2021年03月03日
習一篇−5章2
習一は外気の熱にうだりながら、黒灰色のシャツを見失わないように歩いた。銀髪の教師は進行方向を見つつも習一を置き去りにしない歩調を保つ。現在の二人は人々の喧騒がはげしい場におり、足音をたよりに距離を測るのは無理だ。教師は朝、習一とともに歩いたときの速度を正確に把握したのか、あるいは他人の気配の遠近を察せるのか。どちらも一般人には不可能な技能ではあるが、過去に習一を武力で凌駕したという男ならできうる芸当な気がした。
教師はめぼしい飲食店の前を通りすぎ、和風な店へと近づく。その店がなにを売りにしているのか習一は知らない。見たことはあれど中に入ったことはなかった。
教師は引戸をがらがらと開けた。屋内にこもってきた冷気、および物音や人の話し声が解き放たれ、入店客への挨拶が威勢よく飛び交う。その中で二人を出迎えにきた者はねずみ色の頭巾を被った中年だ。
中年の身長は教師とほぼ同じ。だがあちらのほうか恰幅がいい。黒の前掛けの横幅が微妙に足りず、紺色の作務衣がはみ出て見えた。
「先生、今日は一人か?」
中年は不思議そうに言う。この店員と知り合い、かつ教師が単独で店を利用することはないのだと習一は推測した。
「連れがいます。二名でお願いします」
図体の大きい店員は教師の連れをさがし、教師の後ろにいた習一を発見した。店員の目尻は吊り上がっていて、射るような視線を習一にそそぐ。ただしそのするどい視線に敵意は一切ない。
「ん? 見たことない子だな」
「彼は才穎の生徒ではありません。しばらく私が勉強のお手伝いを──」
「あ〜、娘が言ってた子か。先生が男の子の世話するから、その子のメシをつくるって」
昨日のサンドイッチの作り手はこの店員の娘らしい。そうと知った習一はむずがゆい思いをした。制作者はなんとなく自分の母親に近い、年長の人物が作った食事だと想定していた。
(同い年くらいのやつが、か……)
なんの見返りもない善意を振りまく同輩がいる。そう知れたとたん、習一は空手部の同級生の名を髣髴し、次いでそのくもりのない眼を思い出した。
習一が無言をつらぬく間に、教師と親しげな店員は習一たちが使う客席を案内する。店内には油と小麦粉が焼ける匂いが充満していた。客席のテーブルには鉄板がどんとかまえる様相もふまえ、ここはお好み焼屋なのだと習一はわかった。
店員は一面に鉄板を乗せた四人掛けのテーブルに客を座らせた。注文が決まったら呼んでほしいと告げて、早々に厨房へ去る。教師と仲がよいとはいえ仕事中の私語はひかえる人なのだと習一は感じ、ひそかに好感が湧いた。その好感には今朝の喫茶店で会った女性店員の勤務態度のわるさが多大に関与していた。
教師がメニュー立てにある冊子を取り、習一に手渡す。
「食べられるだけ頼んでください」
「あんたはまた食わないのか?」
「はい。腹は減っていません」
教師は朝食を少量とったあと、なにも食べていない。これでは成人男性の一日の食事量を満たせていない。そのように節制せざるをえない人とはダイエット中か、病気療養しているか、食費に回す金がない人ぐらいのものだ。習一はこの三者の中でもっとも正解に近そうな仮定を話題に出す。
「オレの飯代を肩代わりするために無理してるのか?」
「金銭には困っていません。これは私の体質です」
絶食宣言をした教師がもうひとつのメニュー表を開く。
「具の好物が特になければミックス玉がよさそうですね。いろんな具が少量ずつ入っているそうです。きっとたくさんの味を楽しめますよ」
習一も手元のメニューを見る。ミックス玉は同種類の食品中、最も価格が高く、量は二人前だという。
「これ、二人分だって書いてあるぞ」
「食べられる分を食べてください。残したものを私が処理します」
