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クロア篇のあとがき [2019/06/11 23:57]
約20万字の読了、おつかれさまでした。
前のあとがきで立てた予定では、もっとはやくにクロア篇の投稿が終わると考えていました。でも伸びました。
原因は当初の見込みよりだいぶ文量が増えたことです。
もともと完成していた物語に修正をかけたものが、1月〜6月のクロア篇です。
初期完成品の原稿は13万字ない状態でした。
そこから余分なシーン、説明をカットしていながら、数万字が増えています。
はじめの完成原稿では余分な部分以外にも、説明不足や端折ったシーンが目立ちました。..
クロア篇−終章* [2019/06/01 00:00]
ダムトは町中の掲示板が見える場所で張りこんでいた。はじめは掲示板のまえ通りがかった数人が、掲示物をちらりと見た。なんでもないお知らせの紙や広告がそこにある、とばかり思っていた人々が、次第に色めき立つ。彼らは知人にも異様なお触れ書きの存在を伝えたようで、そのうちに掲示板のまえは何十人もの人だかりができた。彼らは領主からの通達に注目している。ダムトは聴力を高める術を用いて、お触れ書きを読んだ人々の会話を聞く。
「公女さまが、伯の子じゃないなんて……」
「クロア様、これからど..
クロア篇−終章6 [2019/05/21 00:15]
賊の襲撃があった翌日、賊の捕縛に功労のあった者をいたわる祝勝会が開かれた。大飯食らいのリックを考慮し、大量の食事が用意される。またしても料理人たちは過重労働に悲鳴をあげたそうだが、これが最後だと思うと料理の品質に手抜きはなかった。
この一件に多大に貢献したチュールとミアキスも宴会に参加した。女剣士は物静かに果物をつまんでおり、その横でマキシがしきりに取材する。女剣士は魔獣学者をうっとうしそうに見るが、拒絶はしなかった。
男剣士は左右にレジィとエメリをはべらせ、女好き..
クロア篇−終章5 [2019/05/20 00:00]
賊の掃討があらかた片付き、町の上空をただよう飛兵の動きは緩慢になった。征伐から帰還した騎兵も町中の巡回にあたる。そのおかげか、飛獣で逃走をはかった賊六名のほか、町中で二人の賊の捕縛に成功する。それは兵士らの成果である。おかげで町の武官の面目は立った。
クロアはさらに伝え虫から入ってくる情報を聞く。クノードは屋敷に帰還した、とわかった。おそらく、領主は屋敷にいたほうが官吏への指示を的確に出せるのだ。父に会うため、クロアも帰宅を果たした。
屋敷内は多少の慌ただしさが残っ..
クロア篇−終章4 [2019/05/19 00:00]
青紫色の飛竜はなにをするでもなく、どの飛獣よりも高い位置にいた。クロアはその騎乗者が二人いるのを認める。大男の魔人とその妻である。二人はクロアにとって、実の両親だ。
「高みの見物をしにきたの? それとも──」
クロアはヴラドにきつく詰め寄る。
「お母さまを見せびらかすの? アンペレ公の妻ではないと民衆にわからせるために!」
クロアは敵意をむき出しにした。フュリヤの「やめて」という制止がかかる。
「ヴラドは意地悪をしにきたんじゃないの。わかってちょうだい」
「..
クロア篇−終章3 [2019/05/18 00:00]
クロアはタオの飛竜と並行して空を駆けた。クロアとダムトが騎乗するベニトラは自身の前方に風よけの障壁を張り、高速移動に際する騎乗者の負荷を減らした。それは飛竜も同様だ。飛竜は以前、姿を隠す効果もあった風よけの膜を張っていたが、いまは姿がはっきりと見える。その背にはタオとレジィとマキシを乗せている。マキシは事情を伝える目的で、上空にいたタオと合流したあと、そのまま飛竜に同乗した。
二体の飛獣の後方に一騎の飛兵が追随していた。クノードの飛馬は全力飛行の継続に耐えられず、疲弊の..
