2019年03月15日
動詞の受身2(三月十三日)
チェコ語の動詞の受身形の二つ目のパターンは、語尾が「-án」となるものである。これは原形が「-at」もしくは「-át」で終わるものが取る形である。興味深いのは、同じ「-at」で終わっても別種の動詞扱いされることが多い、「-ovat」で終わる動詞も同じグループになることである。また、受身形で末尾の子音の前に長母音が出てくるのはこれだけなので、短母音にしないように注意が必要である。「napsat」と原形では短母音でも、受身では「napsán」と長母音化するのである。
以上の二つのパターンで、動詞の多くはカバーできるのだが、「n」ではなく、「t」で終わるものも存在する。数は多くないにもかかわらずいくつかのパターンがあるのだが、原形の長母音が短母音化すると覚えておくと、少しは楽になる。一つ前のとは逆のパターンになる。一つは「-ít」「-ýt」で終わるもので、受身形はそれぞれ「-it」「-yt」で終わることになる。例えば「vypít」が「vypit」、「krýt」が「kryt」になる類である。
二つ目は、原形が「-nout」で終わるもののうち、特に「-nout」の前が母音になっている動詞で、受身形は、「-nut」で終わる。「ou」が「u」に変わるだけである。例えば「minout」からは「minut」という形が作られる。前に来るのが子音でもこの形をとるものもあって、一番よく使うのは「rozhodnout」からできる「rozhodnut」だろうか。Aのところで例に挙げた「tisknout」も「tisknut」という形で使っても間違いではない。
三つ目は、例外的なものになるのだが、覚えておかないと困る。まず「-jmout」でおわる動詞の受身形は「-jat」となる。これはまだ許せるのだが、「jet」に接頭辞を付けた動詞の中には、受身形にできるものがあって、その場合、原形と受身形は全く同じである。これが女性形や中性形で使われていれば問題ないのだが、男性単数の形で使われていると、普通の動詞なのか、受身形なのか戸惑ってしまうこともある。動詞「být」が隣にあればすぐわかるのだけど、離れているとね。
ということでまとめておこう。
受身形の作り方
B 受身形の語尾が「-án」となるもの。
➀原形が「-at」でおわる。「-ovat」で終わるものも含む。
dělat → dělán
přidat → přidán
připravovat → připravován
A原形が「-át」でおわる。
dát → dán
psát → psán
C 受身形の語尾が「-t」となるもの。
➀原形が「-ít」「-ýt」で終わる。受身形は「-it」「-yt」。
pít → pit
užít → užit
ukrýt → ukryt
A原形が「-nout」でおわる。受身形は「-nut」。
kynout → kynut
dotknout → dotknut (dotčenも可)
➂例外「-jmout」→「-jat」、「-jet」→「-jet」他
obejmout → objat
přijmout → přijat
přejet → přejet
vzít → vzat
実際に受身形を作る場合には、AとCで悩むことになるのだが、AでうまくいかなかったらCでやってみるぐらいの気持ちでいいのではないだろうか。Cの➂なんて、使えるとチェコ語ができるようになった気がするから、ついつい使ってしまうけど、実際には使わずに済ませることも可能である。
さて、動詞「být」以外との組み合わせでの使い方も紹介しておこう。これは、中世単数形の「-o」で終わる形を使うのだが、一つは動詞「mít」とともに使う。レストランなんかで注文を取りに来た人に、「Máte už vybráno?」と聞かれたことがある人は多いだろう。意味は「もう選びましたか」といういみなので、「Už jste vybral?」でもいいはずなのだが、「Máte už vybráno?」が使われることが多い。
これに準じて、「Už mám rozhodnuto(もう決めた)」とか、「Už máme vyhráno(もう勝った)」「Mám přečteno(読んでしまった)」など、日本語だと受身にしないような場合でも動詞の受身形の単数中性を使って表現してしまえる。これだと性も単複も気にしなくていいという利点もある。
それから忘れてはいけないのが、特定の副詞と動詞の受身形が結びついた慣用表現的なものである。これも単数中性の形を使うのだが、一番よく使う動詞は「říct」つまりその受身形の「řečeno」である。「Upřímně řečeno(率直に言うと)」「Jednoduše řečeno(簡単に言うと) 」「Jinak řečeno(別な言い方をすると)」なんかは、ついつい必要以上に使ってしまう。他にも「vzít」の受身形を使って、「Obecně vzato(一般的な理解をすると)」なんてものあるけど、これはなぜか自分では使わない。
繰り返しになるけれども、動詞の受身形の使い方で一番大切なのは、動詞「být」と組み合わせて述語として使う使い方である。性と単複の違いによる語尾の違いはとにかく覚えてしまわなければならない。動詞の受身形を名詞の前に持ってきて格変化させたいときには、形容詞の硬変化の語尾をつけて、形容詞と同じように使ってみよう。大抵は、辞書に形容詞として立項されていなくても使えるはずである。
受身に関して他にも書くべきことがあったような気がするのだが、それはまた思い出したときに書くことにして、ひとまずこれでお仕舞い。
2019年3月14日23時。
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