2018年02月21日
銅のエルバノバー(二月十八日)
日本ではスピードスケートの女子500メートルで小平選手が金メダルを獲得したことで大騒ぎになっているようだが、この種目ではチェコのカロリーナ・エルバノバーが三位に入って銅メダルを獲得した。チェコではまったく盛んではないスピードスケートでは、サーブリーコバーに次いで二人目、短距離では初めてのメダリストである。二位の韓国の選手とは0.01秒差だったから、銀メダルまであと一歩というところだったようだ。ちょっと残念。
エルバノバーも十年ぐらい前に、一気に世界のトップに上り詰めたサーブリーコバーを追うようにスピードスケートの世界に登場したのだが、専門は短距離で、500メートル、1000メートルを中心に出場してきた。当初はサーブリーコバーと同様にチェコのノバーク監督の指導の下で練習していたのだが、ノバーク監督のチームはどうしてもサーブリーコバーが中心で、長距離が中心になってしまう。それで、本人もつらい決断だったと語っていたが、数年前にサーブリーコバーとは分かれて、オランダに渡ってオランダのコーチの指導の下で活動ることを決めた。
オランダに移ったのは短距離専門の練習環境を得るためだったようだが、スピードスケートのことをろくに知らない人たちからは、裏切り者扱いされたこともあったという。監督も含めて、スケート協会との関係も悪化していろいろあったらしく、本人は這い蹲るようにしてとか、茨の道だったとか振り返っていた。それもこれもこのメダルで吹き飛んだのだろうけど。
チェコのコーチの下で活動していたころも、ワールドカップで一桁の順位に入るぐらいまでは成績を上げていたのだが、オランダに移ってからも成長を続け、もう少しで表彰台というところまできていたのが昨シーズンまでのエルバノバーだった。オリンピックシーズンに入ってからは、更に調子を上げて、500メートルでは表彰台に上がれるようになっていた。そして、小平選手と韓国の選手の欠場したオリンピック前のワールドカップの大会では念願の初優勝を遂げたのである。ランキングでも徐々に順位を上げて現時点では三位につけているはずである。
だから、メダル候補とみなされていたのだけど、メダル候補が順当にメダルを取るようであれば、誰も苦労はしないのである。特に今大会は、レデツカーの驚愕の金メダルはあったというものの、全体的には運に恵まれず、期待されたほどの結果が出ていない種目が多い。バイアスロンのコウカロバーなど出場できなかったし、サーブリーコバーも直前まで出場が危ぶまれていた。だから心配しながら、同走の小平選手よりも、エルバノバーを応援していたのだけど、暫定二位になる見事なタイムを記録した。次の韓国の選手には僅差で負けたものの、ほかの選手はエルバノバーよりもいいタイムを出すことができず、三位に入ったのである。
常に優勝を争うサーブリーコバーの傍らで、チェコ的には十分な好成績を挙げながらも、そこから上になかなか進めずに苦労している姿を見てきただけに、応援する側の喜びも大きい。まだまだ若いし次のオリンピックでは、金メダルを争えるところまで行くんじゃないかと期待している。この結果は、ズドラーハロバーなどのノバーク監督の下でサーブリーコバーに続こうと頑張っている若い選手たちにとっても朗報である。
このあと、チェコがメダルを狙えそうな競技というと、カナダとスイスに勝って準々決勝への新酒とを決めたアイスホッケーとスノーボードのレデツカーぐらいかなあ。レデツカーといえば昨日は書き忘れたけど、チェコのアルペンスキーとしては初めての金メダルだったらしい。これまではストラホバーと84年のサラエボオリンピックで活躍した選手が獲得した銅メダルが二つあるだけだったらしい。初めての金メダルを二刀流の選手が取るあたりチェコ的だなと思ってしまう。
初めての金メダルつながりで言うと、チェコの選手が冬季オリンピックで金メダルを初めて獲得したのは、今からちょうど50年前、1968年のグルノーブルオリンピックでのことだった。イジー・ラシュカというスキーのジャンプの選手が、ノーマルヒルで金メダルを獲得したのだ。ラシュカはそのときラージヒルでも銀メダルを獲得している。ということで、それから50年目の今年は、ジャンプ勢にも期待をかけたかったのだけど、長野から20周年で今のところ順調にきているアイスホッケーとは違って、まったくいいところがない。
長年にわたってチェコのジャンプ界を牽引してきたヤクプ・ヤンダが、国会議員になったことで引退し、名実ともにチェコの中心選手となったコウデルカの調子が上がらないのである。何年か前は、ワールドカップでひんぱんに一桁順位を獲得していたのに、今シーズンは予選を通過して二回目に進めるかどうかというところに低迷している。風の影響を受けやすく、運不運の差の大きい競技だとはいえ、ここまで成績が出ないということは運不運以前の問題である。
スキーのジャンプついでに日本のマスコミにまたまたいちゃもんをつけておけば、葛西選手に対してレジェンドなんて形容を 何とかの一つ覚えのように連発するのは如何なものか。葛西選手が生ける伝説と呼ばれるにふさわしい選手であることに異論はないけれども、それを自国である日本のマスコミが連発するのには、内輪受けというか仲間褒めというか、違和感というよりは嫌悪感しか感じない。
こんなのは、よその国の選手に対して使うべき表現であろう。ジャンプであれば、金メダルを目指して現役復帰したフィンランドのアホネン、金メダルを四つ取ってなお現役を続けるスイスのアマンなんかが、日本のマスコミが伝説扱いするべき選手である。葛西選手を生きた伝説扱いするのはよその国のマスコミに任せておけばいい。心配しなくてもチェコのマスコミでも、すでに四年前のソチオリンピックの時点で伝説の扱いを受けていた。日本ほど無節操に連発することはないけどね。
2018年2月18日23時。
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