2017年06月10日
スポーツ界の混乱続く(六月七日)
五月末日での辞任を表明したバラホバー教育大臣だが、現時点ですでに辞任して後任が任命されているのかどうかよくわからない。辞表を提出した際に、ゼマン大統領に業績を高く評価され、強く慰留されていたし、その後後任と目されている次官が大臣に任命されたという話も聞かないのである。特にスポーツへの補助金の問題に関しては、現在でも積極的に関与しているようで、この問題にけりをつけてからやめたいと考えているのかもしれない。
サッカー協会と教育省を結ぶ補助金に関するスキャンダルが勃発したとき、バラホバー大臣は即時に補助金の支払いを停止した。その結果、さまざまなスポーツに大きな影響を及ぼし、スキー協会では、来年の初めに予定されていたチェコでのワールドカップの開催権の返上を決めた。教育省からの補助金なしには開催できないのに、補助金がもらえるかどうか不透明な状態では、準備も始められないということのようである。他にも、すでに開催中だった大会や、変更のできない大会に関して、補助金が出ないと大赤字になるという悲鳴があちこちから上がっていた。
その後、大臣は、補助金の支払いを再開するのだが、その基準、方法がよくわからない。理解できた範囲と、スポーツ界から上がった批判とをあわせて考えると、補助金に関してはすでに認められたものも含めて再度厳重に審査すると言っていたから、すでに認められた分は、個々のプロジェクトではなく、スポーツ協会にお金が送られるようである。
スポーツ界側は、その協会に送られたお金を、個々のプロジェクトや具体的なスポーツチームなどに分配できなくなっているから、これでは補助金を貰ってもほとんど意味がないと強く教育相側を批判した。それに対して、大臣は単なる勘違いで、協会に送られたお金は協会の判断で分配できると発表して事態の沈静化に努めていた。
しかし、現在の状況に不満を爆発させたスポーツ側は、教育相の諮問機関の一つであるスポーツ審議会のメンバーになっているいくつかのスポーツ協会の会長が、審議会の委員を辞任することを発表した。辞任する委員の中には、チェコのスポーツ界で最も地位が高い人物の一人、チェコオリンピック委員会の委員長も含まれているから、教育省としても放置はできまい。
もう一方の当事者であるサッカー協会でも混乱は続いている。五月末の総会で新しい会長が選出されるはずだったのだが、誰も選ばれなかったのである。その結果、収監されていたペルタ氏が会長であり続けていたのだが、選挙の結果を受けて辞任し、現時点では会長不在である。
総会の会長の選挙には、結局、一度は出ないといったミネルウォーターの会社の社長と、サッカー協会とも仕事をしているマーケティング会社の社長が立候補した(正確には社長ではないかもしれない)。しかしどちらも選出されるだけの票を集めることができなかった。
このサッカー協会の会長の選挙の制度も複雑でよくわからないものなのだが、一言で言うと、ボヘミア側とモラビア側の対立が再燃し、それが原因で誰も選ばれないという結果になったようである。十年ほど前に対立がひどかったときには、協会を、ボヘミア協会とモラビア協会に分けようという話も出たほどなのだが、その場合にはリーグも代表も分割しなければならないということが判明して立ち消えになったのだった。
モラビア側は、どうも黒幕のベルブル氏の副会長就任を阻止したがっているようで、ベルブル氏が副会長にならないのだったら、ボヘミア側の指示する候補者に賛成してもかまわないとか言っているらしい。チェコのチームと選手がヨーロッパの舞台で活躍し、代表が強ければ協会なんかどうでもいいというのも考え方だろうけど、今の状態がチェコのサッカーにとっていいとは言えまい。
ここはまた、ペルタ氏の前に会長を務めて協会の正常化に努めたハシェクのように、現役時代に大きな功績を残した元選手の出番かな。誰がいるだろう。ハシェクはもうやらないだろうしなあ。
もう一つ思いついたのが、元教育大臣である。こいつをサッカー協会で飼っていたのはこういうときのためじゃなかろうかとも思うのだけど、元大臣は古巣でスキャンダルが起こったことから、サッカー協会を離れることを選んだようである。一説によると補助金が入ってこなくなったからだというし、国際的な大企業から引き抜かれたとも言う。
チェコの警察、検察のいいところは、政治家やその周囲の人物の不正を摘発することを恐れないことである。反対に悪い所は、捜査が政局に影響を与えたり、政局の影響を受けていたりすることである。去年の夏の警察組織の再編を巡る社会民主党とANOの対立は、警察内部に両党を支持する組織があって、社会民主党がANO側の組織をつぶして社会民主党側の組織に統合しようとしたことが原因ではないかと考えられる。
その観点からすると、今回の教育省とサッカー協会の補助金を巡る汚職疑惑も、政治的な捜査であったという疑いは強い。実際に何らかの不正はあったのだろうが、よりにもよって、社会民主党とANOの対立のもっとも激しかった時期に摘発したのだ。警察、検察が直接ではなくても、ANOに近い人間が、情報をリークした可能性だってある。バビシュ氏がわざわざチェコの二大新聞を手中に収めた目的には、そういう情報を手元に集めるというのもあったはずである。
政治の世界がどうなろうとどうでもいいし、EUに枠をはめられている以上、誰が総理大臣、大統領になっても、それほど大きな違いが出るとは思えない。しかし、その分スポーツの世界には、できるだけ早く混乱を収めてほしいと思う。せっかく、この全仏オープンで、クビトバーが復活し、プリーシュコバーがランキング世界一位まであと一勝という準決勝まで進出しているのだ。現在の混乱が水を差すことがなければいいのだけど。
6月8日16時。
プリーシュコバーは、残念ながらルーマニアのハレポバーに負けてしまった。それでもランキング一位は手が届くところにある。ウィンブルドンで、クビトバーとプリースコバーの決勝なんてことにならないかなあ。
サッカー協会のペルタ元会長は保釈が認められて、病院に直行した。教育省の逮捕された次官は、保釈が認められなかったようである。このスキャンダルとは関係ないと言うけれども、サッカーの一部リーグのメインスポンサーだったエーポイシュチェニーがスポンサーを下りることを発表し、スキャンダルに対する対応が遅すぎることに業を煮やしたスポンサーのガンブリヌスもサッカー協会から手を引くと言う。この状態で、新スポンサーを探せるのだろうか。新協会長は誰が就任しても大変そうである。
6月9日追記。
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