「わかった。じゃあそれひとつ」
教師は近場にいる従業員をさがし、相手が他客への品運びを終えたところを声掛けする。教師の声がかかった者はひょろ長い背格好の青年だった。年ごろは二十代。彼も灰色の手ぬぐいを頭に巻き、黒いエプロンを掛けている。前掛けの下は若者らしい私服だ。頭巾と前掛けがこの店の制服のようだ。
教師が若い店員に注文をつけた。店員は厨房へもどる。入れ替わりで教師と顔見知りな中年が現れた。中年は習一たちに氷水を提供する。
「そいじゃ、鉄板を熱くするぞ」
店員は身を屈め、テーブル横のつまみをひねる。鉄板から店内の冷房を打ち消す熱気が生まれてきた。
「だれかに焼いてほしかったらそう言ってくれ」
「いえ、自分でやります」
教師が言うと中年は「じゃあまかせた」と笑顔で去った。習一はこの教師が料理をしないと宣言していたことを思い出す。
「アンタ、料理はやらないんじゃないのか」
「調味がととのったものを加熱することはできます」
「……味オンチか?」
「はい、そういうことです」
教師があらゆる食事の用意を外部にゆだねる理由がわかり、習一は腑に落ちる。
「病気でそうなったのか?」
「病というよりは体質です」
「生まれつき、か……」
食のよろこびが失われた人生とは生きにくそうだ、と習一は内心あわれんだ。
「味が完全にわからないわけではありません。普通の人とは美味と感じるものがちがう、と言ったらよいのでしょうか」
「ふーん、うまいもんを食えるたのしみはあるわけだ」
どんな食べものであれおいしく感じられるものがあるならいい、と習一は口に出さずに思った。
細長い店員が盆を持ってきた。盆には黒塗りの丼《どんぶり》と、ヘラを置いた二枚の取り皿がある。店員は習一たちに料理の素材を提供すると、またほかの客のもとへ馳せ参じた。
教師が調味料と一緒にならんでいた油を手にし、鉄板に垂らす。油をヘラで薄く一面に引いた。細かい気泡を立てて油が熱される。熱した油の上に丼に入った薄黄色の液状を敷いた。小麦粉を溶いた液体にはとうもろこしの粒や丸まった海老、イカなど色々な具材が混じる。教師は丼に残った具をヘラで掻きだし、円形に広がった溶液に落とした。その手際を見るに、自己申告の通りの料理下手には思えない。
「お好み焼きを作るのは得意なのか?」
「いえ、初めは何度も失敗しました。練習したおかげで人並みに焼けます」
「それで、お好み焼きを食ったことは?」
「……あまり、ありません」
教師はみずから作った食事をほとんど他人に食べさせてきたようだ。このエピソードでも教師の小食ぶりがうかがえた。
教師は小麦粉が固まってきた円状の板を二つのヘラでひっくり返す。表に返ったほうには茶色の焦げ目が出来上がっていた。次は反対の面が熱するのを待つ。
「今日はこの店をふくめて三か所、訪れましたね」
教師は待機時間を利用して、たわいない会話をはじめる。
「疲れましたか?」
習一は自己の体調に意識をそそいでみる。日中は久方ぶりの缶詰め状態になっていて頭は当然疲れている。運動らしい運動はしていないが体にもしんどさがある。この倦怠感は体力不足のほか、おそらく夏の熱気も関わっていると習一は思う。
「ああ、疲れたな。こう暑いと、うごくだけでも体力がうばわれる」
「では明日は一か所に留めましょう。貴方がエリーとすごした喫茶店に長時間いてもかまいませんか」
「オレはいいが、店の連中がどう思うかは知らん」
ひとつの席を一日中占有する状況は店側としてはこのましくないだろう。その席で複数の客に使ってもらえば利益が上がるのだから。習一は過去に客席を長時間利用した経験はあるが退去を命じられたことはない。あれは当時の習一が受験勉強で大変な学生でいたがゆえの目こぼしがあったのだと思っている。いまでは身も心も不良に身をやつしており、そのような温情を周囲が与えてくれる可能性は低い。
