2016年01月28日
チェコ、テレビ事情(一月廿五日)
チェコでも、数年前に地上波でのデジタル放送が始まり、テレビのチャンネルが増えた。現在は全部で35のチャンネルが無料で見られるようになっているのだが、大半はなくてもかまわないチャンネルで、無理してデジタル化してチャンネルを増やす必要があったのか甚だ疑問である。デジタル化は、最近調子に乗っているEUの命令であった可能性も無きにしも非ずなのであるが。
デジタル化される前、アナログ時代にオロモウツで見ることができたチャンネルは六つしかなかった。少ないけれども、日本の実家のある地域では四チャンネルしか見られなかったのだから、特に不満もなかった。
見られたチャンネルをあげておくと、日本のNHKに相当するチェコテレビが第一と第二の二チャンネルで、第一と第二の住み分けも日本のNHKに近かった。日本と違ったのは小学校中学校の科目と直接関連する番組がなかったことぐらいだ。民放はノバとプリマの二つしかなかった。アナログの時代には常にノバが優位に立っていたが、デジタル化以後はプリマのほうが元気があるような気がする。そして、モラビア地方がスロバキアに近いおかげか、スロバキアテレビの第一と第二も見られていたのである。スロバキアではたまに、いい意味でとんでもない番組が作られるので、たまにスロバキア語の練習もかねて見ることがあったのだが、デジタル化されてからは見られなくなってしまった。すこしだけ残念。
チェコテレビは、デジタル化されてから徐々にチャンネルを増やし、現在では五つになっている。最初に追加されたのが、ニュースを中心にしたチェコテレビ24である。24は、毎時0分からニュースを放送するので、24時間ニュースという意味なのだろう。ニュース以外も放送されることはあるが、大半は過去を振り返る歴史がテーマになった短い番組である。
つづいてスポーツ専門のチェコテレビ第四が誕生した。それまで第二で放送されることの多かったスポーツ中継が、ここで扱われることになり、中継そのものが増えたことは、スポーツ好きの私にはありがたかった。最近チェコテレビ・スポーツに名前を変えたのは、民放の真似のようで少し気に食わない。
一番新しく誕生したのが、午後八時までは子供向けのチェコテレビDで、八時からは演劇などの芸術関係を中心として放送するチェコテレビ・アートに変わるチャンネルである。Dはチェコ語で子供を表すdítěの頭文字をとったものであろう。ヨーロッパ内でももっとも成功した公共放送による子供向けチャンネルらしいのだが、それを声高に誇るには、外国産の子供番組の翻訳が多きに過ぎる印象である。アートのほうはコンサートや演劇、芸術映画などを積極的に放送しているようだが、あまり見たことがない。
デジタル化して迷走しているノバは、チャンネルの展開にもあまり見るものがない。本家のノバは、典型的な民放のチャンネルで、日本に比べれば独自制作のドラマが少なく、アメリカなどで人気のあったテレビドラマや映画の割合が高い。以前は民放ではほとんどなされていなかったドラマの制作に力を入れているのは評価できるのだが、見たいドラマがあるかと言われると、警察ドラマの「クリミナルカ・アンデル(アンデル署、もしくは犯罪捜査課アンデルとでも訳そうかなあ)」ぐらいしかないのだが。
ノバが最初に追加したチャンネルが映画専門のノバ・シネマで、ノバで放送したものを翌日に再放送するのにも使われている。ファンダ(ファンの俗語的表現)は、男性をターゲットにしたチャンネルで、スタートレックなどのドラマだけではなく、スポーツの放送も行われている。系列の有料チャンネルであるノバ・スポーツで生中継したものを、後日録画中継と言う形になることが多いのだが、ラグビーやハンドボールなどのマイナースポーツも放送してくれるのでありがたい。残りのスミーホフとテルカは、完全に再放送専用のチャンネルになっていて、古いドラマの再放送ならまだわかるのだが、十年以上も前のクイズ番組や、視聴者参加型のバラエティを再放送する意味はあるのだろうか。
プリマは現在全部で六つのチャンネルを展開しているが、本家プリマは、一時期プリマ・ファミリーと名前を変えていたことがあるように、家族全員で見られるようなチャンネルを目指しているようだ。プリマ・クールは、男性向けのチャンネルでドラマなども他と比べると過激な血が飛び散るようなものが多いし、自動車関係やサッカーの中継などもここで行われている。次のプリマ・ラブは、名前の通り恋愛要素の強いドラマが多く、推理ドラマでも主役が男女のペアになっているものが選ばれるようである。もちろん本家の再放送が翌日に流されることもある。
