2018年02月13日
サーブリーコバー残念(二月十日)
オリンピックで本格的な競技が始まったこの日、チェコではスピードスケートの女子3000メートルに注目が集まっていた。もちろんここ十年以上にわたってスピードスケートの長距離で常に優勝を争い続けている、いや優勝し続けているマルティナ・サーブリーコバーが金メダルを取ることが期待されていたのである。
今シーズンは、開幕直後から背中の痛みに悩まされ、3000メートルで久しぶりに表彰台に上がれなかったり、更に強さを発揮する5000メートルでも優勝できなかったりと調子が上がらず、オリンピックの出場権を獲得した後は、レースへの出場を控えて、背中の治療と休養に務めていたらしい。この選手の場合、ほかの選手の調子どうこうは基本的にはどうでもよく、本人の治療とコンディションの調整が間に合うかどうかが、金メダルを取れるかどうかの境目だった。
前日のインタビューでは、背中の痛みはレースには問題のないところまでひいたと語っていたが、開幕当初は問題のある状態で出場して、優勝争い、表彰台争いを続けていたということなのだろう。ただ、痛みはひいたものの、練習不足でコンディションを完全に上げ切れていないのが心配だと付け加えていた。それでも、出場できるところまで回復したということは、少なくとも優勝争いはできるということなのだろうと期待されたのである。
結果は、残念ながら三位と僅差の四位に終わってメダルの獲得もできなかった。サーブリーコバーのレースを頻繁に見たことがあるわけでも、その結果をすべて把握しているわけでもないけれども、3000メートルのレースで4分を切れなかったのは、初めて見たような気がするし、転倒や怪我以外で表彰台を逃すのを見るも初めてである。
途中のラップタイムでは大きく負けていても、最終周回までほとんどペースを落とさずに滑りきるサーブリーコバーは、後半にどんどん差をつめて最後の一周、二週で逆転して優勝するというパターンが多く、その展開も見ているほうにはたまらないのだけど、今回は残念なことに逆転劇は不発だった。メダルが期待されていながら四位という結果には、本人もすごく残念がっていたが、マスコミの報道も残念、よく健闘したというものばかりで、非難するようものは見かけていない。日本だったらぐちゃぐちゃ言うやつが出てくるんだろうなあ。
日本の確か高木選手も五位に入って期待をはるかに超える大健闘としか言いようがないと思うのだけど、メダルが取れなかったことを責める奴がいるんだろうなあ。この選手どちらかというと中距離の選手のようだから、1500メートルあたりでメダルが取れればいいけど、一つも取れないままに終わったら批判の嵐にさらされそうである。
それから、この種目の日本のマスコミの報道にクレームをつけておけば、この種目でオランダの強さばかりを云々するのは大間違いである。オランダでスピードスケートが盛んで女子の長距離にも強い選手がたくさんいて層が厚いのは確かである。しかし、そのオランダ勢の前に壁となって立ちはだかってきたのがチェコのサーブリーコバーなのである。
ワールドカップでの優勝の数でも、世界選手権、オリンピックなどの大きな大会での金メダルの数でも、ここ十年ほどはオランダ勢の合計を一人で上回っているのがサーブリーコバーで、今シーズンオランダ勢の強さが目立つのは、サーブリーコバーが背中の怪我で本調子でなく、出場を控えていたからに過ぎない。サーブリーコバーが体調万全とは行かないまでも、出場しているということは、優勝候補の筆頭はサーブリーコバーであるべきなのだ。5000メートルでは絶対的優勝候補として、オランダ勢を蹴散らして優勝できるところまで調子を上げてくれると信じておこう。
日本のヤフーの速報のところでも「サブリコバ」なんて名前で書かれて、特に注目を集めているようではなかったし、強豪国の有力選手にしか目を向けられないのが日本の一般のマスコミなのだろう。日本にだってスピードスケートの専門家はいるはずだし、そういう人たちは絶対にサーブリーコバーのすごさを知っているはずだけれども、そんな専門家の知識を引き出して一般に伝えるというのがマスコミの使命なのではなかったか。
結局、断片的な情報を元に自分たちに都合のいい物語を作り上げ、それに反するものは存在しないことにしてしまう報道姿勢は、政治ニュースだけにとどまらないということなのだろう。オリンピックのたびに、メダルを獲得すればメダルを取るまでのお涙頂戴のストーリーが量産され、惨敗に終わればおだてられて勘違いした高慢なスポーツ選手の物語が作り出される。それらの陳腐すぎる物語に単に結果を伝える以外の記事を読むのが苦痛なほどである。メジャーなスポーツであれば、オリンピック以外のところでも繰り返される同工異曲に飽きないのかねえ。まあ人のことは言えんけどさ。
それはともかく、サーブリーコバーが取れなかったメダルを、今回は前回ほどは期待されていなかったバイアスロンで獲得した。バイアスロンは去年までのエース、コウカロバーが夏のトレーニング期間に怪我をして回復が遅れ、今シーズンは一レースも出場していない。ワールドカップの出場をあきらめてオリンピックに向けて回復に努めていたようだが、結局間に合わなかった。
コウカロバーの欠場でシーズン当初は、バイアスロンチーム全体の成績もあまり振るわなかったのだが、オリンピックに向けての調整がうまくいったのか、徐々に成績を上げていた。そして、一月のワールドカップでも好成績をあげていたベロニカ・ビートコバーが、最初のスプリントで三位に入り銅メダルを獲得したのである。
バイアスロンのワールドカップの中継を見ていて、今年は日本選手が特に途中経過で上位にいることがたまにあったのだが、一度タチザキ選手が、最後まで大きく順位を落とすことなく(途中まではよくても最後の射撃で大失敗というケースが多いのがバイアスロンなのだ)、確か11位に入ったのには、心底驚かされた。ヨーロッパ各国の一線級が軒並み出場しなかったヨーロッパ選手権で3位に入ったのは、ヤフーの速報のところに情報として上がっていたけど、世界のトップの選手たちが出場したワールドカップでほぼ一桁の11位のほうが、二線級ばかりの中での三位よりはるかに価値があるし、日本のバイアスロンにとっては画期的な結果だろうに、ちゃんと報道されたのだろうか。バイアスロンが盛んなチェコでも15位ぐらいまでに入ると大絶賛なんだけどねえ。
バイアスロンといえば、韓国代表の選手たちの名前が、リレー要員以外は、どう見ても韓国の名前ではなく、ロシア系と思われる名前ばかりで、この手のオリンピック対策の帰化というのも、オリンピックの魅力をなくしている一因である。チェコ代表だったら帰化選手でも誰でも応援するけどさ。日本で国体の開催県が、何が何でも優勝するために、なりふり構わぬ強化策を取るのと同じような醜悪さを感じてしまう。
それでも、不満を抱えながらチェコ選手を応援してしまうのだろうなあ。リオオリンピックのときほど熱心に見ることはなさそうだから、敗北宣言はしない。
2018年2月12日18時。
バイアスロンでは、日曜日の男子スプリントでもミハル・クルチュマシュが銀メダルを獲得した。月曜日の追い抜きレースでは二人ともメダルを取れなかったけど、チェコチーム出だし快調である。2月12日追記。
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