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2016年04月22日

チェコ人も知らないチェコ語 いんちきチェコ語講座(四月十九日)



 チェコのレストランで、何を選ぶか考えたくないときに、メニューにあれば選ぶ料理がある。一つは、オンドラーシュと呼ばれる料理で、ブランボラークの生地で鶏肉か豚肉を包んであげた料理である。ブランボラークは、名前にブランボラとついていることからもわかるように、ジャガイモを使った料理で、ポテトパンケーキとか言われてもイメージがわかないだろうから、摩り下ろしたジャガイモに小麦粉と卵、調味料、場合によっては牛乳を加えて作った生地を、フライパンで油で焼いて、もしくは揚げて作る、もしくは、お好み焼きの具を全部ジャガイモにして、特別な調味料香辛料の類を加えて焼いたものと説明しておこう。
 昔は街中のスタンドで売られていて立ち食い、歩き食いをしている人を見かけたもののだけれど、最近はファーストフードに駆逐されたのか、クリスマスやイースターなどのマーケットのときぐらいしか外では食べられない。ビールのつまみとしては、ブランボラークが大好きなのだが、食事となると一緒に食べるものを考えなくてもいいので、オンドラーシュのほうがいい。
 そして、もう一つがスマジェニー・シールである。かつてサマースクールのイベントで、スラフコフの城館と、アウステルリッツの古戦場を見学に出かけたとき、大挙して入ったレストランの人に、出発までに時間がないようだから、皆同じ料理にしてくれないと間に合わないと言われ、全員一致で選ばれたのがこの料理だった。料理自体は、チーズにパン粉の衣を付けてあげたチーズカツとか、チーズフライとか言いたくなる料理で、チーズ嫌いでもない限り口に合わないとは言わないはずである。そのスマジェニー・シールと一緒に食べるのは、たいていフライドポテトである。

 このフライドポテト、チェコ語では複数形で「フラノルキ」という。一本単位で注文する人なんかいないから、複数形で問題はないのだろう。でも、これが男性名詞なのか、女性名詞なのかは、一格、四格以外の格では重要である。特に料理を注文するときには、メインの料理の名前を言った後に、「s+七格」を使う。だから、男性名詞として「ス・フラノルキ」と言うのが正しいのか、女性名詞として「ス・フラノルカミ」と言うのが正しいのかは、チェコ語を学ぶ外国人にとっては、重要なことである。
 それなのに、チェコ人に聞くと、たいてい「ス・フラノルカマ」だという答が返ってくる。これは、典型的な話し言葉表現の七格で、女性名詞には、そのまま「マ」をつけ、男性名詞には「アマ」をつけるため、男性名詞でも、女性名詞でも複数七格の語尾は同じである。例えば、学生の複数七格は、男だったら「ストゥデンタマ」、女性だけだったら「ストゥデントカマ」となる。

 仕方がないので、授業時に師匠に質問したところ、「フラノルキ」は男性名詞だから、「ス・フラノルキ」が正しいと答えてくれた。ただ、チェコ人の中には、話し言葉の複数七格の語尾の「マ」を「ミ」に変えれば、文法的に正しい表現になると思っている人が多いから、そういう説明をする人には、チェコ語に関する質問はしないほうがいいとも言われた。複数七格の語尾の「マ」は、本来は手や足など二つセットで人間の体についているものに使われるいわゆる双数の七格が、他の名詞の複数七格に転用されてしまったものらしい。
 男性名詞なら、「フラノルキ」の単数一格は「フラノレク」だということになる。師匠の説明によれば、それは細長い角柱を意味する「フラノル」の指小形だという。「フラノル」という言葉で、表されるものとしては、鉄道の線路の下に敷かれているコンクリート製の枕木を挙げてくれた。なるほど、フライドポテトの形状から、枕木を小さくしたものを想定したということか。すんなり納得できてしまった。
 最後に師匠は、チェコ人でも「フラノルキ」の単数一格が「フラノレク」であることを知らない人は多いから、いろんな人に質問してみるように付け加えた。実際に、あちこちで質問してみると、同じチェコ人でも意見が合わずに、質問したこちらをそっちのけで議論を始めてしまうこともあって、なかなか楽しかった。チェコ語を勉強するに当たって、こういう師匠に出会えたことは、本当に幸せなことであった。

 他にも男性名詞か女性名詞かわからないものはいくつかあって、例えば、ジャガイモの単数一格が「ブランボル」なのか、「ブランボラ」なのか、キュウリは「オクルカ」なのか、「オクレク」なのかで、いつも悩むのである。
4月20日14時。


 なんか尻切れトンボと言うか、落ちがないと言うかうまくおさまりがつかなかった。本当はこの後「トルハーク」という言葉の意味についての話を書くつもりだったのだけど、長くなってしまいそうだったので次回回しにした。4月21日追記。






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