「そうですね……長時間の利用は店の迷惑になりうると、その考えに至りませんでした」
教師は習一の負担がへる過ごし方を思案していて、そのほかの些事には気づかなかったらしい。その不器用さに人間味が感じられ、習一は彼に多少気安くなる。
「たくさん金を落としてくれる客ならいいんだろうけどな、アンタはぜんぜん飯食わないからな」
「客単価を上げる必要がありますか」
「それより、アンタの知り合いの店へ行くのはどうだ?」
習一は今朝の個人経営らしき喫茶店を思い出しながら言う。
「アンタを気に入ってる店員を利用して、長くいさせてもらえそうじゃないか」
「あそこは長くいられても、集中できる環境ではないかと」
「あの店員が話しかけてくるからか?」
「はい、今日明日はあの方が店に出るそうです。それ以外の日ならよいのですが」
あの騒々しい店員にへばりつかれては教師の居心地がわるかろう、と習一は自分の学習環境の不便さではなく教師の心情をおもんばかった。
「一食につき何時間の滞在が許容されるのかわかりませんが、朝昼はねばってみて、その後はほかの店へ行くのも考えておきます」
「また一日中オレを見張る気か?」
「と、言いますと?」
「今日はけっこう進んだ。明日は午後から解散してもいいだろ」
二食を食べておけば一食ぬかしても平気、という食事事情と、自宅学習をあてにできるほど今日は頑張ってみせたという自負心をもとに習一は選択肢を増やした。だが──
「そうはいきません」
教師は物静かだが強固な姿勢で否定した。
「オレをほっといたらプリントを解きゃしないって、まだ疑ってるのか?」
「貴方を信じないのではありません。オダギリさんの身を案じているのです」
「オレのことが心配? なにをだ」
「貴方の父親のことです」
習一は胸を衝かれた。自分が苦悩する物事を臆することなく斬りこんでこられ、その大胆不敵さを習一は不快に感じる。なんのつもりだ、とばかりに習一は教師をにらんだ。しかし彼は習一と目を合わせず、一途に料理を見つめていた。
教師はめぼしい飲食店の前を通りすぎ、和風な店へと近づく。その店がなにを売りにしているのか習一は知らない。見たことはあれど中に入ったことはなかった。
教師は引戸をがらがらと開けた。屋内にこもってきた冷気、および物音や人の話し声が解き放たれ、入店客への挨拶が威勢よく飛び交う。その中で二人を出迎えにきた者はねずみ色の頭巾を被った中年だ。
中年の身長は教師とほぼ同じ。だがあちらのほうか恰幅がいい。黒の前掛けの横幅が微妙に足りず、紺色の作務衣がはみ出て見えた。
「先生、今日は一人か?」
中年は不思議そうに言う。この店員と知り合い、かつ教師が単独で店を利用することはないのだと習一は推測した。
「連れがいます。二名でお願いします」
図体の大きい店員は教師の連れをさがし、教師の後ろにいた習一を発見した。店員の目尻は吊り上がっていて、射るような視線を習一にそそぐ。ただしそのするどい視線に敵意は一切ない。
「ん? 見たことない子だな」
「彼は才穎の生徒ではありません。しばらく私が勉強のお手伝いを──」
「あ〜、娘が言ってた子か。先生が男の子の世話するから、その子のメシをつくるって」
昨日のサンドイッチの作り手はこの店員の娘らしい。そうと知った習一はむずがゆい思いをした。制作者はなんとなく自分の母親に近い、年長の人物が作った食事だと想定していた。
(同い年くらいのやつが、か……)
なんの見返りもない善意を振りまく同輩がいる。そう知れたとたん、習一は空手部の同級生の名を髣髴し、次いでそのくもりのない眼を思い出した。
