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2016年05月20日

どうする、ロシツキー(五月十七日)



 チェコの誇る天才トマーシュ・ロシツキーが、十年間在籍したアーセナルを退団することが明らかになった。昨年の時点で、退団が確実視されていたし、一年の契約延長がなされたのは、ペトル・チェフを獲得するためだとかいう噂もあったので、そのこと自体には、いまさら何も言うことはない。しかし、これだけの長期にわたってチームを支えた選手の最終戦だというのに、ベンチにも入れずに観客席から観戦させた監督は許しがたい。

 思い出してみると、アーセナルに移籍するまでのロシツキーは線の細い印象はあったけれども、それほど頻繁に怪我をする選手ではなかったし、怪我での欠場が長引くこともなかった。それがイングランドに行ってしばらくすると、プレーしている時期よりも、怪我の治療とリハビリで戦列を離れている時期のほうが長いんじゃないかという選手になってしまった。
 ブリュックネル以後の代表の監督たちが、まずロシツキーありきで、いや攻撃はロシツキーがいれば何とかなるという考えで、チームを作ろうとして、ロシツキーが怪我で代表戦に出られなくなった結果、惨敗を繰り返したのは自業自得だから文句は言わない。でも、怪我が長引いたせいで、楽しみにしていたロシツキーの活躍を、代表だけでなくアーセナルの試合でも見られなかったのは、全てがアーセナルの責任ではないにしても、文句の一つも言いたくなる。だいたい怪我をするたびに、当初の見立てよりも、治療期間が長くなっていたような気がするのだが気のせいか。
 一体にイングランドに行った選手たちが怪我で苦労しているのは確かなんだけどね。コザークも、怪我と復帰を繰り返していて今年の夏のEURO2016どうなるんだろうって感じだし、あの鉄人ペトル・チェフですら、頭の大怪我で長期離脱した経験がある。チェフは、ラグビー用のヘッドギアと共に復活を遂げて、今ではそれがトレードマークとなった観があるから、怪我の功名といえば言えそうだけど。

 それに、ロシツキーが怪我をしていない時期でも、ベンチを温めていることが多かったような気がするのも許せない。ロシツキーの移籍以来、アーセナルが一度も優勝できなかったのは、ロシツキーほどの天才を使いこなせなかった監督が悪いんだな。たまにチャンピオンズリーグの試合で、今は怪我をしていないから久しぶりに見られると思いながらチャンネルを合わせたのに、ロシツキーが出ていなかったという失望を何度味合わされたことか。最近は怪我も多いし、まったく期待していなかったからいいけど。
 イングランドに移籍したチェコの選手達は、ペトル・チェフを除くと、不遇をかこつ場合が多い。チェフもチェルシーの最後の年は、なんら劣るところはないのに控えの役割を受け入れさせられたからなあ。オロモウツからチェルシーに買われていったカラスは、ろくに出番も与えられないまま、あちこちレンタルでたらい回しにされて、このまま退団ということになりそうだし、ビドラもレンタル先で活躍して戻ってきても、チャンスは与えられず、またレンタルに出されちゃうし。期待されて移籍したゲツォフは、まったく戦力扱いされずに、チェコに戻ってきてからも以前の活躍ができていない。今後は若手をイングランドに移籍させるのはやめたほうがいいんじゃないだろうか。ベテランは飼い殺しでもいいけど、若手が伸び悩むと代表が困るし。

 ロシツキーの今後については、スパルタ復帰、アメリカ行き、それにアラブリーグ行きの三つの可能性があるらしい。怪我が本当に治っているのならスパルタに復帰してほしいけれども、そうでないのなら、無理はしないでほしい。
 期待の若手と言われてスパルタでデビューする前にスペインのアトレティコに買われていった兄のイジー・ロシツキーも、怪我でスペインではほとんど活躍できずに、スパルタに戻ってきて、ほとんど試合に出ないまま引退してしまった。代表の同僚だったヤンクロフスキーも、ウイファルシも、現役生活の最後にチェコリーグに戻ってきたが、どちらも怪我のせいでほとんど雄姿を見せることができないまま、引退を余儀なくされた。
 ロシツキーには、こんなキャリアの終わり方は似合わない。夏のヨーロッパ選手権で怪我を押して大活躍して、それを花道に引退するというのが理想かな。将来、コレルと監督として対戦したりしたらファンとしては大満足である。
5月18日17時。



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