2016年01月12日
太陽光発電(一月八日)
2011年に福島の原子力発電所で爆発が起こった際に、ドイツなどではかなり的外れな報道が行われたらしいが、チェコの報道はきわめて正確だった。花粉症のマスクなど人々の振る舞いについても、東京在住のチェコ人が取材に応じて、外国ではあれこれ言われているけれども、実際は違うなどと正しいことを言っていたし、原子力発電所そのものについても、ヨーロッパで測定された福島起源の放射性物質についても、本物の原子力エネルギーの専門家が出てきて、日本での報道に比べてもきわめて正確な予測、発言をしていた。また、共産主義時代に、ある原子力発電所で働いていた人が、爆発事故の一歩手前までいって、瀬戸際で食い止めたことがあるという回想と共に、福島で奮闘している人たちを応援するコメントをしていたのも覚えている。
ドイツ政府は、ほとんどパニック状態で原子力発電所をすべて廃止することを決めるのだが、現実的なチェコ政府は、原子力を使い続けることを決め、国民もそれに対して特に大きな抗議活動をするようなことはなかった。ドイツが原子力発電所を廃止するのは、それはそれでかまわないのだが、フランスやチェコの原子力で発電された電気を購入するのは気にならないのだろうか。
しかし、ドイツで、原子力に変わるエネルギーとして、回復可能なエネルギーの利用を促進することが決められ、太陽光発電に対して、過大な補助金を出して電力の高額での買取を保証する制度が始まったとき、残念ながら、チェコもこれに巻き込まれてしまったのである。
ドイツからしばらく遅れて、この制度がチェコに導入されたとき、それまで多くは家屋の屋根などに設置されて、家庭で使用する電力の一部をまかなうという健全な形で活用されていた太陽光発電が、全く違う形で行われるようになった。チェコ中のあちこちに、農地をつぶして設置された広大な太陽光発電所が、それこそ雨後の竹の子のように、生まれることになったのである。当時は、オロモウツから南、ホドニーンの方に向かう電車に乗るたびに、同じ方向に車で走るたびに太陽光発電所が増え、うんざりさせられたものである。その中にはチェコ国内で最も肥沃だといわれる農地をつぶして出来上がったものもあるらしい。
これは、政府が電力の買い取り価格を長期間保証する形を取っていたため、金儲けのチャンスとばかりに、みんな飛びついたものらしい。政府もさすがにこれはまずいことに気がついて、特別税などの導入で、買い取り価格の実質的な引き下げを行おうとしたようだが、裁判を起こされたりしてあまりうまく行かなかったようだ。
とまれ、それまでの時期が来れば菜の花が一面に黄色い花を咲かせていた畑が、醜悪な黒いパネルが斜めに立ち並んでいる発電所に換わったのを見ても、莫大な補助金を出してまで太陽光発電を推進するべきだと言える人はいるのだろうか。環境と言う言葉に、景観も含まれるのであれば、山中に林立する風力発電のプロペラも、畑に敷き詰められた太陽光発電のパネルも立派な環境破壊である。
問題はそれだけではない。一度に太陽光発電所が電力網に接続された時期には、電力会社が、太陽光発電の発電量の急激な変化を吸収しきれず電力網が全体的にダウンする恐れがあると言っていた。幸いにしてそういう事態にはならなかったのだが、電力会社がアリバイ作りにそういう発言をしなければならないほどの状況であったわけである。やはり、太陽光発電や風力発電のような人間の手で発電量を左右することのできない発電方法を電力政策の基礎に据えることには、問題があるのだ。いや、まずしっかりとした蓄電方法を開発するべきなのだ。そうすれば、電気が不要なときに発電したものを、必要なときに使用することができるようになるのだから。
現在でも続いているのかどうか走らないが、ひところ、ドイツの太陽光発電所では、夜間に照明を当てて発電させるという方法が取られていたらしい。電気代よりも電気を売る価格のほうがはるかに高いので、発電量よりも使用量のほうが多くても採算が取れたのだという。こんなのを以て、環境大国とか、環境保護先進国と言うのであれば、そんなものになる必要はない。
一体に、日本においては、ドイツという国は非常に評価が高い。私自身もものすごく高く評価していた。しかし、ヨーロッパに来て思うのは、それは過大評価なのではないかということだ。第二次世界大戦の戦後処理も含めて、ドイツの政策に日本のあるべき姿を見るのは、実は大いなる勘違いなのではなかろうか。われわれ日本人が見ているドイツの姿と言うのは、明治以来、鴎外以来、われわれが抱き続けてきたドイツへの憧れが見せている幻影なのかもしれない。ドイツに対する愛憎入り混じった複雑な感情を抱いているチェコに暮らしていると、そんな気がしてならないのである。
1月9日0時30分
とりあえず、以下に広告のバナーをはってみる。1月11日追記。
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