習一が無言をつらぬく間に、教師と親しげな店員は習一たちが使う客席を案内する。店内には油と小麦粉が焼ける匂いが充満していた。客席のテーブルには鉄板がどんとかまえる様相もふまえ、ここはお好み焼屋なのだと習一はわかった。
店員は一面に鉄板を乗せた四人掛けのテーブルに客を座らせた。注文が決まったら呼んでほしいと告げて、早々に厨房へ去る。教師と仲がよいとはいえ仕事中の私語はひかえる人なのだと習一は感じ、ひそかに好感が湧いた。その好感には今朝の喫茶店で会った女性店員の勤務態度のわるさが多大に関与していた。
教師がメニュー立てにある冊子を取り、習一に手渡す。
「食べられるだけ頼んでください」
「あんたはまた食わないのか?」
「はい。腹は減っていません」
教師は朝食を少量とったあと、なにも食べていない。これでは成人男性の一日の食事量を満たせていない。そのように節制せざるをえない人とはダイエット中か、病気療養しているか、食費に回す金がない人ぐらいのものだ。習一はこの三者の中でもっとも正解に近そうな仮定を話題に出す。
「オレの飯代を肩代わりするために無理してるのか?」
「金銭には困っていません。これは私の体質です」
絶食宣言をした教師がもうひとつのメニュー表を開く。
「具の好物が特になければミックス玉がよさそうですね。いろんな具が少量ずつ入っているそうです。きっとたくさんの味を楽しめますよ」
習一も手元のメニューを見る。ミックス玉は同種類の食品中、最も価格が高く、量は二人前だという。
「これ、二人分だって書いてあるぞ」
「食べられる分を食べてください。残したものを私が処理します」
「わかった。じゃあそれひとつ」
教師は近場にいる従業員をさがし、相手が他客への品運びを終えたところを声掛けする。教師の声がかかった者はひょろ長い背格好の青年だった。年ごろは二十代。彼も灰色の手ぬぐいを頭に巻き、黒いエプロンを掛けている。前掛けの下は若者らしい私服だ。頭巾と前掛けがこの店の制服のようだ。
教師が若い店員に注文をつけた。店員は厨房へもどる。入れ替わりで教師と顔見知りな中年が現れた。中年は習一たちに氷水を提供する。
「そいじゃ、鉄板を熱くするぞ」
店員は身を屈め、テーブル横のつまみをひねる。鉄板から店内の冷房を打ち消す熱気が生まれてきた。
「だれかに焼いてほしかったらそう言ってくれ」
「いえ、自分でやります」
教師が言うと中年は「じゃあまかせた」と笑顔で去った。習一はこの教師が料理をしないと宣言していたことを思い出す。
「アンタ、料理はやらないんじゃないのか」
「調味がととのったものを加熱することはできます」
「……味オンチか?」
「はい、そういうことです」
教師があらゆる食事の用意を外部にゆだねる理由がわかり、習一は腑に落ちる。
「病気でそうなったのか?」
「病というよりは体質です」
「生まれつき、か……」
食のよろこびが失われた人生とは生きにくそうだ、と習一は内心あわれんだ。
「味が完全にわからないわけではありません。普通の人とは美味と感じるものがちがう、と言ったらよいのでしょうか」
「ふーん、うまいもんを食えるたのしみはあるわけだ」
どんな食べものであれおいしく感じられるものがあるならいい、と習一は口に出さずに思った。
細長い店員が盆を持ってきた。盆には黒塗りの丼《どんぶり》と、ヘラを置いた二枚の取り皿がある。店員は習一たちに料理の素材を提供すると、またほかの客のもとへ馳せ参じた。
教師が調味料と一緒にならんでいた油を手にし、鉄板に垂らす。油をヘラで薄く一面に引いた。細かい気泡を立てて油が熱される。熱した油の上に丼に入った薄黄色の液状を敷いた。小麦粉を溶いた液体にはとうもろこしの粒や丸まった海老、イカなど色々な具材が混じる。教師は丼に残った具をヘラで掻きだし、円形に広がった溶液に落とした。その手際を見るに、自己申告の通りの料理下手には思えない。