そして、デジタル化最大の収穫と言えるのがプリマ・ズームである。このチャンネルはドキュメンタリー専門のチャンネルで、チェコテレビならともかく、民放にこんなことができるとは全く思ってもいなかった。プリマ・ズームに触発されてチェコテレビの第二でもドキュメンタリーの放送が増えたのは、思わぬ収穫だったが、惜しむらくはチェコ人が大好きで頻繁に放送される戦争に関する、特に第二次世界大戦中の戦いやナチスに関する番組にはあまり興味が持てないことである。外国の番組の翻訳ばかりなのは残念だが、たまに日本のNHKの自然をテーマにした番組も放送されることがある。外国向けに発売されたものなので、日本語は聞けないのだけれども。
最近、加わったのが、プリマ・マックスと、プリマ・コメディセンターなのだが、前者は映画の放送が多く、後者はひたすらアメリカ産のアニメも含めたコメディドラマを放送しているようである。
デジタル化して地上波に参入したのがバランドフなのだが、かの有名なバランドフの映画撮影所の名前を冠しているので、結構期待していたのだが、現時点では期待外れである。チェコの映画が重点的に放映されるものだと思っていたのに、トルコ産のテレノベラなんて誰が見るのだろう。そして、バランドフ・シネマ、バランドフ・プルス、バランドフ・ムジカと次々にチャンネルを増やしたが、特に見るべきものはない。
それから衛星放送の有料音楽チャンネルであったオーチコが、三つのチャンネルで放送しているが、特に音楽好きというわけでもないので、チャンネルを合わせることはないし、それぞれどう違っているかもさっぱりわからない。また、民族音楽とポピュラー音楽の中間のような、キーボードなどの電子楽器も使って、演奏しながら歌を歌う人々が続々と登場するチャンネルもいくつかある。管楽器の楽団とか、弦楽器の楽団とかも出てくるのだが、一番印象に残っているのが、二台のキーボードを使っている、その名もヤマハ・ドゥオというグループなのでこんな書き方になってしまった。とにかくこんな番組を喜んで見ている人は、いるんだろうなあ。
残りのチャンネルの中で、多少なりとも意味を感じるのは、オロモウツ周辺のニュースを、延々と放送、再放送し続けているTVモラバと、チェコ各地の地元のミニ放送局が作ったニュースを、全国的に放送しているテレビ局だろうか。全国ニュースにはなりそうもない事故や事件があったときに、このチャンネルのニュースで確認するのだ。ただ、人員不足のためか、翌日回しになることが多いのが残念である。
それから、最近放送が始まったムニャムTVという料理番組をひたすら流しているチャンネルは、他に何も見るものがなくて、頼みの綱のプリマズームも戦争番組をやっているときに、このチャンネルに合わせて、放置しておくことが多い。テレビを頻繁にオンオフしたくないので、次に見たい番組へのつなぎとして貴重な存在なのである。このチャンネルに関係すると思われるのが、まだ放送の始まっていないムニャウTVで、予告編のように猫が三匹歩いている映像が流れているので、猫ばかり出てくるチャンネルになるのかもしれない。
最後に、キリスト教系のチャンネル、ノエにも触れておこう。ろくに見たことはないのだが、名前からして「ノアの箱舟」を意識しているようなので、現代社会の情報の洪水におぼれようとしている人を救おうとしているのかもしれない。ただ一応は公共の電波が一宗教の主催するチャンネルに提供されるのはどうなのだろうか。日本だと仏教とか神道関係のテレビ局が全国放送を始めたら、政教分離の原則に反すると言い出す人が出てくるに違いない。一体に、こういう原則は日本のほうが厳密に守っているような気がしてならない。
このテーマならすらっと書けて、すんなり終われると思ったのだが、思いのほか長くなってしまった。チャンネルの数が多すぎるのがいけないのだ。
1月26日18時
テレビの話だから、DVDでもと思ったら、意外に出てこなかった。シュバンクマイエルは、あんまりテレビでは放送されないのだけど、商品名についている解説に納得のいかなかった「ポペルカ」は使いたくなかったので。1月27日追記。
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