珍しくホールケーキを注文し、ロウソクを立ててみた。
私も時々そんな風に祝ってもらうことがあるので、今回、その恩返しのようなものである。
やっとのことでライターを探して、ローソク6本を立てる。
「あれ?」
十六歳の誕生日で6本ということは、一本あたり2.67歳か…。
もう一つ、長いロウソクを立てるべきだった。
T君にロウソクを吹き消させる。
チョコレートケーキなので、早く消さないと、チョコが溶ける…。
何となく照れながら、吹き消し、ポーズをとるT君の姿が、可愛く見えた。
「好きなだけ食え!」
一度に食べられるものではないが、ホールケーキを好きなだけ食べられるという経験も少なかろう…。
「食べたいときに、冷蔵庫から出して食べればいい…。」
私からのささやかな誕生日プレゼントのようなものだ。
本来親の仕事だろうが、今回は私がそれを代行する…。
私もお裾分けで、少しいただく…。美味であった。
お互い多くを語らなくても、理解し合い得る関係というのは素晴らしい。
日本人独特のモノなのかも知れないが、私は、そのような関係の方がしっくりくるし、気を遣わずに済む…。
「Tには、いろいろ経験させるから…。」
以前からにそう告げたことがある。
せっかくの縁だ。一時期親変わりとして、いろいろな体験をさせてやろう。
T君、なかなか根性のある男なのだ。