クロア篇−終章◇ [2019/05/17 00:00]
工房の町は狂乱に陥っていた。施療院の不審火から始まり、文化会館で小規模な爆破が起きた。その対応に官吏が手間取る隙に乗じ、暴徒が略奪行為を働く。あまりに短時間に多発したことから計画的な犯行だと推測できた。これらの対処には通例、領主たるクノードが指揮を執る。だが現在は不在。そのためカスバンが代行を務め、鎮圧の手配をした。屋敷の警備は残しつつ、動かせる武官はすべて町中へ派遣する。暴徒を逃がさぬよう外門は封鎖し、出兵した者たちがもどってきた時のみ開門するよう命じた。主立った将兵が町..
クロア篇−終章2 [2019/05/16 00:00]
伝え虫を追跡する者のうちには、クノードとタオの飛獣のほか、リックとフィルの二人組もいた。リックたちは領主からの待機の命令を聞かなかったのだ。魔人が人間の言うことを兵隊ばりに遵守するなどとはクロアたちも期待していないので、だれも咎めなかった。
白い竜と化したフィルは我先にとばかり速度を出す。伝え虫は追跡者との距離を感知して速度を増減する仕組みのため、続く飛獣たちも全速力を出す事態になった。そうして着いた場所が山奥の山荘だった。開けた空間がすくない場所ゆえ、飛竜を着地させら..
クロア篇−終章1 [2019/05/15 00:00]
隣国の領主はクロアたちの出兵を許可してくれた。許可ついでに援軍を出そうか、との提案もしたそうだが、事が事だけに第三者の介入は不適切だとクノードは判断し、遠慮した。
翌日、クロアたちは再び武官をともなって出立した。今回の出征は国境を越える。移動距離が長くなるため、指揮官は自分の騎馬あるいは飛獣を用い、また指揮官以外の歩兵は騎兵及び飛兵に相乗りして行軍する。相乗りする者の中に、戦闘員ではない女性がいた。フュリヤだ。彼女は飛馬を操るクノードのうしろに座っていた。その服装はおよ..
クロア篇−10章7 [2019/05/14 00:00]
翌日、賊討伐に関する会議が開かれた。最大の敵である魔人の対策はできたとクノードが発表する。魔人の所望する女性はいかような人物か、と官吏が関心を示した。クノードがその人物の入室をうながすと、赤銅色の髪の貴婦人がしずしずと入ってくる。昨晩のことを知らぬ官吏は色めきたった。官吏を統べる領主が真剣な面持ちで語りかける。
「驚くのも無理はない……が、これは真実だ。フュリヤはヴラドの……妻に等しい人。身柄を返せば魔人は我らに敵対する理由を失う。それを前提とし、賊の再討伐をはかる」
..
クロア篇−10章6 [2019/05/13 00:00]
クロアは母がアンペレ公夫人になるまでの経過を知り、言いようのない感情に襲われた。フュリヤの行動は公正さに欠ける。彼女が遠因となって、賊の掃討が阻止された現状もある。それらを踏まえれば母を「卑怯者」と糾弾すべきだと言える。だがフュリヤ個人の責任だろうか。
フュリヤが住んでいた村の者が、フュリヤとその母との約定を履行していたら。フュリヤは金銭に困らず、親の余生を案ずることはなかった。孤独な親の安住を求めての婚姻を交わさなくてもよかった。ならばこの母子を騙した連中を咎めるべき..
クロア篇−10章5 [2019/05/12 00:00]
フュリヤの生まれ里は剣王国の、森林豊かな地域だった。木の伐採と薬草採取が収入源になる村にて、フュリヤとその母はよそ者としてひっそり暮らしていた。母子と村人との交流はかんばしくなかったが、村の生命線にあたる森に魔物が棲みついたあと、事態は急変した。
村民は魔物のせいで生活の糧を得られなくなり、土地を守る領主に魔物退治を申請した。しかし退治は失敗した。そればかりか、村の居住区域には危険がないとわかると現状維持の決断をくだされた。村民は困り、村からほどちかい館に住む魔人を頼ろ..
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