2019年01月13日
ややこしいToの話(正月十一日)
久しぶりにコメントが増えていた。かなり前の記事へのコメントだったので、一瞬、例の何でこのブログに書くのかわからないコメントかと思ったのだが、これまで何度かコメントをいただいている、チェコ語学習者の方だった。「to とhoの使い分け」についてコメントされているのだが、そんなこと書いたっけと思わず自分が何を書いたか確認に行ってしまった。
九月の初めのサマースクールの名残でチェコ語についてあれこれ書き散らしていたころの記事で、語順を扱ったものだった。その中で、指示代名詞の「ten/ta/to」と人称代名詞の「ho」についてちょっとだけ触れていた。ちょっとだけ過ぎて申し訳ない気もするので、使いやすいのだけど、正確に使おうと思うと実はややこしいtoについて、もう少し詳しく説明しておく。
まず、一般に指示代名詞とされる「ten/ta/to」だが、実際には日本語の連体詞「その」と同様に名詞を伴って使われることが多い。単数だけ例示すれは、「ten pán(その男)」「ta žena(その女)」「to město(その町)」となる。確かに「ten」だけで使われることもなくはないのだが、それは後に来る名詞、指すものの性が明確に意識されているときで、そうでなければ、「ten/ta/to」のどれを使うのか決められないのだから、むしろ名詞が省略された形だと言いたくなるほどである。
正月に、またまた見てしまった「トルハーク」の名場面、郵便局でティハーチェク氏の姉の郵便局員が、窓の外の森林管理間のマトゥシュカに見とれて窓から離れられなくなるシーンで、ティハーチェク氏の姉が「Ten je ale fešák(あの男の人かっこいいよね)」と言っていた。「Ten」だけで使われているのは、男であることは目で見てはっきりわかっているからであろう。もちろん、ここは「on(彼)」を使ってもいいはずだ。
もう一つ例を挙げれば、会話の中である女性が話題に上がったのを受けて、「Ta je hezká(あの女はきれいだよ)」なんて使う。男性の場合には「ten」になるが、どちらも1格で使われているということである。これが、4格になると、「Znám ji(彼女を知っています)」か「Znám tu ženu」になって、「Znám tu」とはしにくいのである。
これに準じて、前に出てきた、人ではなく物を指す場合でも、4格の場合には、「ten/ta/to」の4格ではなく、人称代名詞の「on/ona/ono」の4格が使われることが多いし、「ten/ta/to」を使うのであれば、名詞も一緒に使うのである。複数の4格の「je」が正しく使えたときには、自分のチェコ語も進歩したものだと感慨を抱いてしまった。何せ、初めてこの「je」を見たときに、動詞býtの三人称単数の形だと思って、文が理解できずに頭を抱えたのだから。
会話をでっち上げてみる。
Koupil jsem si nový slovník.
新しい辞書、買ったんだ。
Ukážeš mi ho (ten slovník)?
それ(その辞書)、見せてくれる?
以上が、指示代名詞と人称代名詞を使う際に、気をつけていることである。ただし、これが正しいチェコ語の使い分けかどうかは知らない。無意識に使えるところまではきていないけど、これまで説明されたり、指摘されたりしてきたことから、帰納的に作り出したルールなのでである。
ところで、チェコの人の感覚で使い分けているというのはどうなんだろう。この辺は、チェコ人もある程度学校で勉強しないと正確には使いわけられないと思うんだけど。チェコ語であれ、日本語であれ言葉を自覚的に使っていない人には、文法的な説明は求めないで、不自然なところを直してもらう程度がいいということかな。黒田師の本にもそんなことが書いてあったし。
本題に入る前に1ページ越えたし、TOの説明は長くなりそうなのでまた明日。
2019年1月11日24時30分。
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