2016年08月13日
いんちきチェコ語講座(八月十日) 有声子音と無声子音のややこしい関係(一)
カ行、サ行などが無声音で、ガ行、ザ行などが有声音だと言われると、それなら日本語にもあるので、あまり問題がないような気がする。ただ日本語にはない問題として、有声子音が無声で発音されたり、無声子音が有声で発音されたりすることがある。無声が有声化すること自体は、日本語にも連濁という現象があるので、それほど大きな抵抗はないのだけど、連濁が起こる規準と位置が違う。
例によってチェコ人たちは、明白なルールがあるというのだが、例外も多い。下に無声子音と、有声子音の対応表みたいなものを作ってみた。×は発音は存在するが対応するアルファベットがないことを示す。末尾の三つの組み合わせは、それぞれ例外的な使い方をするので/で分けておく。
K S Š T Ť P C Č / Ch / F / ×
G Z Ž D Ď B × × / H / V / Ř
まず、これらの子音の後に、母音が来る場合と、この表にない子音、たとえばM、Nなどが来る場合には、それぞれの子音をそのまま発音すればいい。だからzáda(背中)は「ザーダ」になるし、 zmrzlina(アイスクリーム)は「ズムルズリナ」になる。
それから、語末に来た場合には、無声子音は無声のままだが、有声子音は無声子音で発音する。これに関しては例外はない。だから、hradは「フラッド」ではなく、Chebも「ヘブ」ではないのだ。この問題は日本語でも語末に濁音が来る場合に、末尾の母音が発音されなくなって、濁音なのか清音なのかわからなくなることがあるのを思い出せは、他の言葉でも起こりうるということは理解できるだろう。バッグとバック、ベッドとベット、間違えてしまったことのある人は多いはずだ。
ただし、この二つのルールに関しては、これだけで終わりではない。チェコ語の名詞には各変化がある。つまり母音が付いたり落ちたりするのだ。だから、各変化をして母音が付くと、語末の子音が再び有声化して、例えば二格なら、「フラドゥ(hradu)」、「ヘブ(Chebu)」になってしまう。このことは、チェコ語の学習には単語のつづりを覚えることが欠かせないことを示している。耳で聞いただけでは、有声子音で書くのか無声子音で書くのか理解できないのだから。
この語末の無声化を覚えると、チェコ語に入った外来語の中で、日本語ではグで終わるものが、すべてクで終わるのが理解できると思う。ミーティングはミーティンク、トレーニングはトレーニンクになってしまうのである。おそらく、チェコ語に入ってきた当初は、Gで表記されていたはずだが、現在では表記も発音にあわせてKになっているのではないだろうか。二格以降も、派生語を作るときもKのまま格変化させるはずである。
英語teamは、日本語でもチームと書くか、ティームと書くかで問題になるが、チェコ語では、かつては、外来語であることを意識させるためかteamと書いていたはずである。それが、いつの間にか発音に合わせてtýmと書かれるようになっているし、外来語に対しては発音にあわせた表記を求める圧力がないわけではないようだ。だから、本来のチェコ語の語彙でも、というわけには、格変化もあるから、いかないのだろう。それなら表記に合わせてteamを「テアム」と読むようにしてくれれば、笑えるからよかったのに……。
話を戻そう。この問題で忘れてはいけないのが、女性名詞と中性名詞の複数二格である。格変化というと語末に母音を付け加えたり、語末の母音を変えたりするというイメージが強いが、この二つの場合には、母音が落ちるのである。žena(女性)の複数二格はženであり、 město(町)はměstになる。この二つは、最後の母音の前が有声子音ではないので、問題はないのだが、chyba(間違い)はchybとなり語末は「ブ」ではなく「プ」と発音され、 zádaはzadとなるのである。本当にチェコ語が聞いて理解できるようになるためには、「ヒプ」と聞いて、語末のプがPとは限らず、Bかも知れないことに思い至れるようにならないといけないのだ。
こう書くと死ぬほど大変そうだけど、よく使う単語に関しては、そのうちに慣れてしまうからあんまり問題はない。あんまり使わない単語の場合には、多少勘違いをしてしまったとしても、笑い話で済むし、勘違いできるところまで語彙が増えたことを喜んでもいいぐらいだ。単語知らなきゃ勘違いもできないんだから。
次は子音が連続する場合である。無声子音が連続する場合には、すべて無声で発音するからこれは問題ない。pták(鳥)のptもstudentka(女学生)のstもtkもすべて無声で発音すればいい。有声子音が連続するときのルールは、有声子音が単独の時と同じである。だから後ろに母音のあるdvěře(ドア)のdvと BřeclavのBřは、どちらも有声で読むし、後ろにrがあるzdraví(健康)も「ズドラビー」と読むのである。それに対してzájezdのように語末にある場合には、「ザーイェスト」と無声で読む。格変化に気を付けなければならないのも同じで、女性名詞単数一格のmzda(給料)は、「ムズダ」と読むが、複数二格はmezdとなって(eについてはいづれ)、「メスト」と読むことになる。
滅多にないけれども、有声子音ばかり、無声子音ばかりが三つ連続する場合も、同じルールを適用すればいいだけだ。例としては、有声子音が連続するvzduch(空気)と無声子音が連続するpstruh(マス)を上げておこう。
ここまでは、上に掲げたすべての有声子音、無声子音に適用できるルールである。それで、最後の問題が、有声子音と無声子音が一緒になっている場合なのだが、長くなったので、またまた分割させてもらうことにする。
8月11日15時30分。
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