2018年07月31日
五日目、あるいはお疲れの金曜日〈LŠSS2018〉(七月廿七日)
一週間最後の金曜日は、今年の夏が暑いこともあって、先生も学生たちも少々お疲れモードで、いろいろなクラスで普段の授業とは違うことをしていた。木曜日だったか、水曜日だったかにも、一人一番下のクラスの人が来て、われわれの前で、今何時かチェコ語で言いに来たことがあるのだけど、この日は集団でやってきた。三つか四つのグループに分かれていたようで、その中の代表者が、「オトクット・イステ?」と出身国をきく質問をして、紙を突きつけてきた。どうも国の名前を書けということのようだった。ウクライナから来たチェコ語の先生が、自分で書かなきゃ意味がないでしょうと指摘したら、「ネロズミーム(わかんない)」という最強の答えが返ってきたとぼやいていた。
先生によると、一つのクラスに質問する人が集まらないように、それぞれ別の順番でいくつかのクラスを回ることになっていたらしいし、聞き取った国名を書き取るのも課題になっていたはずだという。書いてくれとチェコ語でお願いするならともかく、答えてくれた相手に答えも書いてもらうのでは何の練習にもならない。そんな話を、授業の後に質問にきたグループにいた日本の人に言ったら、先生に言われたとおりにしたはずなんだけどと首をひねっていた。先生がチェコ語で指示を出したとは思えないから、英語での指示が誤解を呼んだということなのだろうか。
この日は最後に、教室を離れて近くの聖ミハル教会に出向いた。教会の地下に岩山の割れ目から染み出す水を集めた小さな泉のようなものがあるのだ。かつては世捨て人と化した修道士たちが閉じこもって修行をしたという洞穴の中の水辺で、水にまつわる思い出をそれぞれが語った。途中で別の学生のグループが入ってきたのだが、これは一つ下の上から二番目のグループで、プロのガイドを呼んで学生たちを預けて、旧市街の観光案内をさせていたらしい。ちょっとうらやましいかも。
先生は、今日はサマースクール全体がおかしくなっているといっていたが、猛暑の中で勉強を続けた一週間の最後の最後は、どのクラスも「教科書を捨て街に出よう」をやったらしい。うちの先生は他のクラスが同じ場所、聖ミハル教会に来ないようにと願っていたけれども、結局来たのは一グループだけだった。あんなところに行くのは、ある程度チェコ語ができてオロモウツについてある程度知っている学生でないと難しいだろうとは思う。
泉のあとは、せっかくだからということで鐘楼にも登った。鐘の鳴る時間だとうるさすぎて大変だけどしばらく鳴らないから大丈夫とは先生の話。一番上の鐘が三つ並んだ部屋の窓は閉ざされていて、外を見ることはできなかったが、その一つしたのちょっとした展示が行われている部屋の窓から、市庁舎のほうを見下ろすことができた。「カメラ持っていていればなあ」と嘆いていたのはイタリアから来たジョバンナだっただろうか。
この塔に上って降りた時点で汗みどろ、教室に戻るころには汗でぬれたポロシャツが冷たく不快極まりなかった。この後はホモウトのビール醸造所見学も控えているのである。着替えておかないと体調を壊すことになりかねない。着替えに帰るにしても来週のことを考えると、数が心もとない。普段の夏休みなら内に閉じこもっているからこんなに服が必要になることはないのだけど、今年は……。ということで服屋がいくつも入っているシャントフカで買って、買った物をそのまま着ることにした。
買い物が予想以上に早く終わったので、あまり考えたくなかったので、えいやで決めてしまったのだが、一度うちに戻って重くてしかたがない教科書を置いてくることにした。それからビールを熟成させる部屋に入るための上着も持っていったほうがいいということでカーディガンも引っ張り出した。以前リトベルのビール工場でえらいめに遭ったのを思い出したのである。あの時も真夏で外は30度を越えていたのに、寒さに震えることになった。
集合場所に、時間通りに集まった学生の数は16人。最高でも20人しか入れないということで人数制限をして20人にしたのにと事務局の人はぼやいていた。最低でも三回は意思を確認するようにしているのに、絶対に事前に確認して予定した数にならないのがサマースクールのこの手のイベントなのである。以前は、宿舎が必要なもの以外は事前の意思の確認さえしていなかったのだが、お城の見学にしても人グループの数というものがあるだろうし、ある程度の数を事前に確認しておく必要があるのだろう。事前に連絡したのと数が違うということで、問題が起こったのかもしれない。
ホモウトフはオロモウツから数キロ来たにいったところにある集落で行政上はオロモウツの一部となっていて、市営バスも走っている。今回も市営バスで向かったのだが、金曜日の午後だったからか、暑い夏の日で郊外の池に泳ぎに行く人が多かったからかオロモウツにしては珍しく込んでいた。オロモウツのエンベロパから25分、ホモウトフのバス停から橋を渡ってすぐのところにあったホモウトの醸造所は、ミニピボバルという言葉から想像する以上に小さく慎ましやかであった。ここでの出来事については、長くなってきたので稿を改める。
2018年7月30日10時25分。
プラハ行きのペンドリーノの中で書き上げ、プラハ発のレギオジェットの中から投稿する。また楽しからずやである。
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