2016年05月25日
アイスホッケー(五月廿二日)
中学校のころだっただろうか。見るのは楽しいけれども自分では絶対にしたくないスポーツという話で友人達と盛り上がったことがある。そのとき、圧倒的に票を集めたのが、ラグビーとアイスホッケーだった。どちらも激しく体をぶつけ合うことが許されており、時に血が流れる大怪我をすることがあるのが、敬遠される理由だった。アイスホッケーにいたっては、乱闘も試合の一部というような印象もあったし、日本ではどちらもマイナーなスポーツで、日本リーグは存在していたけれども、テレビでの中継もあまりなく、ルールなどがよくわかっていなかったというのも、恐ろしいスポーツだという偏見を助長していたのかもしれない。
その後、ラグビーは、テレビドラマの影響で一躍人気スポーツになり、高校時代にタックル禁止とはいえ授業で体験したけど、やはりあれは見るスポーツだという印象は変わらない。アイスホッケーは、スケート自体がなじみがないこともあって、自分ではしたことはないが、高校時代の先輩が大学に入って、なぜかアイスホッケー部に入って苦労していた。スポーツそのものよりも、首都圏であっても使える設備が少なく練習場の確保と、その使用料で大変だと会うたびに愚痴っていた。
アメリカのNHLのチェコ人選手の存在や、長野オリンピックでのチェコ代表の優勝などもあって、日本でもチェコのアイスホッケーの認知度は上がっているに違いない。ただ、あのよくわからないルールと、テレビ画面で見るパックが小さすぎてどこにあるのかわからなくなるのは何とかしてほしいと思っている人も多いのではなかろうか。実際に行ったことはないけど、スタジアムの客席からも見えないに違いない。
以前、どこかの冬季オリンピックの際に、日本人の知り合いから前日のアイスホッケーの試合について、「第三ピリオドで終わっちゃったんだよね。勝ち目ないと思って諦めたのかな」なんてことを言われた。そのときはアイスホッケーのことは、ほとんど知らなかったから、そういうこともあるんだなあと思って済ませていたのだが、後日その人から、アイスホッケーはバスケットとは違って、第三ピリオドまでしかなかったみたいだと教えられた。お互い、まだまだチェコ語がつたなかったから、日本語でもよくわかっていないスポーツの場合には、テレビで中継を見ても、何が起こっているのかさっぱりわからないという状態だったのだ。
その後、アイスホッケーは、サッカーと共にチェコで最も人気のあるスポーツなので、テレビで中継される機会も多く、特にチェコテレビがスポーツ専門チャンネルを開局してからは、見る機会が増えた。その結果、ある程度はルールなんかも、何となくわかるようになってきたのだが、わからないのはチェコテレビのアイスホッケー担当のアナウンサーと解説者の目のよさだ。猛烈なスピードで打ち出されたシュートが、いろんなところに当たってゴールに入った場合でも、スローの再生を見る前から、ほぼ正確に、どの経路、つまりは誰の何に当たってゴールしたのかを正確に言い当てるのである。アナウンサーが間違えた場合には、解説者が訂正してしまうのもすごい。スローでの再生を見てその説明が正しかったかどうか答え合わせをするのだが、大抵は正解なのである。こっちはスローで見てもよくわからないことがあるというのに。
プラハで世界選手権が行われたときには、試合後のインタビューを担当した元ホッケー選手の解説者が、スウェーデンの選手に流暢なスウェーデン語でインタビューを始めるのを見て、いい意味で開いた口がふさがらなかった。その解説者は現役時代にスウェーデンリーグでプレーしていたということなのだけれども、英語が世界言語として幅をきかせ始めた現代社会で、安易に英語に頼りきりにならずに、さまざまな言葉を使って中継をする姿勢は素晴らしい。
だからというわけでもないが、チェコテレビのアイスホッケーの中継は、世界でも最高のレベルにある。代表チームが強くて人気のあるスポーツだから、こうなのか、こうだから代表チームが強いのかはわからないけれども、このレベルに到達するまでには先人達のたゆまぬ努力があったはずだ。
さて、ロシアで開催されていたアイスホッケーの世界選手権が、カナダの優勝で閉幕した。今回はチェコ代表が調子がよかったので、最初のグループリーグが終わるぐらいから、チェコ優勝の文章が書けるのではないかと思いつつ、構想を練っていたのだが、準々決勝でアメリカに、審判の誤審のせいで負けてしまって、構想倒れになってしまった。審判が微妙なオフサイドを見逃したせいで、同点に追いつかれて、延長戦の後のサッカーのPK戦みたいなのの末に負けてしまったらしい。近年世界選手権やオリンピックで不甲斐ない戦いを繰り返してきたチェコ代表が、久しぶりにいい感じだっただけに残念ではある。
アイスホッケーの世界選手権は、毎年五月に、北米のNHLのプレーオフもたけなわの時期に行われている。そのため、プレーオフで勝ち進んでいるチームの選手は出場できないし、NHLのオーナーの意向で出場が許可されないこともある。だからといって世界選手権の価値が落ちるわけでもない。何年かに一回はアメリカでワールドカップなんて大会を開いたりもするけど、アメリカとヨーロッパではリンクの広さも含めて、ルールが結構違うらしいし、オリンピックも含めて、すべて同じように価値のある大会だということでよさそうだ。
十年ほど前までは、世界選手権にはアジア枠というのがあって、その枠で日本がほとんど毎年出場していたのだが、廃止されて以来、日本代表の姿を見ることはなくなってしまった。今後も厳しいだろうなあ。
5月23日23時30分。
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