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タグ / 拓馬
記事
短編−縁日の夜 [2019/08/31 23:50]
「さ、もどろうか」
父が拓馬の手を引いた。神社のおまいりにいくこと、それがひとつめの目的だ。その後は道中に遠目で見ていた出店を、ふたたびながめる。そして拓馬とその姉が気に入る店へ立ち寄って、遊んだり買い物をしたりする。これからが子どもたちの、たのしいお祭りの本番だ。
拓馬の姉はさっそく「あれやりたいな!」と言って、境内からいくらも離れていない射的の店へ駆けた。その店に寄ることは話し合いで決定していた。決め手は拓馬と背丈が同じくらいの子がチャレンジしていたことだ。..
拓馬篇後記のあとがき [2018/11/29 00:50]
本編のおまけの話までついてこられた方、お疲れさまです。
この後記の総文字数は7万弱。おまけにしては量が多いかもしれません。
書いてる本人もいまの半分を想定していました。いつも大体こうです。
書いていくうちに説明をおぎなっていくと、当初の予測文字数から倍ほど膨れます。短くなることはまずありません。
この事態は、取り入れる気のなかった設定とシーンをどんどん付け足す影響だと思います。
その結果、前回のあとがきに「読まなくていい」と宣言した物語なのに、撤回しようか迷いはじめ..
拓馬篇後記−*3 [2018/11/24 03:11]
シズカは自分の身の上を「複雑な事情」だと稔次に表現された前提で、「そんなところ」と言葉を返す。
「でも拓馬くんとおれは、自信をなくした理由がちがう」
かの少年は生来の異能力に苦悩させられているが、両親健在かつ家庭円満。そこがシズカとは異なる。
「おれは災害孤児で、ここは親戚の寺」
この出自は稔次も拓馬も知っている。シズカみずからが教えたことだ。
「おれの兄が寺の娘と将来結婚して、跡取りになるから、弟のおれは厄介者……そんなふうに、むかしは思ってた」
シズカ..
拓馬篇後記−*2 [2018/11/23 23:30]
稔次は自身の子に会いたがっている。そうすることで彼の区切りがついたとき、シズカに真相を明かしてくれるのだろう。シズカは稔次の計画を後押しすることに決める。
「じゃ、おれがお子さんを捜すのを手伝おうか?」
「捜さなくてもわかる。オレの兄貴が知ってるはずなんだ」
「『はず』? 教えてもらってないってことか」
「まだ、聞くタイミングをはかってる。知ったらすぐに会いに行ってしまいそうで」
「どうしたら準備がととのう?」
「身の回りのことが落ち着けば……」
「落ち着くっ..
拓馬篇後記−*1 [2018/11/22 05:00]
シズカは実家として表向き称する寺にいた。今日は囲炉裏のある部屋をひとつ、客人の応接間として間借りし、ひとりの男性をまねく。男性客の送り迎えには特殊な方法をとる。シズカが異界で仲間にした鳥の怪物が送迎を担当するのだ。もちろん鳥も搭乗者も常人には見えないように配慮した。空中遊泳を経てきた男性は開口一番「たのしかったね〜」と言い、まるで主目的がシズカとの会合ではなく飛行にあったかのようにお気楽な反応を見せた。その言動はシズカをほっとさせる。
(歳は食っても、中身は変わってないな..
拓馬篇後記−21 [2018/11/18 01:50]
拓馬は年長の知人との音声通話を開始した。決まりきった挨拶ののち、シズカがすぐに本題に入る。
『えーっと、異界絡みの人のことをおれに確認してほしいんだったね?』
「はい。トシツグっていう男性、知ってますか?」
『うん、その名前の人には向こうで会ったことがあるね』
稔次とシズカが顔見知りである可能性が浮上した。拓馬は俄然二人の関係性が気になりだす。
「シズカさんが知ってるトシツグって人は、何歳くらいの人だったんです?」
『おれがはじめて会ったときは……ギリギリ十代..