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2017年11月17日

中性名詞3――チェコ語文法総ざらえ(十一月十四日)



 今回は、中性名詞のうち「e」で終わるものの復習である。一般的に中性名詞の軟変化というと、このグループを指すことになるのかな。例として取り上げられることが多いのは「moře(海)」であるが、この海が中性というのに関しては、以前日本語のできるチェコ人に、日本語だと「母なる海」と言うから、女性ではなく中性名詞だというのは、理解しにくいかもしれませんねなんて説明をしてもらったことがある。理解しにくいのは、海が中性だということではなくて、名詞に性があるという事実そのものだったのだけどさ。初学の頃だったから仕方がなかったんだよ。こんな感想持つのも。もう少し勉強が進んでからなら、この話を上手いと思えたんだろうけどさ。今となっては、海が中性であることを疑うこともできないところまでチェコ語にどっぷりとつかってしまっている。
 ということで、「moře」の格変化である。

  1格moř-e
  2格moř-e
  3格moř-i
  4格moř-e
  5格moř-e
  6格moř-i
  7格moř-em

 これもまた、軟変化の男性名詞と女性名詞が混ざった感じの格変化である。中性名詞の特徴として1格、4格、5格が同じになるということ、中性名詞の7格は男性名詞と同じになることがわかっていれば、あとは2格、3格、6格だけである。一般に名詞の単数変化では、困ったときはUという合言葉が使えるのだが、これは硬変化の名詞向けのものなので、硬変化と軟変化の区別が付けられるようになったら、軟変化の場合には、困ったときは「i」なのである。「e」でもいいけど、1格と同じになることがあることを考えると、各変化させようとしていることをアピールできる「i」のほうがいい。
 複数は以下の通り。

  1格moř-e
  2格moř-í
  3格moř-ím
  4格moř-e
  5格moř-e
  6格moř-ích
  7格moř-i

 7格以外は「e」で終わる女性名詞の軟変化と同じ。同時に2格と3格の長母音が「í」になっているのを除けば男性名詞の軟変化と同じだともいえるので、何とも微妙なことである。数が少ないから覚えるのは最後にまわしてもいいと思うんだけどね。

 中性名詞の「e」で終わるものには、もう一つ男性名詞の活動体の伯爵と侯爵を説明したときに出てきた「kuře」型の名詞が存在する。これは、動物の子供を示す名詞が含まれるグループで、人間の子供「dítě」も、このグループである。ただし、「dítě」は複数では女性名詞になるという困ったやつである。本来男性名詞の伯爵や侯爵も複数では中性扱いになるんだったなあ。なんでこんなややこしいことになるんだと言ったら、師匠には例外中の例外で数が少ないんだから我慢しろと言われたんだったか。
 とりあえず単数の変化を示すと、

  1格kuř-e
  2格kuř-ete
  3格kuř-eti
  4格kuř-e
  5格kuř-e
  6格kuř-eti
  7格kuř-etem
 
 見ての通り、1格と形が異なる2格、3格、6格、7格で「t」が現れるが、その後ろに来る語尾は、「moře」型の名詞と全く同じである。これならいっそのこと、1格から「t」を出してくれればいいのになんてことを考えてしまう。この手の子供を表す中性名詞として覚えておいた方がいいのは、「kotě(子猫)」「štěně(子犬)」「děvče(女の子)」、子供ではないけど「prase(ブタ)」ぐらいだろうか。後は出てきたときで十分である。強制収容所を生き延びたユダヤ系の作家アルノシュト・ルスティクが「Němci jsou prasata」と語っていたのを思い出す。
 複数は、

  1格kuř-ata
  2格kuř-at
  3格kuř-atům
  4格kuř-ata
  5格kuř-ata
  6格kuř-atech
  7格kuř-aty

 注意が必要なのは、「t」の前の母音が「a」に変わっていることである。語尾は2格が女性、3格、6格、7格が男性名詞の硬変化と同じである。4格、5格が1格と同じになるのは中性名詞の特徴でこの名詞も例外ではない。
 中性名詞はこれでお仕舞と言いたいところだけど、この前コメントで指摘してもらったラテン語起源の「drama」というのがあるのだった。短くなるかもしれないけど、これについても一文物することにする。
2017年11月14日22時。






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