス、イギリスあたりの事例を元に、それがヨーロッパ全体に適用されているかのような、読んで損したと思う記事を書く人が多いのだけど、この著者の記事は、旧共産圏にまで目を配った本当の意味でヨーロッパについての記事だった。過去のレギオジェットについての記事にも期待して読んだのだが、期待を裏切らない内容で、読み応えもあった。
 ただ、チェコの鉄道運営会社が価格競争に走っているような印象を受けかねないチェコ鉄道のコメントが紹介されていたので、チェコの鉄道における競争が単なる運賃の値下げ競争ではないことは書いておきたい。私鉄のほうが旧国鉄のチェコ鉄道より安いとは言い切れないのである。

 まず、大前提として、チェコの鉄道は、一部の路線を除けば赤字である。国や地方の補助金をもらいながら運行しているのが、チェコの鉄道である。もちろん、国や地方が補助金を出すのは、住民の足を確保するのと同時に、運賃が高くなりすぎるのを抑えるという目的もある。運賃が高くなると利用者が減り、さらに赤字が膨らみ、廃線の恐れも高まる。
 現時点で補助金の対象外となっているのは、チェコ鉄道の国際列車(大抵はEC)とチェコ国内の特急(SCとIC)、レギオジェットなどの私鉄の特急だけで、それ以外は、長距離を走る急行(RやEX)には国の、各駅停車には地方の補助金が補助金が出ている。両方からの補助金が出ているものもあるかもしれない。車両に運輸省や地方がお金を出していることが明記されている場合もあって、こんなのわざわざ書かせなくてもいいだろうにと思わされてしまう。

 補助金を出しているからか、地方もチェコ鉄道に対して強気に、時刻表の改正や利用車両の改善などあれこれ要望を出たり、補助金の額を上げるようにチェコ鉄道側から要望があったり、それに国が口を出したり、巻き込まれたりで、必ずしも全く問題なく運営されているというわけではないが、国費で(地方の補助金ももともとは国庫から地方に分配された予算の中から出されている)、鉄道事業を支えているというのがチェコの現実なのである。
 現時点ではほぼすべての補助金の出る路線をチェコ鉄道が運営しているが、昨年末のニュースで、何年か後からの補助金つきの運行会社の入札が行なわれ、プラハ周辺の中央ボヘミア地方は、ドイツ鉄道の子会社のアリバが、モラビアのブルノとオストラバを結ぶ区間はレギオジェットが落札したと言っていた。
 
 ちなみにチェコ国内で最初に走った私鉄は、チェコ鉄道が補助金をもらっても採算が取れないと投げ出した路線の運行を引き受けたものだった。たしか北ボヘミアの小さな町から国境を越えたところにあるドイツの町を結ぶ路線だったと記憶する。かつてのオーストリア時代に敷設された鉄道の中には、現在の国境線を出たり入ったりしながら走っているものがあって、かつては国境管理の関係上途中の駅に停車しなかったり、停車しても乗降不可だったりして、大変だったろうと思わせる。この路線もそんなものの一つじゃなかったかな。今はEUで何の問題もなくなったけど。
 それから、シュンペルクからベルケー・ロシニのほうに向かう路線は、1997年にモラビアを襲った水害で壊滅的な被害を受けチェコ鉄道では復旧をあきらめてしまった。それに対して住民の足の確保のために沿線の町が共同で、路線を復旧し運営会社を設立して10年以上にわたって運行し続けていた。これも、私鉄である。現在では再びチェコ鉄道による運行に戻っているけれども。
 つまり、チェコにおける最初の私営の鉄道会社の参入は、チェコ鉄道の競争相手というよりは、小回りの利かないチェコ鉄道では対応しきれない部分を補完する役割が求められていたと言える。同じ路線をチェコ鉄道と私鉄が走るということはなく、ごく一部の路線を私鉄が運行していたにとどまる。国鉄民営化直後の日本のJRと地方のローカル線を運行した私鉄の関係と似ていると言えば言えるか。
 長くなったので以下次回。
2019年1月20日24時。








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