2018年02月14日
フェドカップ2018(二月十一日)
オリンピックの影で、テニスのフェドカップの一回戦が行われた。チェコの相手はスイスで、会場はプラハの02アレーナだった。監督のパーラが招集したのは、世界ランキングで十位以内に定着して久しいカロリーナ・プリーシュコバー、去年の今頃は強盗に切りつけられた左手の怪我の治療中で選手生命を危ぶまれていたぺトラ・クビトバー、ダブルスでの活躍が期待されるバルボラ・ストリーツォバーとルツィエ・シャファージョバーの四人。これまでこの四人が入れ替わり立ち代り中心選手として活躍し、フェドカップで何度も優勝を遂げているので、四人とも健康に問題がなければ今年もいい成績が期待できそうである。
ただし、今年は懸念が一つあった。それは年末に、プリーシュコバーが、ストリーツォバーのコーチを強奪する形で、自らのコーチとして契約したことで、細かい事情は本人たちにしかわからないにしても、ストリーツォバーがプリーシュコバーを強く批判していたこともあって、この二人が同じチームで活動できるのかという不安がなくはなかったのである。ふたを開けてみたら、人間関係的には特に問題はなかったようであるが、プリーシュコバーがインフルエンザにかかって欠場するという落ちがついた。
土曜日に試合が始まる前に驚かされたのは、スイスチームに引退したマルティナ・ヒンギソバー(日本だとヒンギスかな)が帯同してチェコ語でインタビューに答えていたことと、出場選手の一人、ベンチチョバーがスロバキア語でインタビューに答えていたことだ。ヒンギスがスロバキアのコシツェ出身でスロバキア語ではなくチェコ語で話すというのは知っていたけれども、スイスのテニス選手にはスラブ系の選手が多いことも知っていたけれども、もう一人ユーゴスラビアではなくスロバキアの言葉でしゃべる選手がいるのは予想もしていなかった。
ベンチッチは両親がスロバキア人で、家庭ではスロバキア語を使っているらしい。スロバキアのトルナバのテニスチームで練習をしていたなんて話もしていた。考えてみれば、テニス界の生ける伝説フェデラーの奥さんもスロバキアの人だし、テニスに関してはスロバキアとスイスの関係には、深いものがあるのである。ほかにも「チッチ」「スカー」で終わる苗字の選手がいたから、スラブ系ではあると思うが、チェコ語でインタビューを受けていなかったしチェコスロバキア系ではないようである。
試合のほうは、土曜日のクビトバーから始まった。第一セットを問題なく取った後、第二セットに入って突如調子を崩し、一時はもう何をやってもうまくいかないという状態に陥って、あっさりと取り返されてしまう。この調子のむらの大きさがクビトバーだと言えばまったくその通りなのだが、応援しているほうにとっては心臓によくない。
第三セットも、三ゲーム連続で取ってこのまま行けるかと思ったら、3−3に追いつかれ、そこからもう一度三ゲーム連取で勝つというチェコ語で言うブランコ状態だった。幸いなことにいいほうに転んだのだけど、こんな試合を勝ち続けて、今年は強い、時に無敵のクビトバーの復活が見られるといいなあ。できればウィンブルドンでさ。
二試合目は病気のプリーシュコバーに代わってシングルスにも出場することになったストリーツォバーが、チェコ語とスロバキア語で話し合える対戦相手に2−0で勝って、土曜日が終わった時点でチェコチームが勝ちぬけに大手をかけた。プリーシュコバーが欠場すると聞いたときには苦労するかと思ったのだけど、予想外に楽に勝ちぬけられそうである。
日曜日もクビトバーの試合から始まった。この日のクビトバーは、土曜日とは違って試合中に調子を落とすことなく相手を圧倒し続け、意外なことに2−0であっさり勝ってしまった。そして、この時点でチェコの勝ちぬけも3−0で確定した。次の相手はベラルーシとドイツのどちらかだという。相手ホームでの試合になりそうだから、ドイツに勝ちぬけてほしいところである。チェコから大挙して応援に行けるし。
フェドカップやデビスカップで、勝敗が決定した後の残り試合をどうするかについてルールがあるのかどうかは知らないが、今回は¥シングルスの試合は行われずダブルスだけが、スーパータイブレイク方式で行われた。チェコから出場したのは、ダブルス要員と見られていたストリーツォバーとシャファージョバーの二人。スイスからは、実はヒンギスが出るんじゃないかと思っていたのだが、そんなことはなかった。すでに引退しているしね。ダブルスの試合は第三セットのスーパータイブレークで負けてしまったけれどもそれは瑣末なこと、今年も結構いいところまで行けそうである。
テレビで見ていて気になったのは、サーブを打つ選手の後ろの、テレビの画面に入ってくるような席で、政治家のオカムラ氏が観戦していたことである。かつてこの手の試合にはバーツラフ・クラウス大統領が観戦に訪れていたものだが、この二人テニスファンなのかねえ。スポーツに政治を持ち込まないという原則を考えれば、政治家が観戦するなら目立たない席で観戦するような配慮があってもいいんじゃないかと思うのだけど、有力者を目立たない席に座らせるのは失礼なんて考えもあるのかなあ。
フェドカップに関してはいいことずくめの週末だったけど、デビスカップに関してはトマーシュ・ベルディフが今後は出場を辞退することを表明した。シュテパーネクも引退したし、デビスカップにおけるチェコの全盛期を出現させた二人がいなくなるということは、これからしばらくはチェコが上位に進出することはないということである。残念ではあるけれども、あのころは勝っても負けても、五試合目までもつれ込みシングルスもダブルスも出場するのは二人だけということが多かったし、本当にこれまでご苦労様でしたと言うしかない。デビスカップの分、負担を軽くしてランキング十位以内復活だ。
2018年2月11日23時。
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