「お好み焼きを作るのは得意なのか?」
「いえ、初めは何度も失敗しました。練習したおかげで人並みに焼けます」
「それで、お好み焼きを食ったことは?」
「……あまり、ありません」
教師はみずから作った食事をほとんど他人に食べさせてきたようだ。このエピソードでも教師の小食ぶりがうかがえた。
教師は小麦粉が固まってきた円状の板を二つのヘラでひっくり返す。表に返ったほうには茶色の焦げ目が出来上がっていた。次は反対の面が熱するのを待つ。
「今日はこの店をふくめて三か所、訪れましたね」
教師は待機時間を利用して、たわいない会話をはじめる。
「疲れましたか?」
習一は自己の体調に意識をそそいでみる。日中は久方ぶりの缶詰め状態になっていて頭は当然疲れている。運動らしい運動はしていないが体にもしんどさがある。この倦怠感は体力不足のほか、おそらく夏の熱気も関わっていると習一は思う。
「ああ、疲れたな。こう暑いと、うごくだけでも体力がうばわれる」
「では明日は一か所に留めましょう。貴方がエリーとすごした喫茶店に長時間いてもかまいませんか」
「オレはいいが、店の連中がどう思うかは知らん」
ひとつの席を一日中占有する状況は店側としてはこのましくないだろう。その席で複数の客に使ってもらえば利益が上がるのだから。習一は過去に客席を長時間利用した経験はあるが退去を命じられたことはない。あれは当時の習一が受験勉強で大変な学生でいたがゆえの目こぼしがあったのだと思っている。いまでは身も心も不良に身をやつしており、そのような温情を周囲が与えてくれる可能性は低い。
「そうですね……長時間の利用は店の迷惑になりうると、その考えに至りませんでした」
教師は習一の負担がへる過ごし方を思案していて、そのほかの些事には気づかなかったらしい。その不器用さに人間味が感じられ、習一は彼に多少気安くなる。
「たくさん金を落としてくれる客ならいいんだろうけどな、アンタはぜんぜん飯食わないからな」
「客単価を上げる必要がありますか」
「それより、アンタの知り合いの店へ行くのはどうだ?」
習一は今朝の個人経営らしき喫茶店を思い出しながら言う。
「アンタを気に入ってる店員を利用して、長くいさせてもらえそうじゃないか」
「あそこは長くいられても、集中できる環境ではないかと」
「あの店員が話しかけてくるからか?」
「はい、今日明日はあの方が店に出るそうです。それ以外の日ならよいのですが」
あの騒々しい店員にへばりつかれては教師の居心地がわるかろう、と習一は自分の学習環境の不便さではなく教師の心情をおもんばかった。
「一食につき何時間の滞在が許容されるのかわかりませんが、朝昼はねばってみて、その後はほかの店へ行くのも考えておきます」
「また一日中オレを見張る気か?」
「と、言いますと?」
「今日はけっこう進んだ。明日は午後から解散してもいいだろ」
二食を食べておけば一食ぬかしても平気、という食事事情と、自宅学習をあてにできるほど今日は頑張ってみせたという自負心をもとに習一は選択肢を増やした。だが──
「そうはいきません」
教師は物静かだが強固な姿勢で否定した。
「オレをほっといたらプリントを解きゃしないって、まだ疑ってるのか?」
「貴方を信じないのではありません。オダギリさんの身を案じているのです」
「オレのことが心配? なにをだ」
「貴方の父親のことです」
習一は胸を衝かれた。自分が苦悩する物事を臆することなく斬りこんでこられ、その大胆不敵さを習一は不快に感じる。なんのつもりだ、とばかりに習一は教師をにらんだ。しかし彼は習一と目を合わせず、一途に料理を見つめていた。
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