2016年03月07日
ヘラニツェ?(三月四日)
本来は、夜寝る前の一時間、二時間を使ってささっと文章をまとめる生活を夢想していたのだが、昼日中のぽっかり空いた時間に書き始めてしまった。この時間は仕事で使う資料の作成に充てる予定だったのだけど、まあいいや。
以前、二年ほど前だっただろうか、雑誌「ナショナルジオグラフィック」の日本版のホームページを見ていたら、チェコの記事があった。確かモラビアにある「ヘラニツェ」とか書いてあって、へえこんな名前の町があるのかと思った。長年チェコに住んでいるからと言って、すべての町や村の名前を知っているわけではないのである。
しかし、記事を読み進めていくと、「あれっ、これ知ってるような気がする」となり、実はすでにこのブログに登場したフラニツェ・ナ・モラビェのことだった。チェコ語の地名の語頭の「Hra」を「ハラ」「ホラ」と書くのはすでに見たことがあったが、「ヘラ」は初めてだった。記事中にはポーランド人が出てきたから、ポーランド語では、フラニツェを「ヘラニツェ」という可能性はなくはないのだけど。
フラニツェは、もともとベチバ川沿いの高台の上に築かれ、その後川沿いの低地や対岸にまで広がっていった町である。ベチバ川を少しさかのぼったところには、テプリツェ・ナド・モラボウという温泉地もある。テプリツェというと、ボヘミアにあるテプリツェのほうが大きく有名であるが、どちらも「テプリー(=温かい)」という意味の言葉からできた地名で、温泉地なのである。ボヘミアのテプリツェにはベートーベンが滞在したという話もあったような気がする。
フラニツェからテプリツェにかけての辺りは、いわゆるカルスト台地になっていて、チェコの自然保護区域に指定されている。その中心となるのが、「ナショナルジオグラフィック」の記事にも取り上げられていた「フラニツカー・プロパスト」である。ハンドボールの試合を見に出かけたときに、ここにも友人の案内で出かけたのだが、「プロパスト」という言葉から、断崖、絶壁をイメージしていたので、山の中の森の中の道を歩いて、ここだと言われたときには、一瞬あれっと思ってしまった。最初に見た瞬間には、これは地面に空いた穴だと思ってしまったのである。
上からは、地面に空いた深い穴の底に水が溜まっているのが見えた。クレーターという言葉も頭に浮かんだけれども、クレーターというには周囲の崖が切り立っていて、確かに断崖になっていたので、横に広がる断崖ではなく、穴を取り囲むような断崖と考えれば、これでいいのだろう。上部には人が落ちないように落下防止用の柵が付けられている。これがなかったら、夏場など鬱蒼とした林の中で見通しがよくないために、墜落する人が続出しそうだし、恐ろしくて近づけそうにない。実際にこのあたりを支配していた大モラバの王様が、夜中に馬を走らせていてこの穴に落ちたという伝説もあるらしい。
水がたまった鍾乳洞の天井が落ちてこんな形なったのかと思ったら、そうではなく最初から縦にのびた、縦に広がった鍾乳洞と考えたほうがいいようだ。断崖の下に見える池の水面の下に深い穴がのびているらしい。これまでに多くの人が、この鍾乳洞の深さを調査するために潜ってきたが、いまだ底には到達しておらず、現時点で確認された深さでは、イタリアの何とか言う鍾乳洞に次いで世界で二番目に深い水中鍾乳洞らしい。調査をさらに進めればさらに深いことが判明するかもしれないともいう。ただ、調査の際に亡くなった人が出るなど、危険性の高い鍾乳洞でもあるようだ。「ナショナルジオグラフィック」の記事ではポーランドの潜水家が、世界記録を求めて調査のためにこの鍾乳洞に潜る計画を立てているとあったが、結果がどうなったのかはわからない。
ベチバ川の対岸にあるズブラショフ鍾乳洞が、二酸化炭素の多い鍾乳洞であることを考えると、この断崖の底の鍾乳洞の水にも二酸化炭素が含まれていて、穴付近の空気の二酸化炭素濃度が高くなっているのかもしれない。それが事故が起こる原因の一つなのだろうかと考えてしまった。
さて、その対岸のズブラショフ鍾乳洞だが、形容詞として「霰石」からできた言葉がついているので、霰石が重要な役割を果たしているのだろうが、日本語で霰石と言われてもいまいちイメージがわかない。
友人に連れられてこの鍾乳洞に出かけた時のことで、よく覚えているのは、入り口の看板に犬を連れて入ってはいけないと書いてあったことだ。この鍾乳洞は、空気中の二酸化炭素の濃度が高いおかげで、チェコ国内でも最も内部の気温の高い鍾乳洞らしい。二酸化炭素は空気よりも重いために、下に沈む。そのため、人間よりもずっと下のほうに頭のある犬を連れて入ると、二酸化炭素中毒で死んでしまうこと可能性があるのだという。小さな子供も連れて入るのなら、手を引くのではなく腕に抱えて、または肩車して入るように指導されていた。鍾乳洞の内部でも、見学コースから見える深くなっている部分には、髑髏のマークのついた危険を知らせる進入禁止の看板が置かれていたし、本当に危険なレベルで二酸化炭素の濃度が高いのだろう。
見学の際のことでもう一つ思い出したことがあった。鍾乳洞の説明とは別に、二酸化炭素の危険性を散々聞かされながら無事に出口近くの部屋に戻ってきて、ほっと一安心したところに、ガイドのお姉ちゃんが、「今は鍾乳洞の内部に灯がついていますけど、なかったら、どのぐらい暗いと思いますか」とか何とか言いながら、ばちっと電気を消しやがったのだ。これにはぶっ魂消てしまった。今となっては、驚きが、電気が消えて真っ暗になってしまったことによるものなのか、本当に電気を消してしまったことによるものなのかは思い出せないのだが。一緒にいた友人はあまり驚いていなかったので、いつものことなか、ちゃんと消すと説明していたかのどちらかだろうと思う。当時の自分のチェコ語力を考えると後者かなあ。
「ナショナルジオグラフィック」の記事を読んで、この私の記事を読んでいる人はいないと思うが、念のためにもう一度申し上げておく。あの記事の「ヘラニツェ」は、「フラニツェ」のことなので、チェコ語で検索するときには、「HERANICE」ではなく、「HRANICE」と書かなければならないのである。
3月4日16時。
チェコでも宣伝しているのでチェコのホテルも出てくるだろうということで、オロモウツよりもマイナーなフラニツェでも検索してみた。カタカナ表記では残念ながら、該当なしだったが、ローマ字で「Hranice」と入力したら大量に出てきた。でも、よその町もある。よく見ると、半径20km以内のホテルを表示する設定になっていたので、2kmに変更してみると四軒のホテルが残った。以前プシェロフで検索してみたときも、なんか違う感じだったから、ローマ字表記で検索したほうがよさそう。3月6日追記。
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