2019年04月18日
ビデオ審判問題(四月十六日)
チェコのサッカーリーグにおけるビデオ審判の問題については一度書いたけれども、またまた大きな問題が発生して、ビデオ審判なんかいてもしょうがないとか、対費用効果が小さすぎて、システムを作っただけの奴に無駄に金払うことになるだけだから、そんな金があるなら別な用途に投資したほうがはるかにましだという声が大きくなっている。最初は歓迎するむきの多かった選手たちの中からも、ビデオ審判に対する期待はずれの声があがり始めているようだ。
週末に行なわれた第28節でビデオ審判が置かれたのは、二試合。日曜日のプラハダービー、つまりスラビアとスパルタの、スラビアホームのエデンでの試合と、土曜日に行なわれた二位のプルゼニュとオストラバの試合だった。その両方でビデオが……というシーンがあって、一説によるとどちらもプルゼニュに利益をもたらす方向に判定がゆがめられたから、協会内の黒幕とか、実質的な権力者と呼ばれる人物の意向が反映されているのではないかという話もある。
土曜日の試合からいくと、最初に問題になったのは、前半20分ぐらいのこと、プルゼニュのホリーがペナルティエリアでボールをもらったときに、オストラバのフィロが倒してしまった。後ろからタックルに行ってボールではなくホリーの足に当たっているように見え、主審はPKの判定を下した。ここでビデオ審判が介入して、主審が映像をチェックしなおしたところ、PKは取り消しになった。微妙な判定だとは思うけれども、ここはビデオ審判ちゃんと仕事をしたといってよさそうだ。
二つ目は前半の45分過ぎ、オストラバのシュートが、キーパーの頭を越えてゴールに入りそうだったのを、フブニークがライン上で蹴りだした。オストラバ側としてはこれがライン上ではなく、いとどゴール内に入ったものを蹴りだしたんじゃないかというのだけど、ニュースで見た映像ではまったくわからなかった。ビデオ審判はというと、提供されたビデオでははっきりとゴールラインをボールが完全に超えていることを確認することはできなかったのだという。ビデオ審判に提供されているのは、中継を担当する放送局の作成する映像なので、ゴールの真上でゴールだけを捕らえているようなカメラはなかったのだろうか。これもビデオ審判として正しい対処というか、システム上の問題で、どうしようもなかったケースである。
三つ目は、プルゼニュのゴール前で、オストラバの選手がボールを蹴った後の足に、プルゼニュの選手の足が当たったように見えるシーン。主審からはオストラバの選手の陰になって、線審からは距離が離れていて、見えなかったようで笛は吹かれなかった。ビデオ審判も全く反応せず、そのまま流されたのだが、チェコテレビの「ドフラーノ+」に出演したスポーツ記者は、このシーンでビデオ審判が手を出さなかったのが一番の問題だと言っていた。ペナルティエリア内での主審と線審には見ることのできない反則を見出して主審にアドバイスするのがビデオ審判の役割の一つなのだから、この反則に気づかないのではいる意味がないというのである。
四つ目は後半プルゼニュが得点したシーンで、ディフェンスラインの裏に抜け出してパスを受けたジェズニークがオフサイドの位置にいたんじゃないかという指摘があった。オフサイドだったとしても、ぎりぎりだったので線審が旗を揚げなかったのは正しい。ここでビデオ審判が口を出すかどうかだけど、スポーツ記者はオフサイドだったとしても本当にぎりぎりだったから、ビデオ審判が反応しなかったのは、三つ目のケースに比べればはるかに許容できると言っていた。個人的にも賛成である。
ただし、一番批判されているのは、直接ゴールにつながった最後のケースである。これはビデオ審判が得点につながった微妙なシーンにはすべて口を出すべきだという期待があるせいだろう。ところが、チェコのサッカー協会の審判部門では、ビデオ審判の役割は主審が明らかな判定のミスをしたときに指摘することだとか言っている。去年のロシア・ワールドカップでもそうだったけど、ビデオ審判の役割が明確にされていないせいで、現場で混乱を起しているような印象を受ける。
とまれ、この試合では、明らかにビデオ審判が機能せず結果的に誤審になったのが1回で、ちゃんと機能して判定が訂正されたのも1回だといえそうだ。いや、ちゃんと機能したほうはあまり取り上げられないから他にもあったのかもしれないけど。
それに対してプラハダービーはひどかった。試合後の審判部門の発表では、スラビアにPKが2回与えられるべきだったというのだけど、特に一回目は主審が正しくPKの判定を下したのを、ビデオ審判の介入で取り消しているから、何のためのビデオだと言いたくなる気持ちはわかる。主審の話では、最初はスラビアの選手をスパルタのキーパーが引っ掛けて倒したように見えたので、PKの笛を吹いたが、ビデオで見せられた画面では、接触する前に倒れにいっているように見えたので撤回したのだという。そして試合中に見ることができた映像は一つだけだったらしく、試合後に別の角度からの映像を見て、誤審であったことを認めていた。
ビデオ審判は、主審に見せたものとは違う角度からの映像は、判定をくだすさいには手元になく、間に合わなかったのだと主張している。それに対して中継を担当したO2テレビは、いくつものカメラで撮影した映像は即座にビデオ審判が見られるようになっていると反論している。この辺もビデオ審判が運用面で大きな問題を抱えていることを示している。こんなのはチェコだけのことではあるまい。
日本のJリーグでもビデオ審判待望論があるようだけど、現時点ではそこまで効果のあるものではないと言うしかない。以前ゼレンカが言っていたように、主審がビデオがあるからと寄りかかって主審の判定がいい加減になる可能性もあるし、こちらも大きな期待とともに導入されたゴール審判のように、期待はずれに終わってしまう可能性も高い。
この件についてヤブロネツの監督のラダが珍しくいいことを言っていた。「俺は最初ッからビデオなんて反対だったんだ。お前ら他のチームの監督たちは導入を望んでいたんだから、自分たちに有利な判定が出ないからって、いちいちがたがた言うんじゃねえ」とかなんとか。結局自分たちに有利な判定なら誤審も見逃すけど、不利に感じられる判定は許せないというサッカー人のメンタリティをどうにかしないと、ビデオなんてあっても意味がないような気もする。
2019年4月17日23時30分。
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