2017年06月17日
チェコ対アイスランド(六月十四日)
今日はハンドボールの男子代表の話である。午後六時十五分からヨーロッパ選手権出場をかけた予選のアイスランドのと試合がブルノで行なわれた。普段は六時過ぎまで職場にいて(仕事をしてとは言わない)、七時過ぎにうちに帰りつくのだが、さすがに職場でテレビを見るわけにもいかないし、試合が終わる八時過ぎまで職場に残るのも避けたい。ということで早めに切り上げてうちに向かった。
今回のヨーロッパ選手権の予選は、四チームからなるグループで行なわれており、上位二チームが本戦に進出する。チェコが入ったのは、マケドニア、アイスランド、ウクライナの組。当初の予想ではマケドニアとアイスランドが有力視されていたのだが、チェコとウクライナの意外な健闘で、四試合終わった時点で、すべてのチームが二勝二敗、勝ち点4で並んでいる。
現時点では、得失点差のおかげでチェコが一位になっているけれども、アイスランドでの試合に負けていることを考えると、この試合には絶対に勝たなければならない。それも、直接対戦の得失点差で上回るために二点差以上の差をつけて勝ちたいところである。その上で、明日のもう一つの試合でマケドニアがウクライナに勝てばチェコの本戦進出が決定する。これが試合前の状況であった。
いや、このアイスランドとの試合に負けても、マケドニアで勝てれば、本戦への出場は可能である。ただ、典型的なバルカンの汚いハンドボールをするマケドニアに、マケドニアで勝てるとは思えない。チェコの方が優勢であったとしても、審判に手を回して必要な点差でマケドニアが勝つことになるのは、目に見えている。
うちに帰ってテレビをつけると、何かセレモニーっぽいことをやっていた。これまで十年以上にわたってチェコ代表のゴールを守ってきたペトル・シュトフルが代表を引退することを決めたのだと言う。最近は怪我などであまり代表で試合に出られていなかったけれども、長年の功労者シュトフルの引退試合ということで、負けられない理由が一つ増えた。
相手が正等派のハンドボールをする強豪チームということで、勝っても負けても接戦、いい試合になることは期待できた。ハンドボールの女子代表、サッカー代表と、二試合続けて不甲斐ない試合を見せ付けられたので、ここは見ごたえのある試合をして、勝利を収めてほしいところである。
試合開始直後から、チェコがリードする展開だった。ガリアがアイスランドのキーパーよりも当たっていたおかげで、チェコが徐々にリードを広げ最大で五点差をつけた。攻撃の面で素晴らしかったのはババークとステフリークの二人だった。特にドイツ一年目でチームが二部に降格することが決まったババークは、自分がシュートを決めるだけでなく、ポストの選手に決定的なバスを何本も通していた。
ババークも含めて、チェコの弱点の一つは、センタープレーヤーの背があまり高くないことなのだが、その対策として若手のカシュパーレクが代表初選出で初出場していた。前半の半ば、チェコがリードを保った状態で出てきて、とんでもないパスミスをするなどあまり活躍できなかったけど、期待のカサルが戦力にならないので、監督たちには我慢して使って育ててほしいところである。
前半の途中で、アイスランドがキーパーを替えたことで、そしてそのキーパーが当たっていたことで、点差が開かなくなった。差をつめたり広げたり一進一退の攻防が続き、前半終了間際に決められたら三点差になるというアイスランドの攻撃を防いで、速攻からソボルが決めて、前半は五点差でチェコが勝って終了した。
よかったのは、この前のウクライナとの試合では、ペトロフスキー以外のポストが全くと言っていいほど機能していなかったのに、この試合ではシュラフタがペトルフスキーとは違うタイプのポストプレーで得点を挙げていたことだ。これで攻撃に幅が出てきた。プルゼニュに復帰するらしいステフリークも力強くなってきたし、チェコ代表本当にいいチームになったなあ。
後半に入っても、五点差前後のリードで試合が進み、残り十五分ぐらいで六点差をつけたときには、二点差以上での勝利は間違いないと思ったのだが、さすがはアイスランド、簡単には負けてくれなかった。そこから、交代で出てきたアイスランドの若いポストの選手の活躍もあって、チェコの選手が混乱を起こしてミスを連発し、点差がどんどんつまっていった。残り五分ぐらいで一点差、アイスランドでの試合でもリードしていながら負けたと言うし、ここまで最高の試合をしていたのに、最後の最後でぶち壊しになるのかと思っていたら、チェコの選手たちが奮起して、再び突き放すことに成功した。
追い詰められた展開でもババークが、ポストに通したパスには鳥肌が立つような思いがした。もう押しも押されもせぬ攻撃の中心である。これでもう少し体格がよかったらと思わなくもないけど、体格で劣る分、動きの鋭さで相手を翻弄できているのだから、ババークはこれでいいのだ。
ペトロフスキーが、滅茶苦茶難しいパスをディフェンスと競り合いながらキャッチして、ディフェンスの選手を軸にするような形で回転して決めたシュートにも、目を見張った。このまま行けば、チェコ代表にユジーチェク以来の世界レベルのポストが誕生しそうである。二、三年前までは体の大きさだけで勝負していたのだが、いやあ、この選手、信じられないぐらいうまくなったわ。
最終的には27-24の三点差で勝利。アイスランドの最後のプレーで、攻撃側のファールをとられていたのはちょっと厳しいかなと思ったけれども、審判の笛はおおむね満足の出来るものだった。日曜日のマケドニアでの試合でも、ちゃんとした審判が指名され、ちゃんとした笛が吹かれることを願ってやまない。理想はチェコがマケドニアを粉砕し、アイスランドがウクライナに勝って、チェコとアイスランドが本戦に進むことである。ヨーロッパ選手権や世界選手権でバルカンのチームなんざ見たくねえというのが、正直な気持ちである。
6月15日23時。
木曜日に行なわれたウクライナとマケドニアの試合は、なんと引き分けに終わり、チェコの本戦進出は決まらなかった。マケドニアで負けなければ出場決定なのだけど……。もう一つの試合でアイスランドが負けなければ、チェコが負けても勝ちぬけは決まるので、たぶん大丈夫だと思いたい。グループ三位に入ったチームの中で最も成績のいいチームも本戦に進めるらしく、チェコが負け、ウクライナが勝った場合でも、その三位チームの中で最上の成績枠でチェコが本戦に進むのは決定だという未確定ニュースもある。それでも、これまで二回連続でマケドニアには苦杯を舐めさせられているので、復讐のためにも大差で粉砕する必要がある。
トルコとのプレーオフの初戦で大苦戦した女子代表は、トルコでの二戦目も大苦戦し前半は一点差負けで終わった。ただ後半大奮起して、最終的にはモストでの試合の倍、八点差をつけて勝利して、本戦進出を決めた。
6月16日追記。
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