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タグ / 羽田校長
記事
拓馬篇−4章◇ [2018/03/20 23:59]
昼休憩がはじまってまもなく、コンコン、とノックが鳴った。部屋のあるじである校長は専用のデスクに座したまま「どうぞ」と訪問者に声をかける。がちゃっと音が鳴り、扉が開く。
「校長、失礼いたします」
明瞭な声とともに男性教師が入室した。褐色の肌に黄色いサングラス、銀色の頭髪等の特異な風貌は何者にも見間違えようがない。
校長は当初、彼を姓で呼んでいた。現在は彼が生徒につけられたというあだ名で呼び親しんでいる。その命名者は彼と一等親しい女子だ。校長は仲のよい男女を見ることが..
拓馬篇前記−校長8 [2017/11/26 23:25]
面接終了後、校長はデイルへ合格の一報を知らせるのと同時にアパートの見学日候補を伝えた。直近の土曜日はどうか、と言うと彼はすぐに「わかりました」と答える。
「その日から入居してもよろしいでしょうか」
校長は自分が先日そう提案した身でいながら、即答できなかった。すでに彼にはアパートに住んでもらう心積もりだったし、彼が乗り気ならそれは良いことだ。しかし実態を一つも見せずにいきなり部屋に住め、というのは常識はずれのような気がした。そんな言葉がポンと出てしまったのは、その場の勢..
拓馬篇前記−校長7 [2017/11/23 23:40]
校長はわざと面接時間に遅れさせた本摩を加え、デイルと話しこんだ。本摩は常識的な教師だ。彼が投げる質問はとても普通だった。
才穎高校に勤めたいと思った理由、他の業種から教職へ転向するきっかけ、勤務する間にできる目標といった、ほかの職種の面接でも聞きそうなことばかり。デイルはそつなく答えた。校長も気になっていた転職の要因は「上司の勧め」だという。
「上司のお子さんが教師を目指していたのですが、訳があってあきらめることになったのです。せっかく教材が余っているので、興味があっ..
拓馬篇前記−校長6 [2017/11/22 23:53]
校長と大力会長が交わした約束の通り、大力の電話は三月になってからかかってきた。大力がくだんの教師志望者を鑑定したところ、大いに有望な若者だと評定がくだる。校長はほっと胸をなでおろした。これで八巻が安心して治療に専念できるだろう。
若者は男ぶりもなかなかよいらしい。圭緒という大力の娘は人見知りをしないのだが、彼と目があったとたんに恥ずかしがったという。校長は若者を非常に有能な人材だと思った。それは当初の目的とはちがう面での評価だ。
(年頃の女子がときめきを感じる教師! ..
拓馬篇前記−校長5 [2017/11/13 23:53]
羽田校長は八巻の見舞いから学校へもどると、さっそく大力会長に電話をかけてみた。大抵は彼の部下に繋がる。今回も事務員か秘書かは知らぬ女性が出て、今日は会長と話はできないと断られた。
『会長のお時間ができましたら、折り返しお電話をおかけいたします』
そう言われて日をまたぎ、現在は昼休み。折り返しの電話はまだ来ない。来るとしたら学校の電話に連絡が入るようにしてある。今回の話は学校に関する用件であり、私事ではないからだ。
(むむむ……やはりお忙しいのか?)
大力会長は自..
拓馬篇前記ー校長4 [2017/10/21 23:59]
「二人部屋か……」
校長は総合病院の病室前にいた。壁にあるネームプレートは二つ。当たり前だがどちらも男性の名前だ。以前、八巻を訪ねた時は個室だった。今日も一対一で話せると思ってきたのだが、同室者がいるとなれば腹を割って話すことはためらわれた。
(なに、恥じることはない。うちの生徒は良い子なのだから)
仙谷たちは元気がよすぎるだけ。その手綱をうまく操ってほしいと八巻に頼む。その大筋に沿って会話を展開しよう、と校長はあらためて思った。
引き戸を軽くノックする。返事は..