2020年11月23日
形容詞の作り方2(十一月廿日)
続いて動詞から作られる形容詞の話である。こちらもいくつかの作られ方があって、それぞれ意味、使い方が違っている。日本人としては形容詞というよりは動詞の連体形のような印象も持ってしまうのだが、普通の連体修飾節と違って、関係代名詞を必要とせず動詞を名詞の前に置くことが出来るので使えるとうれしいものでもある。文末で述語的に使う場合もあるので、確かに形容詞ではあるのだろうけど。
@受身形に形容詞の語尾をつける
これについては、動詞の受身のところで簡単に触れたが、基本的な形、つまり男性名詞の単数が主語のときの受身形の末尾の子音「n」、もしくは「t」に硬変化の形容詞の語尾をつけてやればそれで出来上がりである。一部はすでに完全に形容詞として辞書に載せられているぐらいだが、そうでないものでも普通に使われている。
受身形は、動詞「být」と共に述語として使うだけなので、名詞の前で使う場合には形容詞化する必要があると言ってもいいのかな。
・otevřít → otevřen(受身) → otevřený(形容詞)
これを例に簡単な文を作ってみると、次のようになる。述語として使う分には、どちらでも意味はほとんど変わらないと思う。
・Okno je otevřeno.= Okno je otevřené.
(窓が開いている)
・Otevřené okno jsem zavřel.
(開いている窓を閉めた)
A過去形に形容詞の語尾をつける
こちらは受身から作るのとは違って、自分であれこれ作るのは難しい。すでに使われている形容詞を見て、これはあの動詞から作られたのだと理解するのがせいぜいである。チェコ語が母語の人ならある程度自分で考えて作れるのだろうけど、外国人には難しい。とまれ、比較的よく使われる例を3つ挙げておく。
・minout → minul(過去) → minulý(形容詞)
・zalézt → zalezl(過去) → zalezlý(形容詞)
・zasloužit → zasloužil(過去) → zasloužilý(形容詞)
一つ目の「minout」は「過ぎる」という意味の動詞で。その過去形からできた形容詞は「過ぎた/過ぎ去った」という意味から、「過去の」という意味で使われる。週や月などと共に使うと「過ぎたばかりの」、つまり一つ前の週や月である、先週、先月を意味することになる。
二つ目の形容詞は、ボサーク師匠のサッカーの中継でよく聞くので覚えてしまったのだが、守備の際に完全に引いてしまって前に出ようとしない様子を「zalezlý」と表現する。動詞の「zalézt」は、大学書林の辞書には「這い込む」という語義が上がっているが、形容詞のほうは一定のエリアに入り込んで出てこない様子を表すのに使うと考えてよさそうだ。となると日本語の引きこもりに近い意味でも使えそうである。
三つ目は、映画などのタイトルロールで、俳優の名前に付されていることのある「zasloužilý umělec」というのが一番よく見る使い方だろうか。辞書だと「〜に値する」などと書かれているけれども、自らのなしたことによって何かに「値する」場合に使用する動詞である。言い換えれば、「〜に値する業績を上げる」ということで、形容詞形の「zasloužilý」は、「(顕彰されるに)値する業績を上げた」ということになり、「zasloužilý umělec」は「文化功労者」とも言うべき存在なのである。
他にも、「zemřelý(亡くなった)」「zahynulý(亡くなった)」「pozůstalý(遺された)」など、特に事故や災害に関するニュースでしばしば耳にする言葉の中にも、動詞の過去形が元になったものがいくつかある。ただ、後の名詞が省略されることが一般化して、形容詞というよりは名詞として使われている印象もある。
B原形に「elný」をつける。
動詞に「el」をつけることで、人を表す名詞を作ることがあるのだが(たとえば「učit(教える)」→「učitel(教える人=先生)」)、さらに「ný」が加わると、「〜することができる」という意味の形容詞になる。これもすべての動詞から作れるというものではないし、動詞によっては、原形ではなく、受身形を利用するなど微妙に形が変わるものもあるので注意が必要である。
・pochopit → pochopitelný 理解しうる
・srozumět → srozumitelný 理解しうる
・číst → čitelný 読める
・přijmout → přijatelný 受入可能な
この手の形容詞は、「ne」をつけて否定する形で使用することのほうが多いような印象もある。動詞を否定形にした「není přijatelný návrh」よりも、「je nepřijatelný návrh」のほうをよく聞くような気がする。
最後に一つ覚えておいたほうがいい言葉を上げておこう。動詞「obnovit」は、「nový」という形容詞とかかわりがあって、「新しくする、再建する」などの意味がある。そしてこの動詞からつくられる形容詞「obnovitelný」は、新しくすることが可能ということで、「再生可能な」という意味で使われる。つまり「obnovitelná energie」は、流行で嫌になるほど耳にする「再生可能なエネルギー」を意味するのである。
2020年11月21日22時。
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