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2021年02月26日

カオスは止まらない2(二月廿三日)



 文部省では、三月からの卒業と入試を控えている学年の通学を再開させようとあれこれ交渉しているようだが、前提条件として、アンチゲン検査で定期的に生徒たちの陰性を確認することが予定されている。当然授業の前に検査が行われている場所まで出向いて検査を受けてから学校に行くなんてことはできないから、簡易検査キットを使って生徒たちが自分で検査をすることになる。これはすでにオーストリアでも使われている方法らしい。
 その検査キットに関しては政府が一括で購入して、無料で書く学校に配布することになっているのだが、その納入業者が先週の後半に選定された。その選ばれた会社が、医療機器とは全く関係のない会社で、選ばれるための条件を満たしていないのに選ばれたとして、週末の間、バビシュ首相が選定のやり直しをすると大騒ぎをしていた。

 現在は非常事態宣言下にあるおかげで、所定の手続きを踏んで入札を行って業者を決める必要がなくなっている。だから、いくつかの会社に価格や納入期間、納入可能量などの見積もりを出させて、その中から最も都合のいい会社を選定することができる。問題は、誰にとって都合がいいかというところにあって、当然国にとってではないわけである。担当のハマーチェク内務大臣は、バビシュ首相の批判に対して、この会社だけが設定した条件を満たしていたと弁護しているけれども、先手伊尹の中からも異論があがっているようだった。
 個人的には、この時点で納入業者の選定が行われたことが理解できなかった。というのは、先週半ばのニュースで、いくつかある簡易検査キットの中で、もっとも信頼性の高いものを選ぶための実験がカルビナーの学校で始まったと言っていたからだ。中国製の簡易検査キットは、去年の春も使われて全く使い物にならないと現場の評判は最悪だったから、事前に信頼性を確認しておくのは全く持って正しい。

 その実験の結果が出たという話が聞こえてくる前に、納入業者の選定が始まっていたというのはどういうことなのだろう。使用する検査キットが変われば、業者も変わるはずである。これはもう、最初からどの会社のものを使うか話が決まっていて、実験は形式を整えるためのものに過ぎなかったのではないかと疑ってしまう。しかも、納入業者の選定に関しても疑いがあることを合わせると、最初から台本のできていた茶番にしか見えない。
 茶番は月曜日になっても続き、バビシュ首相があれだけ批判していたのに、選定のやり直しはしないことが決まってしまった。その理由については、少なくともこちらが理解できるレベルでの説明はなされていない。そもそも、チェコ企業に生産させるのではなく、どうして中国から輸入する必要があるのだろうか。去年の春もチェコ企業が機能性の高いマスクや、防護シールドを開発して生産を始めていたのに、政府は中国からの輸入にこだわっていた。こういうのは泥棒に追い銭といって批判の対象になるはずなのだけど。

 それから、今度は憲法裁判所ではなく、普通の裁判所で現在の非常事態宣言を違憲とする判決が出た。プラハのあるギムナジウムの学生が、授業がオンラインになってしまったことを憲法で保障された学ぶ権利を侵害するものだとして起こした裁判で、プラハの地方裁判所がギムナジウムに対してオンライン授業をやめて学校での授業を再開するよう命令を出したのである。その最下位命令の根拠となったのが、現在の非常事態宣言が憲法に違反したもだという解釈で、今後この司法の判断を受けて行政側がどう対応するのかが見ものである。
 残念ながら件のギムナジウムは、春期休暇中で即時の授業再開とはならなかったが、来週の月曜日から再開する準備を始めたようだ。ただし、学校側が命令に対して異議を申し立てたという話もあるし、政府が再開を阻止するために動くという話もあるので、実際にどうなるかはわからないのだけど。一方で、感染状況の悪化で、せっかく再開した小学校の低学年の学校での授業を再び禁止しようとする動きもあるのだが、文部省では最後まで抵抗しようとしている。さすがコメンスキーを生んだ国であるというと誉めすぎか。

 今日は、記者会見で厚生省の感染対策を担当する役人が、現在の状況は誰の責任でもなく、自然災害とでも言うべきものだと発言して、批判をあびていた。いやあ、ウイルスが世界に広がった責任は中国にあり、チェコの状況が壊滅的な原因は政府を初めとした政治家にあると考えるのが自然だと思うのだが、官僚としてはそんなことは口にできなかったのだろう。日常生活が戻ってくるのはまだまだ先のことになりそうだ。累計の感染者数が120万人に、死者数が2万人に迫るなど、割合で言えば世界最悪の状況にあるチェコだけど、政治があれな割には、頑張っている方じゃないかと個人的には思う。
2021年2月24日24時30分。













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