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2023年06月14日

迷い犬

夕方愛犬の散歩のために家に戻ると、犬が一匹増えていた。
車庫の中に、ちょこんと犬が座っている。
初めは何かの置物かと思ったが、近づいてみると、ずぶ濡れになった犬だった。
どこからかやってきて、休息がてら雨宿りをしているのだろうか。

私の愛犬たちは、そ知らぬふりである。
近づけば、吠えたり威嚇したりするのだろうが、何ごともなかったかのように過ごしている。

奥の部落から逃げ出した犬なのかと思い、訪ねてみたが、どうやらその部落にも時折現れる野良犬らしい。

そうは言っても、助けを求めて来た犬を、むげに追い返すわけにもいかず、私はずぶ濡れになった身体を拭き、少しのおやつをあげた。

気に入られて居つかれても困るが、私の家で弱って死んでしまうのも、あまりに切ない。
と言って、保護して私が飼い主になるというのも、少しハードルが高い。

迷い犬は、私の飼っている柴犬よりも一回り大きい柴犬系の雑種と思われた。
その汚れ具合から、雨の中ずっと歩き続け、ヤブの中をも歩いてきたものと思われた。

「どうしたの? どっからきたの? 休んだらおうち帰りな…」と声を掛けて、私は愛犬たちの散歩に出掛けた。まだ本降りの雨だが、少しは雨あしが弱くなってきたようだ。

私はその後、犬小屋をあとにした。
幸いライブカメラで犬たちの様子が見える。
薄暗くなった夜7時頃、その迷い犬は尻尾を振りながら私の愛犬に近づいた。
臆病者の私の愛犬は、けたたましく吠え、近づいてくる迷い犬を追い払った。

あきらめた迷い犬は、裏庭の方に歩いて行ったようである。
その方向を、私のもう一匹の愛犬がじっと見つめている。

迷い犬の目は、何かをい訴えかけ、まるで「助けてくれ」とでも言いたげであった。
何とかしてあげたかったが、私ができること、やってもいいことは、せいぜいこのくらいが限界だろうと思った。

飼い主がいるなら、家に戻ったらいい。
居心地が悪くて、苦しくなったら、また休みに来てもいい。

私がお世話をしてあげられるかどうかはわからないけど。たまに来るくらいなら、かわいがってあげよう。

私はそんな思いで夜を迎えた。

迷い犬は元気にしているだろうか…。
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